激高と激低でお似合いなんじゃねーか、とはパンダの談。その後一週間、可哀想なモノを見る目をされた。


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人間は、ふわふわした生き物を好む傾向がある。
勿論、全ての人間に当て嵌まるわけではないけれど。犬や猫、うさぎや小鳥といったふわふわ、もふもふとした毛皮を持つ生き物を愛でる人間は多い。
「あー、最高だなこのもふもふ」
「適度に暖かいしふわふわだし、枕にするには最高ですねー」
現にあの真希や野薔薇も、うっとりとパンダの毛並みを愛でながら昼寝をしていた。

「ふふっ、きみはほんとにふかふかだね～」
「ぬ～ん、ぬ～ん」
「ふわふわでつやつやしてて……はぁ、気持ちいい」
「にゃっふ～ん♪」

また、ふわふわもふもふな生き物は癒し効果も抜群なのだそうだ。
実際、犬や猫と触れ合うことでメンタルの安定だけでなく、身体的にも血圧の上昇や心拍数を落ち着かせる効果や、更には病気予防にもなるという研究報告もあるくらいである。

先輩後輩五乙　いつものように授業をサボっていたときだ。五条は校舎から一年生が体術の授業をやっているのを、口の中の飴を転がしながらぼーっと見つめていた。
　「ふーん、あれが乙骨憂太？」
　下から上までじとりと見渡してみるが、前まで特級だった奴とはとても思えないほど痩せこけていて、まるで枝のようだった。でも、確かに動きはまあまあ。真希程ではないが、防御のタイミングや、攻撃のレパートリーの豊富さ、それと何より、センスが良いのが大きい。流石とも言うべきか、特級クラスになっただけではある。これで更にあの「リカ」もついていたのだから、そりゃそうなるかと納得した。
「ま、良いや」
くるりとつま先を教室の扉の方へ向けて歩き出す。
それに、本当に俺が見たいのはーーー

双子で最強、親友で最恐、僕らは「さいきょう」 まとめ1989年　 五条悟　
　　　　 五条憂太　誕生
この年、対の怪物が世に生み出された

「おい、憂太。」

声変わり前なのに僕よりも男性らしい低くて甘い声が背後から聞こえてくる。
サラサラの生地がふんだんに使われた白と瑠璃色のグラデーションと背後から聞こえてくる声の主の目の色と同じ花が咲き乱れる僕の小紋に声の主、改め僕の双子の兄である悟兄様が羽織った小紋が重なる。

「何ですか？兄様」
「兄様なんてやめろよ。胡散臭くてて仕方ねぇ。」

兄様…いえ、悟兄さんはドッカリと僕の隣に腰を下ろす。
僕がいるのは、自室の縁側兼釣殿で、いつも涼しい風が吹き抜けるから家の中で一番のお気に入りの場所なんだ。
僕の生まれた五条家は呪術御三家の一角を担う、いわゆる名家で、能力の高さが物を言う家で、能力が高ければ兄を差し置いて弟が家長になることもある家でもあるんだ。

あなたと同じ景色がみえる場所にいたい　悩んでいる暇も悔いている余裕もない。守りたい人を守れるように、強くなりたくて、毎日、追いつかない遠い目標に向かって精いっぱいだ。でも、ふとした瞬間に、底のない暗い渦に巻き込まれそうになる。
　みんなから離れて、ちょっと木陰で休む振りをして、痛む胸を握りしめる。片手では足りないくらい、その暗がりが広がっていくのがわかる。
　もう両の手では塞ぎきれなくなる頃、僕の右手は大きくてがっしりした手に包まれた。
「大丈夫？　どこか痛むかい？」
　声と気配とその気づかいだけで振り向かなくてもわかった。
　日陰に侵蝕された日なたが、陰を押し戻していく。一瞬だけ、意識が飛んで、我に返るともう、足元の日陰が小さくなっていた。

ごおつをだめにするそふぁ　任務終わり夜中、休みの日四六時中、僕らは、三人は座れる広々としたソファーに二人分のスペースを残して乗り上げていた。たいていは僕が部屋で歩き回る憂太を捕まえて、クッション代わりに腕に閉じこめ好きにするのだが、最近はその流れも板についてきたのか、憂太から乗っかってきてくれるようになった。最高、の一言に尽きる。
「ゆーたぁ」
「ふぁい」
　最高の居心地なのは憂太も同じのようで、あくび混じりにすぐに返事はしてくれたがもぞりと身じろぎをしてすぐに動かなくなってしまう。また船を漕いでしまう前に、背中をトントン叩いて呼び戻した。
「寝るならベッド行くよ」
「嫌です。寝てません」
　急にはっきりと話し出し、よりいっそうむぎゅうとしがみついてくるものだから、この子の意地っぱりには笑ってしまう。

sky-high　夢を見ている。
　あの日、可愛い教え子であり、新しく生まれたばかりの特級呪術師を送り出す景色に、またこの夢かと五条は眠っているにも関わらず盛大な溜め息を吐いた。

『向こうに着いたらミゲルの言うことをよく聞くように。こっちとは勝手が違って大変だろうけど今の憂太なら大丈夫』
『わかりました。……あの…………え、と……』
『うん？　なあに』
『…………いえ……。がんばります』
『んんん？　まあ、ほどほどでいいよ。無理のないようにね』
『はい……』
　新学期が始まってすぐのころ。同級生たちと青春を謳歌する暇もないほど詰め込まれた任務に疲労困憊な乙骨憂太は、恩師であり導き手たる五条悟からの個人依頼を請け負うことになった。

無彩色の恋　呪術師が何人も帰ってこなくなったという、曰く付きの研究所。何人もいなくなる前に、早く特級クラスに回せばいいものの。しかし、現状、任務で動ける特級術師は僕しかいないから、仕方ないか。
　どんな突飛な呪いなんだろうかと、少々身構えて足を踏み入れたものの、すでに息絶えた死体ばかりが転がっている有り様だった。
「地下だな」
　身を隠すなら絶対に地下しかない。どんな面した、イカレた所長に会えるのかと思うと、ちょっと笑えてきた。
　地下室にはいくつも怪しげな部屋があったが、どれも人間の気配も、呪霊の気配もしなかった。
　僕の呪力の前ではどんな結界もザルだ。しらみつぶしに次々と簡単に突破して隔離部屋のドアを開けた。薄暗い部屋の奥に、人がいる。息絶えた人の腕には、数字と恐らく名前の類が記されたバンドがはめてあった。皆一様に黒い服を着せられて、同じ格好をしているので、彼らは実験体だったのだろう。かわいそうに、みんな餓死だった。

恋人としたくないハジメテ「先生、先生、悟さん！」
　ふいに名前呼びが混じるとうれしくなるのが恋人同士の普通の馴れ合いだろう。でも、僕は全く心ときめかなかった。今、この状態の恋人、憂太の話を素直に聞けば、ろくなことはないと経験がそう語っている。
　後ろに大きく左右に揺れるしっぽが見えるほど、興奮して上機嫌な教え子は、今にも恩師の僕に飛びつかん勢いだった。
「何かな、生徒の憂太くん」
「悟さん、僕とケンカしてください！」
　物騒な言葉をはいた張本人とは思えないほど、彼はチグハグな行動をしていた。ソファーでくつろいでいた僕に抱きついて頭をグリグリしながら、幸せそうに顔を埋めているのだ。こんなケンカの売り方があるか。
　僕も僕とて、恋人が胸に飛び込んできたのに受けとめないのもさみしいなと思って、抱きとめたのがいけなかった。憂太のおねだりに付き合ってあげるなら、突き放して投げ飛ばせばよかったんだ。学生時代の僕なら絶対そうしていた。

あふれそうな夜は　「先生、先生」と憂太が少々興奮気味で声をかけてくる。
「いーもの、見つけたんです」
　黒いしっとりとした艶髪に、深い藍を閉じ込めた大きな瞳とへにゃりとした口元。純粋にかわいいと思った。年相応でいて大人びた見た目も、まっすぐな性格も。いいものを見つけたら、独り占めしないでわざわざ教えにきてくれるところがとびきりかわいい。
　「先生、先生」と腕を取られ、案内されるがまま、屋上に上がった。夜更けの外気は冷える。ドアを開けた瞬間、憂太が小さく悲鳴を上げて、身を縮めていた。
「ほら、先生！」
　でも次の瞬間には、白い息を吐きながら、憂太は少しはしゃいだ声を上げて、上を指差した。顔を上げると確かに、星が瞬いてきれいだった。