約束『ハン・ジュウォン警部補、生きてますか?』
電話する日時を事前に確認していたので、ドンシクは電話に出てすぐに、そう囁いた。
人をからかうような言い回しに懐かしい気持ちになり、その後、何故か切なくなった。
「……はい。おかげさまで」
誰かに恋する感覚を知った自分に、まだ戸惑いがある。
これまでも、人間らしい感情が無かったわけではないが、ジュウォンにとっての感情は単に、自分の気分の話だった。人に対しての感情表現がより豊かになったのは明らかに、ドンシクやジェイのせいだ。
とはいえ、ドンシクのせい、などと責めればまた、あの妖しげな笑みと話術に弄ばれ、墓穴を掘る羽目になる。元々、ジュウォンが自ら首を突っ込んで追い回していたのだから。
8379