Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    ドラウズ

    @drowse_zzz

    【書いてるの】
    ピクミン4自機受け小説/ボルドルド隊夢小説
    詳しくはTwitterとかpixiv見て

    ☆quiet follow Yell with Emoji 📜 😊 💒 🏩
    POIPOI 42

    ドラウズ

    ☆quiet follow

    ピクミン自機小説です。この話のあとにちゃんと帰ります。
    書くの忘れてましたが、最後のアイツはスジオです。ボロクソ言われてますが、なんだかんだでアイツが好きです。

    #ピ4自機小説_アンシー

    ああ、愛しき黄金郷(エル・ドラード)『だいぶ調査も終わりに近づいてきましたね』
    『よく頑張ったなアンシー!これで帰還の目処が付きそうだ』

    これまでに回収しそこねた遭難者やオタカラを回収したり、まだいる葉っぱ人にダンドリを見せつけて回収したり、危険な夜の探索でヒカリのミツを集めたり。色々なことをピクミン達やオッチンと一緒にやって来た。

    『まだ調査は終わってないが、もう夕方だ。今日は帰還してくれ、アンシー』
    「アイ・コピー!」
    「ワン!」

    はぐれた子がいないかを確認し、ミンミン鳴いてかわいいピクミン達をオニヨンに戻す。この前うっかり遠くに忘れてしまったピクミンが、帰還に間に合わず原生生物に食べられていたときは悲しかった。
    最初はちょっと不気味に思えていたピクミン達だけど、最近は結構かわいく思えてきた。人手が足りないときの頑張ってる声なんか結構かわいい。

    ヒカリに包まれてビーグル号の中に入る。
    オッチン専用のシートベルトをし、自分のもキチンと締める。俺は身長があるから、実はラッセルさんに調整してもらった。
    帰還する間は、よく窓から外の景色を眺める。たまに日中に帰還するけどほとんど夕方。まじまじと夕日を眺めたのは小さい頃以来だけど、この星の夕日は俺にも綺麗に思えた。

    「オッチン、戻ったらブラッシングを…………っ!?」
    『アンシーさん!』

    今日もブラッシングしてやらないとな、と思っていたその時、突如ビーグル号がガタント大きく揺れた。

    「っ、揺れが、止まんない!?」
    『こちらでも色々試してますが、信号を受け付けません!』
    『アンシーの方でも制御出来るか試してくれ!』
    「アイ・コ……うっ……」

    ガタガタと変な音を立てて揺れ続けるビーグル号。
    そんな中でも以前教わった通りに操作しようとしたが、こんどは俺の頭が変な感覚に襲われる。

    『まさか脳震盪!?』
    「でも、あたまはぶつけて、」
    『強く揺すられても起こったりするんだよお!』

    めずらしくパピヨンさんがあせってる。

    「でも、たぶんちがくて、なんていうか、その、アレで……」
    『……もしかして最近夜に感じてる変な感覚?』
    「たぶん、きっと、そうです。それなんです」

    いままでよりずっとつよいかんかく。なんなんだこれ。
    ひっぱられるような、めをそらせないような…………こえ?

    「そうか、うん、そうかぁ」
    『……アンシーさん?』

    「おれをよんでたんだ」

    ならこれはじゃまだなぁ、はずさなきゃ。

    『アンシー?どうしてベルトを外してるんだ!?』

    「よんでるなら、いかなきゃ」

    そとにでるなら、とびらをあけなきゃね。

    『くっ、こちらからはまだどうにもできません!』
    『おい新入り!いきなりどうしたんだよ!』

    「これと、えーっとこれをこうして」

    んぅ、しゅどうのやつはちょっとてまだなぁ。

    『明らかに様子がおかしいのにいっ!』
    『くそっ、遠隔で色々するにも今は信号も受け付けぬ!それにあのハッチは手動だっ!』

    「っしょ!あいたぁ」

    けっこうたかいなぁ。まぁ……いっか!

    『ルーキーちゃん!今は高度が高すぎて、何もなしに飛び降りるのは危険デース!』

    「おれをよんでるから、いかなきゃいけないんです。おれがよくて、おれをよんでて、おれなんです」

    ガタガタとゆれて、ビュウビュウとすごいかぜのおとがする。たかくてこわいけど、おれをよんでるなら、いかなきゃね。

    『駄目だ、アンシー!戻るんだ!』

    「すいません、おれ、いかなきゃ」

    とびらのそとに、おちる。
    きれいだ。



    「アンシー……!!」
    「……通信は切れました。が、信号はまだギリギリ追えます」

    様子のおかしくなったアンシーさんが上空から身を投げたことで、更にオペレーションルームが騒がしくなる。

    「ビーグル号が今更バカみてぇに大人しくなりやがったぜ」
    「まるで夢のようだが、そんな訳あるまい。しかしハッチが綺麗に閉じているな……」

    大きく揺れていたビーグル号は安定を取り戻し、当初の予定通りレスキューキャンプへ帰還出来そうだ。

    「まるでミー達が遭難したときみたいデース!あのときの制御の効かなさは説明できまセーン!」
    「新米くんは声とか呼んでるとか言ってたけど、まさかわざわざ墜落させられるような原生生物がいるっていうのお?……あの大きな犬も色々出来てたし、説明出来ない事が多いこの星じゃああり得るだろうけどお……」

    信号の発信地点の途中までの推移、ビーグル号からの落ち方、上空の風向きなどを合わせて、アンシーさんが落下したであろう場所を予測する。

    「予想落下地点割り出せました!おそらくは……花ふぶきの楽園です」
    「よくやったコリー!……ディンゴ」
    「俺の準備は出来てます、隊長!」
    「……すまないが、オッチンと共にアンシーを探して貰えるか」
    「……ひっついてなければ、なんとか」
    「宇宙犬が苦手なのは知っているが、オッチンの鼻も頼りだ。頼むぞ」
    「アイ・コピー!」
    「ラッセルはディンゴが使うアイテムの準備を頼む」
    「アイ・コピーだ、任せたまえ!」

    2人が急いで準備を始める。

    「コリーは少しの間だが一旦休め。どうせすぐ忙しくなるがな」
    「アイ・コピーです!」
    「パピヨンとバーナードは救助者達に詳細を伏せた上で、忙しくなることをそれとなく伝えて欲しい。必要であればシェラン調査団の方々やコッパイ星の三人の手を借りてくれ。彼らなら事情は理解してくれる筈だ」
    「「アイ・コピーだよお/デース!」」
    「私はオッチンの準備をしてくる」

    隊長の号令により、各自が慌ただしく解散した。
    オペレーションルームに一人残り、静かな中祈る。

    「アンシーさん……どうか無事でいてください……」

    そうはいっても、緊急脱出用の道具や装備も無しでは到底無事だとは思えない。けれど。

    「(アンシーさんが前に言ってた『アレ』なら、もしかするとどうにか……)」

    あんまり使いたくはないけれど、『アレ』に頼る事があるかもしれない。



    「そんなことになっていたのか……」
    「我々も出来るだけ協力させてもらおう」
    「とりあえずは……アンシー君は急病ということにするよお。これなら皆の前に姿を表さない理由にも、面会出来ない理由にもなる」
    「たとえ嘘でも急病となればドクターもあまり人前に出れなくなりマース。暇になるのはミーくらいですから、皆さんのパワーを頼りにさせて下サーイ!」

    とりあえずは団長であるシェランさんと、リーダーであるベルマンさんと話をしていた。

    「おかしな行動の、なにか予兆みたいなものはなかったのかい?」
    「あるにはあったんだけどお、検査しても問題は全然無かったんだよねえ。視線じゃないような、何か変な感覚を感じてはいたみたいなんだけどお……」
    「ラッセルと共に調べてはいましたが、驚くほどになーんにもナッシング!怪我やトラウマのことはありマシタが、むしろ健康そのものだったんデース!」

    そう、驚くほどの治癒力と同じように、なんにも変な結果が出なかった。まるで綺麗に上書きしたかのように。

    「でも本来なら出るはずの良くない結果も『良いこと』になってたから、なにかあるのは確実だったんだけどお……何が原因かまでは分からなかったんだよねえ」
    「ううむ、そちらの二人でも原因が分からないとなると……『呼んでるヤツ』とやらの元に向かってそうなアンシー君を見つけて、どうにか原因を叩くしか無いか?しかしどんなやつが待ち構えてるか……」

    猶予に関しては全く分からない。だからこそ早く見つけて、元の状態に戻すべきだ。

    「それに関してはディンゴが今向かってるよお。ディンゴは優秀なレンジャーだから、ピクミンがいなくとも問題なく対処出来る実力はちゃんと備わってる」
    「ふむ、確かに彼がアンシー君の代わりにやってたときはなかなかの活躍をしていたね!」
    「夜の防衛ではヒカリピクミンがいないというのに、キチンと守りきっていたからな。彼なら上手くやってくれるだろうな」
    「オッチンも一緒デスから、探し人もノープロブレムデース!」

    そのディンゴは宇宙犬が苦手なんだけどねえ。ま、今回だけは上手く頑張ってもらわないとお。



    「こちらディンゴ、問題なく花ふぶきの楽園に到着した」
    『了解です。周囲の安全確認をしつつ、アンシーさんを探しましょう』
    『頼むぞ、ディンゴ、オッチン。何としてでもアンシーを連れて帰るんだ』
    「アイ・コピー!」
    「ワン!」

    今はもう夜だ。オニヨンがついて来ていないからワン公とふたりきりってのも癪だが、探し人ならコイツの方が上手だ。アンシーのやつをを急いで探さなきゃいけないし、仕方なく頼ってやる!

    隊長がワン公にアンシーを探すよう指示し、動き出したその後を追う。そう遠くない小高いところでワン公はその足を止める。

    「んだこりゃ……」
    『割れたヘルメットだけ……?』

    水辺以外だったら無事じゃない可能性はそりゃ高かったから、ヘルメットが割れてるのもまぁ想定の内ではあった。

    「落ちた衝撃らしい跡は残ってるが……身体の方が見当たらねぇ。コイツのも原生生物のも足跡がないから、どこ行ったか見当もつかねぇ……」
    『オッチンなら探せるだろうが、奇妙だな』

    ラッセルが色々弄ってる宇宙服だ、ヘルメットが割れてるんなら『それ以外』の方だって無事じゃ済まねぇはず。俺だって他のヤツらだって覚悟はしていたさ。なのに『体液』の一筋だって跡がない。

    「前にパピが言ってた、アレか?昼に倒した原生生物の死骸は夜んときどこ行くんだってヤツ……」
    『あのときはもう話は止めましたが……』
    『……少なくともここにはアンシーがいないんだ。またオッチンに探してもらおう』

    考えるにしても情報が足んねぇ。今は足を動かさねぇとな。
    またワン公の後ろに着いていってると、少し遠くに見覚えのある色で光るモノが見えた。

    「めっちゃ光ってんな……ありゃヒカリヅカだけじゃねぇだろ」
    『おそらくはヒカリピクミンもいるようですね』
    『オッチンも反応を示しているようだし、あそこにアンシーがいるのかもしれんな』

    あの場所を注視しつつワン公の後に続けば、結果的にそこにたどり着いた。少し離れた場所で、ひとまず様子をうかがう。

    「アンシーはいたが、あんまりモサモサしてねぇな?」
    『てっぺんに葉っぱは生えていますが、確かにモサモサはしてませんね。徐々に葉っぱ人になっているんでしょうか』
    『ヒカリピクミンがいたから、原生生物には対処出来ていたようだな。しかし早く見つけられて良かった。連れ帰ってパピヨンに見てもらおう』
    「アイ・コピー!引っ張ってでも連れて帰るからな!」

    物陰から出た俺はアンシーに近づく。

    「よう、新入り、こんなとこでなにしてんだ?」
    「あれ、ディンゴ先輩、オッチン。先輩こそどうしたんですか?」
    「決まってんだろ、オマエを連れて帰りに来たんだよ」

    相変わらずの顔で首をかしげるアンシーに手を差し出す。……ワン公も来たってのに喜びも見せねぇ。

    「ほら、皆待ってるから帰ろうぜ」
    「……」



    「俺は帰りませんよ」

    俺を探しに来てくれたディンゴ先輩が驚いている。そんなに俺が帰るはずって自信があったのかなぁ。

    「……なんでだよ、し、アンシー」

    説得の為なのか、新入り新入りって言ってたのを名前呼びに切り替えてる。流石だなぁ。
    でも俺に帰る気はないよ。

    「俺が俺の為に俺らしく俺でいられるからですよ、ここが」
    「それにです、こんな大自然はすべてのしがらみから俺を解放してくれるんです。俺が、ずっと求めてた、魂の故郷はきっとここだったんです」
    「ここだと俺には世界が輝いて見えます。俺の、愛しい黄金郷エル・ドラードなんです」
    「エル、……?」

    ピクミン達がずっと俺を呼んでたのかもしれない。最初はオリマーさんだったのかもしれないけど。
    あ、もしかしたらヒカリピクミンかな。なんせああして俺を迎えに来てくれた。

    『だからって諦められる訳がないだろう!……先にアンシーを見つけたのは私なんだからな!この星に取られてたまるものか!』

    隊長に見つけて貰えたから今の俺があるのも分かってる。俺を心配してくれる人達も出来て、甘やかしたりもしてくれて。
    でも、隊が好きだからこそもう居られない。

    「なら……対立するしかないですね」

    先輩と戦うのは嫌だけど、意見が合わないなら仕方ないよね。
    俺の言葉に直ぐ様臨戦態勢となる先輩。その様子から戸惑いつつも、オッチンも威嚇してくる。うーん、オッチンと戦うのもやだなぁ。

    「ああそうだ、一ついいですか」
    「……なんだ」

    一歩、一歩とディンゴ先輩に近寄る。手が届くくらいの距離まで。
    それにしても先輩、やっぱり俺に甘いなあ。

    「〜〜〜〜〜っ!!?!?」
    「……すいませんね」
    『ディ、ディンゴさん!!!』
    『アア〜〜!!』

    おおよそすべてのヒトの急所を思いっきり蹴り上げる。良かった、めちゃくちゃ力を込めたから、宇宙服の上からでもしっかり効いてる。
    地面に倒れ込んで悶絶してる先輩を横目に、俺はその場を離れる。

    「〜っ、ワン公!俺にっ構わず行けっ……!!」
    『……すまんディンゴ!オッチン、アンシーに向けてトッシンだ!』
    「さすがだなぁ」

    隊長は指示を出せるから、オッチンが俺に向かって来るのは想像出来てた。やることはいつもの夜と変わらないね。

    「……ごめんねオッチン」
    『っ、フラッシュバーストです!』
    『オッチン、ヒカリピクミンを振り払うんだ!』

    オッチンは強くなったからすぐ追ってくるだろうけど、……ね。今は夜。まだ倒してないのはそこそこいる。

    『しまった、原生生物がディンゴさんの方に!』
    「……クッソ!」

    手持ちのバクダンでどうにかしてるようだけど、まだ俺の攻撃から立ち直ってはなさそうだ。

    「オッチン、ディンゴ先輩が危ないよ」
    「ワウ!?……クゥーン」
    「ほらほら、また来てるよ。先輩あんまり動けないけど大丈夫かな」
    『……オッチン、戻ってディンゴを守るんだ。…………アンシー!絶対お前を取り戻す!私達のアンシーなんだからな!!』

    「……さよなら」

    うれしいなぁ、『私達の』アンシーだってさ。
    でもね、名残惜しいけど、俺はここがいいの。


    ……ほんとに?


    「……いやぁ、うん、当分ダメそうだよお」
    「見事にクリーンヒットしていたからな……見てるだけで肝が冷えたな」
    「私でも股がゾッとしたぞ……」

    行動不能になったディンゴさんをオッチンにつれかえっでもらい、パピヨンさんに見てもらっていた。
    確かにアレは見ているだけでも痛そうだった。まさかアンシーさんがあんなことをやるなんて……。

    「症状自体は結構深刻で、ちゃんと治療しなきゃいけないやつ。勿論アンシーくんを探しになんか行けないよお」
    「となると……」
    「うぐっ、わ、私が、行くぞ……!」
    「無理するのは良くないぞ、隊長」
    「しかしそうすると、流石にオッチンだけだと不安ですね……。いくらオッチンが百人力だとはいえ、オッチンも新米ですから……」

    夜の探索では、ヒカリヅカの防衛をオッチンに任せておかないと難しいときもたまにあった。大体の原生生物は見事に倒せていたが、相手がアンシーさんとなると……本格的な攻撃はやりづらいかもしれない。

    「オーゥ、思い出しマシター!!」
    「どうしたバーナード!」
    「いるじゃないですカー、2人!」
    「え?」


    「なるほど、それで私達が呼ばれたわけだね」
    「……」

    バーナードさんの言う2人とは、オリマーさんとルーイさんのことだった。一人だとディンゴさんみたいなことになるかもしれないから、二人呼ばれていた。

    「確かにお二人はピクミンと宇宙犬の扱いや、原生生物への対処も上手ですが……」
    「はは、気持ちは分かるよ」

    なんせルーイさんは問題行動の方が目立つ。本人の中ではしっかりとした理由があるんだろうけど、それを言葉に出してくれないから分からない。

    「……アイツ、ウソついた」
    「嘘?」

    突然ルーイさんが話し始める。何か約束していたのかと思い質問する。

    「ウマイ店探しに行こうって言ったし、一緒に帰ろうって言ってた。ババの佃煮も食べてみたいって言ってた。なのに自分だけ残るなんてズルい、ウソつき」
    「……なるほど、だから話を聞いてからイライラしていたんだね」

    ……ルーイさんがこんなに喋ったのは初めてかもしれない。普段無口なこの人がこれだけ饒舌なのは、それだけ怒っているからなのかな。

    「……それを聞けて良かった!なんせアンシーは嘘や隠し事が苦手みたいだからな。アンシーが色々言っていたことも全くの嘘ではないだろうが、残りたい気持ちが強いならまず私達にバレてるだろう」
    「やはり葉っぱ人になりかけていることで、思考に変化が生じたのでしょう」

    今はまだ帰りたくないってくらいみたいだけど、葉っぱ人化が進行すればダンドリに囚われてしまうんだろうか。

    「ああそうだ、ちょっといいかい」
    「どうしましたか?」
    「実は少々気になることがあってね……。私を含めて葉っぱ人になった人は、多分、皆オニヨンに吸い込まれて葉っぱ人になっただろう?だが探索出来る範囲のオニヨンは全て回収しているのに、いったい何が彼に葉っぱを生やしてるんだろうかって思ったんだ」
    「いつものオニヨンは……アンシーさんが落下したときには、ビーグル号と一緒にこちらに戻ってきてましたもんね」
    「オニヨンと類似のモノはヒカリヅカがあるが……待て。ヒカリヅカに吸い込まれて葉っぱ人になった場合はクスリが効くのか?」

    葉っぱ人のチリョウ薬はヒカリのミツから作られる。もしアンシーさんがヒカリヅカによって変化したのなら、分解作用が働いてくれるものだろうか?

    「……もしそうだとしても、どのみちパピヨンになんとかしてもらう他あるまい。すまないが、お二人は朝になって朝食を摂ったら出発して欲しい」
    「ソウビはこちらで用意しよう!宇宙服も予備があるから、ぜひともそちらを使ってくれたまえ」
    「了解したよ。こちらのはだいぶ古いモノだからね……本業の方々のモノなら安心だ」
    「ん……」

    気にはなるけど、分からないことをいつまでも考えたって仕方ないか。



    「さて、行こうかルーイ君」
    「ん……」
    『僕がナビゲートさせてもらいますが、現場で動くのはお二人です。くれぐれも気をつけて下さい』
    「もちろん。それはそれとして、こちらも頼りにさせてもらうよ」

    アンシーを探しに行くのに、レスキュー隊の装備を使えって言われて着替えた。ウチのやつより着心地が良い……。
    他にもモスとオッチンを連れていってる。おっきくてモフモフのモスの方がいいから、オリマーにはオッチン選ばせた。

    「いやぁ、プロの装備って違うねぇ。動きやすいよ」
    『それは良かったです!』
    「こんな状況だし年甲斐もないけど、ちょっとワクワクしちゃうね」

    オッチンとモスに乗って、アンシーのニオイを追いかける。オリマーはちょっとニコニコしてる。

    「大人はワクワクしちゃいけないの」
    「……!そうだね、べつに大人だからってワクワクしちゃいけない理由なんて無かったね。ありがとうルーイ君」
    「そう……」

    なんで感謝されたんだろ。やっぱりオリマーはよくわかんない。
    しばらくニオイを追っかけて、端っこの方の洞窟にたどり着く。

    「ワウ!」
    「ワンワン!」
    「この中にニオイが続いてるみたいだが……こんなところに洞窟なんてあったかな……?」
    『うーん、過去の記録を見ても確認されてませんね。葉っぱ仙人やあの大きい犬と戦った洞窟みたいに、なにか隠すエネルギーがあるのかもしれません』

    ふーん、見つからない洞窟もあったんだ。

    「さてルーイ君」
    「なに」
    「アンシー君を助けに行こうか!」
    「……ん!」

    ピクミン達も連れて、皆で洞窟に入る。
    中は結構広くて、……真ん中にアンシーが立ってた。周りにはヒカリピクミンがたくさんいた。

    「アンシー君!」
    「ワン!」
    「……あれ」

    オリマーが声をかけて、ゆっくりとアンシーが振り向く。少しだけど、葉っぱ人みたいにモサモサしてる……?

    『モサモサが増えてます!症状が進行しているようですね……』
    「早く助けてあげないとね」

    アイツは今もボーっとしてる感じだけど、今のはいつもと違う。

    「なんでオリマーさんとルーイくんがいるの?」
    「アンシー君を助けに来たからだよ」
    「……ごはん一緒に食べるやくそく守って」

    レスキュー隊の奴らはアンシーがほとんど嘘付かないって言ってた。……自分だってそういうやつだと思ってた。

    「う、う〜ん、どうしよ、おれはここにいたいしな……でもやくそくもだいじだし……」
    「君がここに残りたい気持ちも分かるさ。なんせこんなにも自然豊かだからね。でも、レスキュー隊のみんなが心配していたよ。みんなアンシー君の事が大事なんだ」
    『アンシー、君が大切なんだ……!一人で心細かっただろうに、新人の君が来てくれて、私達を慕ってくれて、本当に嬉しかったんだ。だから、どうか帰ってきてくれ……!』
    「うぅ!?でも、うー……、はなれちゃうのはやだ……」

    たくさん悩んでる。……どうして悩むの。

    「うぅ〜〜…………あ!そうだ!」
    『……どうした?』
    「みんなでのこればいっしょだ!」
    『なっ……!?』

    ……おかしい!『帰ろう』って言ってたヤツが『残ろう』なんて言わない!

    「な、何を言ってるんだいアンシー君!?」
    「だって、おれはここにのこりたくて、みんなはおれにかえってきてほしくて。だったらここをかえるばしょにすればいいかなって!」
    「……ごはん食べに行くのはどうするの」
    「それもなやんだけどね、このほしいろんないきものいるじゃん?そしたらあたらしいりょうりいっぱいつくれるとおもうんだ!……それじゃだめ?」
    「だめ」
    「そんなぁ……」

    だって誘ってくれたとき、ちゃんと自分を見てた。今は自分を見てる感じがしないからやだ。

    「そしたら……ちからずくで……」
    「「!」」

    流石に危ないから、オリマーも自分も近くのピクミンをひっつかんで構えた。
    ……動かない?油断しないで構えておく。

    「……違う。違うんだ、そうじゃない……!」

    さっきまでとは全然雰囲気が変わって、途端に落ち着いてない感じになる。

    「アンシー君!大丈夫か!?」
    「こんなことしたいわけじゃない、俺じゃない!俺なんだけど、俺じゃなくて……!」
    『大丈夫だアンシー!皆分かっているとも!』
    「はぁっ、俺がぐちゃぐちゃになる……!」

    そうこうしてると、なんだか不満そうなヒカリピクミン達がアンシーの周りを飛び回る。

    「う、うぅ……」
    「待てルーイ君!心配だろうが近寄らない方が良いだろう。彼らが何をしでかすか分からない今は危険だ」
    『私だって今すぐ助けに行きたいが…………そうした方が良いだろう。治療はパピヨンなら出来る!』
    「……わかった」

    オリマーが歯を食いしばってる。大人ってのは我慢しなきゃいけないのって思ったけど、オリマーも今すぐ助けにいきたいと思ってる。プロも言ってるし、今回は我慢する。

    小さな声が聞こえた。

    「あぁ、う、…………たすけて」
    「!、絶対助ける」

    笑う様な声を上げてからアンシーから離れたと思ったら、そのアンシーは全身モサモサになっていた。髪型はちょっと残ってるけど。

    『なんてことだ……やはりヒカリピクミンのせいだったのか……』
    「こうなってしまっては説得は厳しいだろうな」
    『お二人共、大体の怪我ならパピヨンさんがなんとか出来ます。ですから、心苦しいかもしれませんが、何としてでもアンシーさんを連れて帰って来てください!』
    「もちろんだとも!傷つけるのは嫌だが今回ばかりは仕方ないさ」
    「……ん!」



    「だ、大丈夫かいオッチン……」
    「クゥーン……」
    「……よくやった」
    「ワゥ……」

    ヒカリピクミン達を全滅させ、アンシー君を気絶させてなんとか行動不能にさせられた。
    ただしアンシー君もこれまでこの星で上手くやってきていたから、こちらもそれ相応の損耗になった。100匹いたピクミンたちは四分の一ほどになってしまったし、私とルーイ君やオッチンとモスだってボロボロにまでなった。アイテムだって沢山用意してもらっていたのに、簡単に数えられる程にまで減ってしまった。
    本職の装備を借りているからこれで済んだが、元々着ていた宇宙服だったら持ちこたえられなかったかもしれないな……。
    それでも、そこまで頑張ったからこそアンシー君を、ひいてはヒカリピクミン達を止められた。

    「さて、連れて帰るまでが目的だ。疲れ果ててるかもしれないけど、もう一踏ん張りだ!頑張ろう!」
    「…………ん」

    いつもとハッキリ違うわけでは無いが、心なしかルーイ君も疲れている様には見える。彼は若くて体力もあるが、流石に堪えたようだ。
    ここで横になって休んでしまいたい気持ちもあるが、アンシー君を運ぶのが先だ。

    「オッチンくん、よく頑張ったね。ご褒美のやみつきボーンだ!」
    「ワゥ〜ン!!」
    「ふふ、君もかわいいね。さて、相棒のアンシー君を、運んでくれるかい?」
    「ワゥ!」

    ルーイ君も同じ様にモスにやみつきボーンをあげて、二匹が食べ終わったところで二人共上に乗る。
    マルノミさせるのは少し心配なので、葉っぱ人になってしまったアンシー君は咥えて運んでもらう。

    しかし、ヒカリピクミン達がアンシー君を葉っぱ人にしてしまったのに、どうして他のピクミン達は我々に協力してくれたんだろうか。彼が葉っぱ人であるのはピクミン達も都合が良いはず。……いや、前に私と戦ったときもお互いにピクミン達がいたし、そこまで気にすることでもないかもしれない。

    それはそれとして、もしかするとヒカリピクミン達に独占されるのが嫌だったからかもしれないな。
    私がこの星で探索していたときはそもそも夜に外に出なかったし、葉っぱ人になってからも見た記憶が無かった。ドクターがヒカリヅカを観察していたときにも現れなかったらしい。アンシー君が来たときに現れたのは、ヒカリピクミン達が好く何かがあったからなのだろうか。
    そうだとしても、アンシー君をみすみす明け渡す気なんてないけどね。


    「ありがとうお二人共!オッチンとモスもありがとう!よくぞアンシーを助けてくれた……!」
    「ワンワンッ!」
    「ワウッ!」
    「なに、私だって彼に助けられたからね。お礼みたいなものさ」
    「……ん、ご飯食べに行くから」

    ビーグル号ごとこっそりシェパード号の中に入り、私達を待っていた彼らにアンシー君を引き渡す。

    「ボクでも治せるかは分からないけど、そもそもアンシー君が帰って来なきゃ治すのも出来なかった。二人共本当にありがとう……!」
    「なに、やるべきことをやったまでさ。君達だってそうだろう?」
    「……うん!それじゃあ、ボクはラボでどうにか出来ないか試してくるよお」

    そう言ってドクターはアンシー君を治療の為に運んでいく。

    「ルーイ君、お腹が空いただろうしご飯を貰いにいこう」
    「…………」

    珍しいことにご飯の言葉になびかない。アンシー君を心配してるのだろう。彼は、恐らく数少ないルーイ君と仲が良い人だ。彼も口数は少ない方らしいし、どこか波長が合うのかな。

    「私だって心配だよ。でも治療に関して出来ることはほとんどないし、今出来ることはドクターを信じて彼の無事を祈ることだ。それに、アンシー君が治って顔を見せるときに健康でいないと、彼を心配させてしまうよ」
    「ん……」
    「さて、お昼を食べに行こうか」

    今度はちゃんとついてきてくれた。ドクターの治療が上手くいくと良いけど……どうだろうか。



    「……駄目だ、やっぱり効かないな」

    残っていたチリョウ薬を使ってみたけど、アンシーくんのモサモサは変わらず保たれている。ヒカリヅカによって葉っぱ人になった説が濃厚そうだ。

    ハッキリ言ってお手上げだった。
    何でも治せるとは思わないけど、それでも自分が宇宙でも優秀なドクターだという自負がある。それ故に、治療の手がかりが見つからないことに対してとても悔しく思う。

    「(専門は獣医だけど他の知識のあるスパニエルさんや、植物学者のフレーヌさんにも助力を乞うべきかもしれないなあ)」

    フレーヌさんを巻き込むのは申し訳ないけど、事が事だしそうも言ってられない。アンシーくんだけ置いてくなんてまっぴらごめんだ。

    「くあぁ、流石にずっと作業して疲れたし、その前にちょっと休憩しないとお」

    話をするなら、しっかりと話ができる状態で行かないとねえ。
    壁際のデスクに治療した情報をまとめ、椅子に座ってもたれる。情報と言っても、残念ながらたいしたものはないけどねえ。

    そうやって休憩していると、背後からゴソゴソと音が聞こえた。

    「アンシーくん、もしかして起き……!?」

    よく見ると、アンシーくんの顔を蔦が覆ってしまおうとしていた。

    「な、なにこれ!チリョウ薬は……効くけどすぐに再生してる……!」

    残ってたチリョウ薬をかければ萎びたけど、それを上回る速度で再生や増殖をしている。
    ……まさかチリョウ薬で活性化でもしたのか!

    「葉からしてヤドリピクミンではなさそうだけど……これは流石に危険かもお!」

    一旦離れて、部屋に設置されている緊急ボタンを殴るように押す。緊急事態を知らせるアラートがシェパード号全体に鳴り響く。こればっかは隠すと危ない!
    そうこうしてる内に乗っ取られたのか、……はたまたアンシーくんの意思なのか、宇宙服から突き出した蔦にボクは捕まってしまった。

    「アンシーくん!目を覚まして!」
    「…………すいません」
    「アンシーくん!」

    正気じゃなくともアンシーくんの意識があるのは分かっただけマシか。
    ボクを縛った蔦を切り離し、ボクを置いてアンシーくんはラボから出ていく。



    アンシーのお見舞いにこようとして迷ってたら、いきなり警報が船内に鳴り響く。……ラボって書いてある部屋から危なそうな音がするんだけど、もしかして原因そこ?

    「!」
    「うわ!……あっやばいかもっ」

    全身が蔦で覆われた化け物がボクを捕まえる。

    「は、離せよ!……ってもしかしてアンシー?」

    全身蔦だらけでも頭部に生えてる一部はオレンジ色だし、髪型とか体格もアンシーそっくりだ。

    「…………さよなら」
    「なんだ喋れるのか……ってなんだいさよならって」
    「……もう会わないから」
    「おいおい!もしかして自殺でもする気かい?」
    「しない、この星で生きるだけ」

    死ぬ気は無いけどここで生きるって、一人でこの星に残る気かよ!せっかく友達になったってのに?

    「というかさ、その、なに、蔦?それで悩んでるなら、ここのドクターならなんとか出来るんじゃないの」
    「俺がコイツと離れたくないからやだ」
    「もしかして検疫とか気にしてるの?なら尚更大丈夫でしょ。御曹司の権力があるじゃんか」
    「嫌だ!」

    捕まえてる蔦をボクごと強く床に押し付けて、更に強く締め付けてくる。

    「っ、なんでだい、権力はあるなら、使わなきゃ」
    「嫌だ!俺がそんなことさせたくない!」
    「なんだよ意地張ってるのかよ!」
    「そうだよ!!」

    プハッ、アンシーがこんな声を荒げてるなんてレアだね!

    「それに皆といたら俺がダメになる」
    「ボクが見る限りっ、むしろいないと、ダメになりそう…だけどっ?」
    「だからだよ!期待しちゃうから駄目なんだよ!!」

    そうやって言い合いをしていると隊員であろう誰かがやってくる。
    今良いところなんだけどな!

    「!……おいまさかアンシーなのか?」
    「……話は終わり」
    「いいやまだっ、終わりじゃないね!そもそも人は誰もが勝手に、他人に期待して生きてく存在だぜ?やらない方がむしろ変だよ!」
    「変で良いさ!期待するのもされるのもいらない!!もう感情に振り回されるなんてごめんなんだよ!!」

    アンシーの感情が高まって痛い程に締め付けられたあと、何故か拘束が緩くなる。……泣いてる。

    「嫌なんだよ、もう疲れたんだよ……俺なんか切り捨ててくれよ……」
    「ボクは嫌だね。まだ友達になったばっかだぜ。レスキュー隊の人達だって嫌だろうさ」
    「うぅ、じらないよ、ぐすっ……」

    他の隊員も来るけど最初に来た小さいやつが止めてるのか、邪魔されずにアンシーはしばらく泣き続ける。
    そして泣き続けて疲れたのか、ゆっくりとボクの方に倒れてくる。それを見てか流石にこっちに駆け寄ってくる。

    「……お前一般人なのに無茶し過ぎだろ」
    「友達の為なら無茶くらいするさ」
    「俺はコイツとオマエが友達なのに驚いてるけどな」

    どいつもこいつも言ってくれるなぁ。そんなにボクとアンシーが友達なのが変かよ。
    そうは言いつつも他の隊員も寄ってきて、蔦を解いてくれる。良かった、緩んだとしても絡まってたから、ボク一人じゃ脱出するの無理そうだったんだよね。

    あれくらい本音をぶちまければ、まぁ、プロならなんとか出来るでしょ?
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works