秘密の庭園に赤いバラをほうき星の天文台のロフトと呼ばれる場所。チコたちは“ママの秘密の部屋”と称する。
中は青空と白い雲が広がる広大な自然豊かなところ。
此処は彼女が“あの頃の”――、“母が生きていた頃の”星見のテラスを魔法で再現した場所だ。
彼に此処を見せたら、いつまでも過去を引きずる女と軽蔑されるだろうか。それを想像すると、手に汗をかいてドレスのスカートをぎゅっと握ってしまう。
駄目な自分だ、今日は前向きな気持ちになろうと此処へ来たのに。
実はこの場所へ小さなバラの植え込みを作ろうと思っている。その為に本を読んだり、ピーチ城へ出入りしている庭師から話を聞く機会を設けて貰ったりと、植え込み作りの見聞を重ねて来た。一朝一夕で完成しない事は分かっている。だからこそ愛しいというものである。
今日はいよいよ実際に土をならし、種を植える予定だ。
いつか、母を思い出して泣かない強い自分になったら彼を招待して立派になった植え込みを見せたい。
その時を夢見てよし、と気合を入れる。
星の杖を一振りしてドレスからポニーテールのジャージ姿となると、彼女は農具を手に土いじりを始めた。
(おわり)