朝に弱い自機の話「さて、二人共しっかり食べて明日に備えてくれ」
「はい!」
「了解です」
そこまで苦労はなくオッチン、コリー先輩、隊長と合流し、今はシェパード号ので晩御飯を食べていた。
いや、苦労自体はコリー先輩が頑張ってエンジンをどうにかしてくれたのがあった。簡単な物なら説明書とか設計図があれば直せるだろうけど、流石に宇宙船のエンジンを直すのは俺には無理だ。コリー先輩がシェパード号近くにいて本当に助かった。
「コリーはそんなに食べて大丈夫か?ヘルメットが……」
「もう、大丈夫ですよ!そもそもここ数日何も食べれてなかったんですから!」
そういえば、人が飲まず食わずで生きられるのって1週間……いや、もう少し短かったっけ。スリープモードがあるらしいとはいえ……、俺が無事にたどり着けて良かった。
「アンシーさんも結構食べるんですね」
「え?ああ、はい。背が高いかららしくて……」
普通の1人前だと満足出来ないから、どうしてもエンゲル係数が高めでちょっと困る。
「コリーもコリーで心配だが、アンシーはちょっと細くて心配だぞ!これからはどうしてもアンシー頼りになってしまうだろうから、もっと食べてくれ」
「え、えーっと……」
「いきなりは難しいでしょうし、無理しなくていいですよ」
「あー、でも、もうちょっとは食べれるようにはなりたいので、いつもよりちょっと増やしてみます」
なんとなく適正体重を調べたときに足りない事を知ったけど、胃の容量にさ限界があるからなかなか難しかった。食べること自体は嫌いじゃないんだよなぁ。
◆
「うーん、アンシーさん遅いですね……」
「目覚ましが壊れてるか、目覚ましでも起きない程に深く寝てるのかもしれないな。コリー、起こしてきてやってくれ」
「アイ・コピー!」
初任務で緊張して疲れてるだろうし、そのせいでぐっすり寝てるのかもしれない。起こしに行ってあげないと。
「アンシーさん、朝ですよー!……うーん、ぐっすりだなぁ」
大声で起こしても揺すってもなかなか起きなかった。
根気強く続けてると、やっと目を覚ましてくれた。
「おはようございます、アンシーさん」
「ぁいあす…………」
体を起こしたがまだフラフラとしていて、呂律が回ってない。僕も手伝って、なんとか私服に着替えさせることができた。隊服はちゃんと目が覚めてからの方が良さそうだ。
「朝ごはんにしましょう。隊長とオッチンも待ってますよ!」
「んぁい……」
あんまりにもフラフラしているから、心配だし手を引いて食堂連れてこう。そんなことを思っていると。
ゴッ!!
「っあーーーーーー」
「アンシーさん!!」
背が高いせいで、ドアをくぐるときにアンシーさんが盛大に頭をぶつけてしまった!
流石にとても痛かったのか、おでこを抑えてうずくまっている。
「っいーーーー」
「だ、大丈夫ですか!!」
「大丈夫じゃないです……」
ああ、痛そうだ……。
音と騒ぎを聞きつけたのか、隊長とオッチンが慌ててやって来た。
「どうした、何があったんだ!?」
「ワンワン!」
「実はアンシーさんが思いっきり頭をぶつけまして……」
「なんだって!?大丈夫なのか?」
「いきてます……」
絞り出すかのような声でアンシーさんが返事をする。
「クゥーン……」
「う、なめ、ありがとうオッチン……」
「ほら、見せてみろ。…………あー、随分と膨らんでるな。とりあえず冷やして、午前中は安静にしていなさい」
「僕氷嚢作って持っていきますから、先に食堂に行ってて下さい」
◆
あまりにも痛くて目が覚めた。くぅ〜〜っ、油断してた……。
「朝からご迷惑をおかけしてすいません……」
「なに、起きるのが遅かったのも頭をぶつけたのも仕方ないさ。急に来てもらったんだからな」
「あー、えっと、実は元々朝にめちゃくちゃ弱い体質で……。頭をぶつけるのも、朝の寝ぼけてるときが多いんです」
「そうなのか……」
朝が弱いのもあって、なかなか学校にちゃんと通えなかった。大抵はお昼からの登校だった。優しい先生がいてくれたお陰で、学校生活もなんとか程々にやっていけた。
「隊に入れた時は嬉しかったんですけど、そういえばこの体質どうしようって思ってる内に……」
「ううむ、すまない……。ただウチには優秀な科学者と医者がいるからな、2人と合流出来れば何か解決策を出してくれるだろう」
「隊長がそれほどに言うなら、期待できますね」
爆音目覚ましでもどうにもならなかった。カーテンを開けて光の目覚ましと、振動する身につける目覚ましを使ってなんとか起きれていた。それでも気持ちよくは目覚められないし、そもそも急いでこの星に来たから持ってこれていないが。
長年悩まされてきたこの体質に終止符を打てるなら、なんだって……出来るわけじゃないけど、まぁやれることはやるつもりだ。
「氷嚢持ってきました!」
「ありがとうございます」
「さて、少し遅くはなったが朝食にしよう」
◆
そしてその日合流したラッセルさんが、空気で膨らませるシーツのようなタイプの目覚ましを直ぐに作ってくれた。始発の車掌や操縦士の人がよく使っているらしい。
これで朝に弱いのとはちょっとはオサラバだ!