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    シャル

    @sha0bjtrio
    成人済。東卍。バジトリオ。ばじふゆ ふゆとら ばじとら。ぜんぶ左右非固定。字書き初挑戦。

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    シャル

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    ・ばじふゆ
    ・大人if
    着物で京都の初詣。千冬と場地さんの願い事。今でも漢字に弱い場地さん。

    #ばじふゆ
    bajifuyu
    #初詣
    hatsumode

    大晦日から2泊3日の京都旅行、お正月ということもあり、初詣は着物で行くことにした。
    泊まっている旅館の着付けサービスを利用しようと言い出したのは意外にも場地さんだった。

    「すみません、この着付けサービスって今からでも頼めるんですか?」
    旅館のチェックインをしている俺の横からひょこっと顔を出した場地さんが、カウンターの向こう側にいる仲居さんに聞いた。
    「もちろんでございます。お着物もこちらでご用意させていただきますのでご安心ください。この後ご利用になられますか?」
    仲居さんは急な申し出にもかかわらず笑顔で応えてくれた。
    「千冬ぅ、これ着て初詣行こうぜ。」
    「良いですね。場地さんの着物姿、見られるの楽しみです!明日、午前中に初詣行きたいんでお願いできますか。」
    場地さんの成人式の時のカッケェ袴姿を思い出していた。あれからもう5年も経つのか。
    「かしこまりました。明日の朝食後、お着物をお持ち致しますね。」
    「急にすんません、ありがとうございます。」
    場地さんは嬉しそうにニカッと八重歯が見えるくらい笑って言った。

    「お、いいじゃん。」
    紺色の着物と羽織に身を包んだ場地さんが俺を見て一言。
    「へへっ場地さんもカッケェっす!」
    俺は青みがかった明るいグレーの着物に紺色の羽織にした。数種類ある着物の中から、場地さんが明るい色が良いと選んでくれたものだ。巾着や草履まで一式貸し出してもらったので、和装で京都の街を歩けるのが嬉しい。京都で初詣1番人気の神社まではここから歩いて20分ほど。とは言え、昨日の夜は盛り上がってしまったので腰が重い。初詣の後は京都散策をしようとなっているのに長時間、慣れない草履で歩けるだろうか。
    「まぁ、あれだ、時間はいっぱいあるんだし休憩しながらゆっくり歩こうぜ。」
    本当にこの人は。俺が考えてることをどうして手に取るようにわかるのか。
    「お前さ、成人式スーツだっただろ?だから千冬の和装も見てみたかったんだよな。似合ってるよ。」
    そう言いながら場地さんは俺の髪を撫でて、後頭部を掴み、優しくキスをしてくれた。

    ゆっくり歩いてくれる場地さんのおかげで身体はそれほど辛くなかった。それよりも人ごみで歩きにくくてしょうがない。羽織があるとは言え寒さも身に染みる。冬の京都は寒いと聞いていたけど正直舐めてた。そんなことを考えていたら場地さんが手を繋いで来た。
    「場地さっ」
    「寒ぃな、けどこんだけ混んでりゃ見えねぇだろ。はぐれんなよ。」
    照れ隠しなのかこちらを見ないままそう言った。嬉しくてぎゅっと握り返す。身も心もあたたまり、多幸感に包まれる。俺たちのことを誰も知らない土地で着物を着て大好きな人と手を繋いで歩いてる。その非日常さに心躍った。
    神社に着くと一層混み合ってて覚悟はしてたものの、内心苦笑いした。参拝まで列ぶの嫌じゃないかな。
    「せっかくここまで来たんだから賽銭入れて帰ろうぜ。離れんなよ。」
    無意識に伺うような目をしていたのだと思う。耳元で優しくなびいたその声は、俺を安心させるかのような言い回しだった。それから、はぐれんなよと言ってたのが今度は離れんなよになったのが、妙に嬉しかった。

    ようやく先頭まで来た。お賽銭を投げて鈴を鳴らして二礼二拍手して祈る。そっと場地さんを盗み見たら、綺麗で真剣な横顔が映った。見惚れていると視線を感じたのか目が合ってしまい、前を向けと無言のまま顎で指示された。一礼して、次の列の人たちに場所を譲る。
    「何祈ってたんすか?」
    「内緒。でも10年前から変わんねぇよ。」
    「えー!教えてくださいよ!俺は今年も場地さんと楽しい日々が送れますようにって。」
    「おまっ口に出したら叶わないらしいぞ!」
    「えっ」
    「どうすんだよ、んな大事なこと。あーでも俺が祈ってるから大丈夫か。」
    「えっ、それって…」
    「あーーー!バレちまったらダメじゃん!」
    額に手を置き天を仰いでいる。
    「場地さん!場地さんも俺と同じこと祈っててくれたんすね!」
    「そこじゃねぇだろ。」
    「あ、でも俺、人に話した方が叶うって聞いたことあります。」
    「まじ?」
    ホッとした顔をした場地さんを見て、ほんとそういうところ!と今度は俺から手を繋いだ。

    結局真相はわからないままだけど、場地さんの願いを聞けて俺の頬はゆるみっぱなしだ。屋台の焼きそばを見つけて半分こした。ちょうどお昼どきで腹も減ってたからたこ焼きや牛串、他にも色々と半分こにしながら食べて、お目当ての抹茶パフェで有名なお店に出向く。食ってばっかだななんて笑いながら。

    「なぁ、今日の夕食って寿司なん?昨日みたいな旅館って感じの豪華な料理はでねぇの?」
    昨日の夕食は確かに豪華だった。大晦日だからと小さなお蕎麦もついて。
    「今日も昨日みたいな豪華な料理のはずですけど?寿司は…もしかしたらちらし寿司かにぎりが何巻か出るかもしれないっすね。寿司食いたいんすか?」
    どこから寿司が出てきたんだろう。
    「食いてぇっつーか、スケジュールに書いてただろ、スシって。」
    「寿司?…すし?書いてましたっけ?」
    巾着の中からスケジュールを書いたメモを出して確認する。
    「ほらこれ、スシ。」
    「……場地さんこれ、スシって漢字じゃなくて初詣っす。寿司は魚偏で鮨っすね。」
    「あ?あー。1年の初めに食べるスシかと思ってたわ。」
    今年も楽しく過ごせそうだ。
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