桜、笑う「ヤマさんヤマさん、今日差し入れすごいっすよ」
トレイからはみ出しそうなぐらいに差し入れを乗せて控室に戻ってきた俺を見て、ヤマさんはいつものように低い声で笑った。
「あー、そうか、315さんの現場初めてか」
「いつもこうなんすか?」
空調があまり効いていない控室はうっすらと冷えていた。廊下から伝わる冷気を遮るように扉を閉めて、トレイを差し出す。ヤマさんはビーフシチューの入った丸い容器とケーキの乗った紙皿を二つ取った。予想通りだ。体を動かす日だから甘いものを食べてもいい、がヤマさんの持論だった。いつもは控えめにしているかといえばそういうわけではないけれど、それは黙っておく事にする。
「おう。せっかくだしたくさん食っとけよー」
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