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    yuino8na

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    yuino8na

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    獣人パロ五乙の続きです。
    獣人五✕人間乙。
    全年齢部分はあと1話か2話で終わります。

    #五乙
    fiveB

    空に誓い5 近所のスーパー、お気に入りのパン屋、いつも行く花屋。
     
     思い当たる場所を駆け回ったけど、どこにも悟が居ない。あんなに抱きしめ合って、キスをして、側に居る存在の幸せを感じたはずなのに、朝になったら姿が消えているなんて。そんなの、まるで――。
     パチン、と両頬を叩いて憂太は浮かんだ思考を打ち消す。
     悟が居なくなって二日。この二日間、悟は一度も家に帰ってきていない。二、三日で帰る。その言葉を信じたくても、湧きあがる不安の方が大きくて、仕事の合間を縫っては悟を探していた。
     そして思い知った。自分は、出会ってからの悟しか知らないということ。
     一緒に行ったスーパーやパン屋や花屋以外の、悟が好きな場所、一人で行きそうな場所に一切心当たりがないのだ。
    (これでパートナーなんて、言えるわけない……)
     獣人にとって唯一無二であるはずのパートナー。それなのに、悟が求めることにも十分に応えられず、彼のこともなにも分かっていない。
     一人の寂しさに押しつぶされそうな時に助けてくれたのは、間違いなく悟だ。それなのに、自分の方が悟から愛情を与えられるばかりでなにも応えられていない。
     ちゃんと食べて寝るように、とメモを残されていたのに、悟が姿を消してから碌に食べることもできず、眠れていない。これ以上職場に迷惑をかけるわけにもいかないので、仕事は必死に頑張っているが、顔色の悪さを何度も指摘されている。
     ほんの数週間前も同じような状況だったな、と思い出し憂太は顔をあげた。
    (そうだ。あそこなら……)
     思いついた場所に一刻も早く行きたくて、憂太は目の前の仕事に集中した。


     憂太が向かった先は、商店街の一角にある『ペア専門店 partner』だ。
     仕事を終えてから来たので、時刻はすでに夜七時。そのせいか、店のドアにはCLOSEの文字が書かれたプレートが下げられており、隙間から店内を覗き見ても光がない。
    (遅かった……)
     そういえば、前回来た時は仕事を早退させてもらった日だったことを思い出す。
    (どうしよう……)
     頭の中で思考がぐるぐると回る。悟が居なくなってから二日目の夜だ。もしかしたら、家に帰ったら悟が居るかもしれない。でも居なかったら……。そう考えると、なかなかここから動くことができない。
    「あれ? なにか御用ですか?」
     背後からかけられた声に、憂太は弾かれたように振り返った。見覚えのある黒髪長身の男性。記憶を掘り起こして、憂太はその人物の名を呼んだ。
    「夏油、さん……」
    「あ。覚えててくれたんですね。お久しぶりです、乙骨さん」
     どこかの買い物の帰りなのか、スーパーの袋を片手に持った夏油が、にこりと微笑んだ。そんな彼に慌てて駆け寄って、憂太は震える唇を開く。
    「あ、あの。悟が、悟が行きそうな場所に、心当たりはありませんか?」
    「……悟が、どうかしたんですか?」
    「二日前に急に居なくなって。二、三日で帰るってメモはあったんですけど、心配で……」
     心配、なのではない。不安なのだ。悟が自分の元に本当に帰ってきてくれるのか、不安で不安で堪らない。悟は獣人ではあるが、自分より年上の大人だ。一人でどこへでも出かけられるし、帰ってくることもできる。そんなことは分かっている。
     それでも、ただただ不安なのだ。
     自然と俯くと、夏油の手が肩に乗った。顔を上げると、まるで貼り付けたような笑みを浮かべる夏油と目が合う。
    「見つけて、どうしたいんですか?」
    「どうしたい、って……」
    「今なら、パートナーを解消するチャンスですよ?」
     笑顔のまま言われた言葉に、心が凍り付く。
    「パートナー解消なんて、そんなこと、考えてません! それに、一度パートナーになったら解消できないって」
    「それは正式にパートナーになったら、の話です。君はまだ、悟と正式なパートナーになっていないでしょう?」
    「正式なパートナーって、だって僕は悟に首輪をして、それに、役所に書類も……」
    「まさか、そんな形式だけで、獣人とパートナーになれると、本当に思ってたんですか?」
     笑顔のまま、夏油の目が鋭く細められる。自分は悟の正式なパートナーではない。そう突きつけられた言葉が理解できず、その場に立ち尽くす。
    「正式なパートナー契約の方法は、獣人から相手に話す決まりですからね。それを知らないということは、君は悟に信頼されていないんじゃないですか?」
    「そ、んな……」
     そんなこと、信じられない。
     悟を抱きしめて、数えきれないほどキスをしたあの夜の記憶は今も鮮明だ。悟の求めに全て応えられなかったのは事実だとしても、そこには確かに愛はあった。里香への変わらぬ愛情と、悟への愛情は、別々の形ではあるけれど、憂太の中に確かにある。
    「残念ですが、僕が答えられるのはここまでです。閉店の時間も過ぎているので、お引き取りください」
     立ち尽くす憂太の横を、夏油がすり抜ける。その瞬間、スーパーの袋の中で動くものが視界に入って、憂太はとっさに夏油の腕を掴んだ。
    「まだなにか?」
    「……まだ、僕の質問に答えてもらっていません」
     悔しいけれど、今の会話で夏油の方が自分より状況が分かっているように感じた。そんな彼が、悟の居場所に心当たりが無いとは思えない。
    「袋の中の二人分の食事は、誰の分ですか?」
     四角く広がった袋の形。すれ違った時に中身を覗き見て、スーパーで売っているような弁当が二つ入っていると分かった。それに、ミネラルウォーターのペットボトルも二つ。
    「……へえ」
     夏油の顔から、はじめて笑みが消えた。だが、怯むことなく夏油を見つめると、また彼はふっと笑う。
    「すまない。僕は君を見くびっていたようですね。あの悟がパートナーに選んだだけのことはあるようだ」
     そう言うと、夏油は再び憂太と正面から向かい合う。
    「君は、悟と獣人の真実を見る覚悟はあるかい?」
    「真実って……」
    「さっき言ったことはすべて本当のことですよ。君はまだ、悟の正式なパートナーではなく、そして今が悟のパートナーを解消する最初で最後のチャンスだ」
     なぜそんなことに念を押されるのか分からない。少なくとも、自分はずっと悟のパートナーだと思っていたし、一生離れない覚悟を決めて悟とパートナー契約を結んだのだ。
     覚悟は、もう決まっている。
    「僕が悟と離れる日が来るとしたら、それはどちらかが死ぬ時だけです」
    「……そこまで言うなら、会わせてあげますよ。今の悟に」
     そうして、夏油はCLOSEのプレートのかかった店のドアを、大きく開いた。


     明かりの消えた店内の、さらに奥。鍵のかかった扉を開けると、そこには地下へと続く階段があった。
     長い地下へと続く階段は部屋よりさらに暗く、鳥肌が立つほどに寒かった。地下への階段を降りていると、前を歩く夏油がゆっくりと口を開いた。
    「なぜ国が、このようなパートナーを探す場を作り、さらにはパートナー契約を結ばせて獣人を管理していると思いますか?」
    「……獣人は愛情を求めるから、ではないんですか」
    「そう。それは表向きの理由に過ぎません。本当の理由は、愛情を与え抑えなければ、獣人が危険だからです」
    「……危険?」
     階段を降りると、またさらに扉があった。大きな鉄の錠が二重に掛けられている見るからに頑丈そうな扉。その鍵を開けると、夏油が振り返る。
    「よかったですね。今はこの先に居るのは悟一人だけです。そうでなければ、乙骨さんを連れてくることはできませんでしたよ」
     他の子達は、無事にパートナーが見つかりましたから。
     そう言いながら、夏油は扉の横に置いてあったなにかを手に取った。目を凝らして見ると、それが黒い拳銃だと分かり、憂太は思わず後ずさる。
    「安心してください。乙骨さんは撃ちませんよ。ただし、悟が君に危害を加えるようなことがあれば、その瞬間に悟は処分対象となります」
    「処分って……」
    「言葉通りですよ。さあ、悟はこの先です」
     重たい扉を押し開き、突き刺すように冷たい風が吹き抜けた。ほのかな明かりに照らされた扉の奥。その光景に、憂太は目を見開いた。
    「……さ、とる?」
     真っ先に視界に飛び込んできたのは、大きな鉄格子。その奥で鋭く光る青の瞳。響いたのは、地を這うような唸り声。
     それは、自分の知っている悟の姿ではなかった。
     銀色の毛並み。1メートルは軽く超える大きな体躯は、大型犬よりさらに大きく見える。まさに獣だ。それでも、ピンと尖る耳と大きな尻尾には見覚えがあった。
     だが、その身体は鎖で壁に繋がれ、鼻先から続く大きな口元は黒い口輪で開かないように押さえられている。こんなの、拘束ではないかと、憂太は震えながら鉄格子に近づく。
    「……悟、なんだよね」
    「「グゥゥゥ」」
     低い唸り声。青い瞳は一度だけ憂太を見たあとは、鋭く眇られ、夏油を睨みつけていた。
    「なんで、こんな……」
    「これが、獣人が監視下に置かれる理由ですよ」
     鉄格子の前に座り込んだ憂太の背後で、夏油が静かに語りはじめた。
     ある一定の年齢を超えた獣人は、満月が近づくと凶暴化する。それを抑えることができる唯一の方法が、パートナーからの愛情。そのため、国は獣人に強制的にパートナーを見つけさせ、パートナーの居ない獣人は、満月の夜の前後二、三日はこのような地下施設に隔離されるのだという。
    「本来はただ地下室に入れられるだけなのですが、以前にも話したように、悟は獣人の中でも特に強く、獣人の中でも最強といわれる狼族です。そのため、より危険と判断され、このように拘束された状態で地下に隔離する決まりなんです」
    「決まりって……、いつまで……」
    「もちろん。パートナーが決まるまで、ずっと、一生ですよ」
     一生、その言葉がずしりと胸に響く。
     悟は憂太よりも一回りほど歳上だ。獣人は十代半ばからパートナーを求めはじめるという。
    (悟は、今まで、何度……)
     こんな暗くて寒い地下室で、重い鎖に繋がれ、いったい何度過ごしたのだろうか。たった、一人で。
    「僕が居るのに、なんで……」
    「言いましたよね、獣人の凶暴化を抑える唯一の方法はパートナーからの愛情。でもそれは、側に居ればいいなんて、簡単なものではありません。心当たりはありませんか?」
    「……、あ」
     愛情表現の一つであり、悟が求めているのに自分が応えられなかったこと。そんなの、一つしか思い当たるものがない。
     だが、悟はなんて言った――?
     ――いいよ。憂太が怖くなくなるまで、抱いたりしないから
     悟は未知のことに怯える自分を敏感に感じ取り、待ってくれると言ったのだ。そうすることで、自らまた一人になったのだ。この、冷たい地下室で。
    「……ごめん。ごめんね。一人が寂しいことを、誰かと一緒に居ることで救われることを悟が教えてくれたのに。僕が、悟を一人にさせたんだね」
     きっと悟は、何年も本能が求める相手に出会うのを待っていたのだろう。最強の獣人なんて言われて、それのせいで一人で檻に繋がれ、それでも本能が選ぶ相手を待ち続けた。
     そうして、悟は自分を選んでくれた。
     一人の寂しさに押しつぶされそうだった自分を、悟が支えて、側に居てくれた。
    「一人が寂しいことを知っていたのは、悟の方だったんだね」
     鉄格子の隙間から手を入れ、悟の大きな身体を撫でた。向けられた視線は鋭くて、こんな悟の目が自分に向けられることははじめての事だ。
     でも、それすらも、今は愛おしい。
    「一緒に帰ろう、悟。僕を、君のパートナーにして」
     限界まで伸ばした腕で悟の身体を抱き寄せると、突然悟が大きく唸り声をあげた。
    「悟?!」
    「「ウウウウッ」」
     低い声を上げながら、鎖を引きちぎるような動きで悟が暴れ始める。金属音と唸り声が響く中で何度も悟の名前を呼ぶと、視界の端に銃を構える夏油の姿が映る。
    「言ったでしょう。危害を加えるようなことがあれば、処分対象だと」
    「待ってください!」
    「動くと君にあたりますよ」
     両腕を大きく広げて、自らを盾にするように悟の前に立った。だが、夏油は銃を降ろさない。
     それどころか、構わず引き金を引いた。
    「悟?!」
     パシュッ、と空気を切るような音が響いた。その瞬間、暴れていた悟の身体が急に動きを止める。
    「悟! 悟!」
     必死に腕を伸ばして、悟の身体を抱き寄せた。でも、どこからも出血はない。
    「安心してください。ただの麻酔銃ですよ」
    「……え」
    「え、って。こんな所でおっぱじめられたら困るじゃないですか」
     なにが困るのか、状況についていけずに混乱していると、しばらく経ってようやく夏油の言葉の意味が理解できた。途端に真っ赤に染まった憂太を見て、夏油が大きく息を吐く。
    「店の裏に車を回します。そのでかいの、抱えてきてくださいね」
    「え、あ、あの……」
    「家まで送ります。あとは、その馬鹿をよろしくお願いします」
     そう言うと、夏油は嘘のない笑みを浮かべた。
     
     
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    ne_kotuki

    DONE生まれた時から親戚付き合いがあってはちゃめちゃ可愛いがられていた設定の現パロ。人気俳優×普通のDK。

    以下注意。
    ・捏造しかありません。
    ・乙パパ視点。
    ・ママと妹ちゃんとパパの同僚という名のもぶがめちゃ出歯ります、しゃべります。
    ・五乙と言いながら五さんも乙くんも直接的には出てきません。サトノレおにーさんとちびゆたくんのエピのが多いかも。
    ・意図的に過去作と二重写しにしているところがあります。
    とんとん拍子も困りものもう少し、猶予期間を下さい。


    ◆◆


    「横暴すぎるだろくそ姉貴ぃ……」

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