舌先の警鐘 卒業研究のメイン題材に選んだ銀の鍵の実物を引き取るため生まれて初めて国外へと出た僕は、この世にはまだ食事という行為に執着している人類がこんなにも存在するのかと、自国とのギャップに随分驚かされたものだ。グリーゼでは主流とされている最も効率的なサプリ食が宇宙規模で見れば少数派に分類されることがどうにも解せなかった。一時滞在したルゥアン星系でも、そこで突如発生したグノーシア騒動から逃れるためにやむなく緊急乗船した古臭い宇宙船D.Q.O.でも、僕以外の人——人型ではない生物も一部混じっていたが、ここでは等しく『人』と表現することとする——は皆一様に提供された食事を何の抵抗もなく口に運んでいた。その中でも特に目についたのが今現在、ワケあってグリーゼで生活を共にしている男、レムナンだ。D.Q.O.でグノーシアの脅威から逃れることに成功した船長と船員を含む乗員十四名は、船内にグノーシア汚染者がいないことが確定された晩、その幸運を祝してささやかな宴を催すことにした。とはいえ、イートフェチではない僕は水の入ったグラスを片手に談笑し、一見無益な会話の中から普段関わりのない他星系人の生態や文化レベルの情報を探ることくらいにしか楽しみを見出すことができずにいたわけだけれど、今回の旅中で人の食事風景を見慣れ始めていた僕もその男の皿が視界に入ってきた時には流石にギョッとした。
「君……まさか一人でそれを全部食べるつもりなの?」
僕に声を掛けられて顔を上げたその人物は、ぽかんと間の抜けた顔でこちらを見返した。彼の前には色とりどりの食べ物が山ほど盛られたプレートが二つ。そして、彼の右手にはまさに今口内に運び込まれようとしていたのであろう、表面に突起のある桃色のなにかが乗ったスプーンが握られていた。
「は、はい。あ、すみません、僕ひとりで取り過ぎ、でしょうか……? あの、でも、一応どの料理もまだあちらに残っていたと思うので、もし、貴方も食べたいというなら取りに……」
「あぁ、違う。僕は食べないよ。ただ、君の皿に乗っている量が他と比べて著しく過剰に見えたから声を掛けただけだ。いつもそんなに食べるのかい?」
僕が怒っているわけではないと分かり安心したのか、宴のはじめに自己紹介としてレムナンと名乗った男は、強張っていた表情筋を先ほどより少し緩めて、目の前の席に腰掛けた僕の質問に答えてみせた。
「いえ、流石に毎日、この量を食べるわけではありません、が……。一種の職業病、とでも言うんでしょうか。食べれるときにできるだけ食べておく、という習慣がついてしまっていて……」
「職業病?」
「あ、僕……最近まで、深宇宙で、働いていた、ので……」
それを聞いて、あぁ成程なとある程度納得がいった。雇用条件にもよるが、深宇宙の探査船で働く者の大半は数年おきに機材のメンテナンスを行うことと、周囲環境の記録、データ送信が主な仕事で、それ以外はコールドスリープをして時間が経つのを待つのだと聞く。イートフェチからすれば、数年に一度の楽しみである貴重な食事の機会にできるだけ多くカロリー摂取をしておきたいということだろう。理論的には意味のない無駄な行為ではあるが、心理作用から考えれば一定の理解はできる。
「ふぅん。君にとってそれだけ食事は大きな楽しみだと」
「えぇ、まぁ……食べることは嫌いではありません、から。それに、ここの料理は美味しくて……。今まで食べたことのないものばかりで、どうせなら全種類制覇しようとしたら……気付けばこんなことに」
どうしてその盛り方で崩れないのか不思議なほど絶妙なバランスでうずたかく食べ物が積み上げられた二つの皿を前に、レムナンはぎこちない笑みを浮かべた。仮に僕がその笑顔の採点者だったなら間違いなく赤点をくれてやっただろうが、彼が笑うと目の下に浮き出た隈が笑い皺で相殺されて、いくらか彼の纏う陰鬱な雰囲気が緩和されたように見えるのが印象的だった。
その後、なんとなしにその席に留まり続々と彼の口の中に消えていく皿の中身を眺めながら、深宇宙探査の内容や彼の生まれ故郷についての話を聞く流れで彼が抱えている事情とやらの一端に触れ、会話の中から彼のメカニックとしての技術レベルに早くも価値を見出していた僕が軍基地に行くのがまずいなら一緒にグリーゼで降りないかと誘いをかけたことも、それを受けた彼が驚きと戸惑いと少しの喜びを表情に滲ませたことも……今の僕にとっては既に古い記憶となりつつある。
——なぜ、そんな出会いの一場面を古い記憶の蓋を開けてまで僕が回想していたのかというと、その理由は簡単だ。初対面時のエピソードが強烈だったこともあり、僕の中ではイートフェチの代表として位置づけられているレムナンの様子が今日はどこかおかしい。
まず、いつもなら焼いた加工肉と卵やら、砂糖と一緒に煮詰めたペースト状の果物やらをたっぷりと乗せたカロリー過多の厚切りトーストを二枚は余裕で朝からぺろりと平らげるのに、今朝に限っては飲み物とヨーグルトだけでそそくさと朝食を済ませ仕事へと出かけて行ったこと。珍しいこともあるものだなと思いつつも、まだこの時点ではそこまで疑問を感じていなかった。問題は夜だ。帰宅後、夕食の時間になって、いつものようにフードプリンターで一人分の食事を生成したレムナンは、食卓に並べたそれを一口、口に運ぶやいなや、なんとも不快そうに顔を歪めたのだ。他の乗員が微妙と称していたD.Q.O.の料理でさえ、美味しい美味しいとひとりで賞賛しながら馬鹿みたいな量を胃に収めていた人間と同一人物とは思えない反応を目の当たりにして、僕はおやと首を傾げた。
「レムナン。君、どこか具合が悪いンじゃないの」
「え?」
「珍しく今日は全然食べていないようじゃないか。いつもは僕がどれだけ苦言を呈したところでひとつも聞き入れずに、夜食にまで手を出すような食い意地の張った君が、一体全体どうしたって言うンだい? 消化不良でも起こしているの? それとも味覚異常の兆候が出ているとか?」
彼の様子から推測した僕なりの見解を述べたところで、レムナンは焦るような素振りで僕の提示した可能性を否定した。
「ち、違います! 僕はべつに、どこも悪いところなんて……」
「誤魔化したって無駄だよ。身体スキャンすればどうせ不調なんてすぐにバレるんだから。無駄な抵抗はやめてさっさと白状したら? さぁ、僕と違って夜更かしや過食の傾向が見られる君は、その結果身体にどんな異常をきたしたのかな?」
それでもなかなか口を割ろうとせず黙りこくるばかりの相手に焦れた僕が、身体スキャンを指示するために擬知体の名を呼びかけたところで、ようやくレムナンは自身の症状を白状した。
「口の中が……痛くて……。あまり固形物を食べたい気分じゃないんです」
「口の中が痛い? ……あぁ、なんだ。ただの口内炎か」
ほんの半年前まで、反政府組織のリーダー・不死身の狂犬として恐れられていたほど痛みに耐性があるとされていた男が、口内炎ひとつで不快感を顔に出すとは。随分平和ボケしたものだ。
「まったく。この機会に君は食生活を見直した方がいい。量ばかり食べて、必要な栄養素を十分に摂れていないからそんな無様を晒すことになるんだよ。食の好みを見るに君は普段からビタミンが」
「言っておきますけど」
「あン?」
僕が親切にも今後のアドバイスを述べてやっているというのに、目の前の男は図々しくも僕の発言を遮り、口をはさんできた。
「今回のコレは、僕の不摂生ではなく、ラキオさんが原因ですから」
「はあ?」
いきなり矛先をこちらに向けられて、気分を害するなという方が難しい。僕は自身の過失をよりによってこの僕に責任転嫁してきた愚か者をこれからどうのしてやろうかと、胸の前で腕を組んだ。
「見てください」
そう言うとレムナンはパカリと口を開けて、こちらに向けて舌を突き出した。唇の間から現れた濃いピンク色の口内器官はその右先端部だけが赤く、痛々しげにポコリと腫れている。
「あ」
怪我と呼ぶには軽すぎるその小さな真新しい傷に僕は心当たりがあった。
「昨日、貴方の歯がつけた咬み傷です」
たしかに、彼の指摘は正しかった。
現在進めている研究で有用性の高い実験データを確認できた昨夜の僕は自覚する程度に機嫌が良く、僕の気分に釣られるようにしてレムナンもいつになく積極的になっていた。
同じベッドで横になって、間接照明のスイッチを落とそうとした僕の手を掴んで「キスをしてもいいですか」と問うてきた彼の申し出に僕はいいよと許可を与えた。半年前、役目を終えた反政府組織の解体と時を同じくして、恋人という関係に進むことを選択した僕らの間で幾度となく交わされてきたやりとりだ。意味があるとも思えない触れ合いや、パーソナルスペースを侵略する他人の温度がそう悪いものでもないなと、ようやく僕が自分の認識をアップデートしはじめた頃だった。
真実かどうかは怪しいものだが、レムナン曰く口づけの間に他のことを考えるのはマナー違反にあたるらしい。おまけに目を開けて相手の様子を観察するのも駄目だとはじめの頃に封じられてしまった。考えることも見ることも禁じられているとなれば、僕にできることは限られている。せいぜいレムナンが何度唇を重ねるのかを予想し、心の中で回数をカウントするくらいのものだ。昨晩の僕は七回と予想を立てた。これは普段よりもいくらか大きい数字だ。そして、僕の予想は概ね当たっていた。ひとつの例外を除いて。
一、二、三……と声には出さずに勘定していた数が六になったタイミングでレムナンの顔が僕の前から離れていく気配がした。あぁ、あと一回足りなかったなという思いでわずかに持ち上げた目蓋の隙間から薄っすらと見えたレムナンの表情を伺うと、顔全体にまだ満足していないと書かれていた。
(なんだ。やっぱり僕の予想は正しかったんじゃあないか)
僕は数字を合わせるために、ふたりの間にできた距離をもう一度詰めて、自身の顔を彼の口元のすぐ傍まで持っていった。驚きの色を浮かべた紫の瞳と数分ぶりに目が合った。その瞬間、もう一度しなくてもいいのかと相手を挑発するように、僕は目だけで笑ってみせた。
「……君も人が悪い。僕はあの時君に怪我の有無を確かめたよね? それに君は問題ないと答えた。なのに日付が変わった今になって蒸し返すのかい。まさか、あの時は痩せ我慢でもしてたって言うの?」
僕の予想は当たった。レムナンが昨夜僕に口付けた回数はたしかに七回だ。ただ、その最後の一回の内容が常とは違うものだったので、僕は、なんというか……対応を間違えてしまったのだ。
七回目。一度は離れた口同士の距離が再びゼロになった後、僅かにあいていた唇の隙間から口内へと入り込んできた何かに舌の表面と上顎の柔いところを撫でられて、僕は内心動揺していた。ワケが分からないうちに今度は舌の裏側へと潜り込まれ、更には巻きつかれるようにして自分の舌が外へと吸い出されるような感覚を受け、僕は驚いた拍子に思わずその何かに強く嚙みついた。その時目の前から聞こえてきた小さな呻き声と歯の間に感じた弾力から、僕はその侵入者の正体が他ならぬレムナンの身体の一部であることを理解したのだった。
「あの時、問題ないと言ったのは嘘ではありません」
「いいや嘘だ。実際、食事に支障が出ているじゃないか」
「まぁ、全く気にならないと言えば、それは……嘘になりますけど」
それ見たことか。
「僕を気遣うつもりだったのか、君自身が見栄を張りたかったのか、君が嘘を吐いた理由は知らないけどね、そんな小さな傷ひとつに振り回されて食事すら疎かになるようじゃあ本末転倒なンじゃない? 本件に関しては加害者である僕が責任を持って治してあげるから、さっさと医療キットを持ってきなよ」
出血を伴わない小さな外傷程度なら、簡易治療器での即時治療で十分だ。あんな口内炎、五分も経たぬうちにひとつの痕跡も残さず綺麗に消え失せるだろう。だというのに、目の前の患者は一向にその場を動こうとはしなかった。
「まだ僕になにか物申したいことでもあるワケ?」
「あの……蒸し返しついでに聞きたいんですけど」
「なに」
「ラキオさんは……やっぱり、ああいうことをされるのは嫌……ですか」
初めて言葉を交わしたあの日と同じように、僕は彼の食事を挟んで向かいの席に座っている。かつての記憶と違うのは、その料理がすっかり冷めきっていることと、元来健啖家であるはずの彼の食が先程からまったく進んでいないことだった。カトラリーを手放して空いた両手を机の上で組み、その親指を落ち着かない様子で交差させているレムナンの様子を見て、僕は嘆息した。なにも伝わっていないことにひどくがっかりした気持ちだった。
「……今更、それを僕に問うのか君は」
「だって、」
「君には学習能力というものが備わっていないのかい? 僕が今まで君にいいよと答えた回数を数えたことはある? そして、その意図を考えたことは?」
「え」
「僕はね、同じ問答を繰り返すことが嫌いだよ。結果が変わらないと分かり切っている答えを何度もなぞるのは時間の無駄だからね」
「はあ……」
「だけど、君はそんな僕に何度も同じ問いかけをしてきたよね。そして、僕は毎回律儀に返事を返してきた。あの問答には君なりの意味があって、君が過去の出来事を乗り越えるために必要なプロセスだと分かっていたからこそ、僕はまどろっこしい例のやりとりに毎回応じてきたンだ」
「あの、」
「なのにここに来て『嫌ですか』? 君の質問はまた振り出しに戻ったというわけだ。僕はこの半年間のやりとりがやはり全て無意味で時間の無駄だったんじゃあないかと自身の判断を後悔し始めているよ」
僕の言葉をほとんど黙ったまま聞いていたレムナンは、最後に出てきた後悔という二文字を聞いて顔を青くした。
「で、でも、嫌だったから、咬むことで抵抗したんじゃないんですか」
「嫌だったなンて僕は一言も言ってない。確たる証拠も無しにただの思い込みで他者の意見を断定するのはやめろと、僕は君に何度も忠告したはずだよ」
「えぇ? あの、じゃあ、えぇと……もしかして、怖かった……んですか?」
そんなわけないだろうと即座に言い返そうとした僕の口が、昨日与えられた未知の触感を思い出すことで僅かな間動きを止めた。
「……違うよ」
「嘘ですね」
「……」
気付けば、五分前までと立場が入れ替わっている。何故僕の方がレムナンに問い詰められているのだろう。これ以上黙秘を続けたところで、粘着質なことに定評のあるこの人間がこのまま僕を見逃すとも思えない。いち早くこの話題を終わらせるには正直に理由を話すしか道はなさそうだ。せめてもの憂さ晴らしにたっぷり長い溜め息を相手の耳へと届けた後、僕は観念して本音を明かした。
「……食べられるかと思ったんだよ」
「……はい?」
「だから、食べられると思って驚いたんだ」
場に落ちた沈黙が相手の困惑を否応なしに伝えてくる。しばしの間、僕の回答を自分の中に落とし込んでいたらしいレムナンは、その処理を終えたのかおずおずとこちらに視線を合わせて、疑問を口にした。
「それは、その、比喩……とかではなく、食事と同じ、食べる、という意味で……?」
「そうだよ。捕食されるのかと思ったんだ! 仕方ないだろう、僕はあの行為自体もその意味も、今日調べるまで何も知らなかったんだから」
「調べたんですか……」
つい先程まで僕の発言一つで顔を青くして焦った様子を見せていたはずのレムナンの顔色は見る見るうちに回復して、今や薄らと口元に笑みを浮かべてすらいるのだから現金なものだ。
「あの、えぇと、すみません。怖が……驚かせてしまったんですね」
「べつに君が謝るようなことじゃない。交際を受け入れた際、僕は身体的接触を含めて君との恋人関係を了承したンだからね。今回のことは僕の勉強不足が招いた不慮の事故だ。分かったならさっさと医療キットを持ってきて」
「あの、ありがとうございます。でも、治療はいいです。このまま自然治癒を待ちます」
せっかく問題解決の最短ルートを僕が示してやっているというのに、また訳の分からない主張を始めた恋人を相手に僕は再び眉間に皺を寄せる羽目になった。
「どうして?」
「言わなきゃ駄目ですか」
「君のことだから理由を聞いてもきっと僕には一ミリも理解できないような思考なンだろうけど、分からないまま放置しておくのはもっと気持ちが悪い。さっさと教えてよ」
「たぶん聞いて気持ちのいい答えじゃないですよ」
「それこそ今更だよ。生憎と僕の機嫌はさっきからずっと下降しっぱなしだからね」
カツカツと人差し指の爪でテーブルを鳴らして、僕が回答を急かすと、レムナンはなんとも言えぬ表情でその理由とやらを打ち明けた。
「ラキオさんからしたらこれはただの事故で、早くその痕跡ごと消してしまいたい出来事なのかもしれませんけど……。僕は……僕は、貴方に関するすべてのことを何ひとつ忘れたくないし、この世から消したくもないんです」
大真面目な顔をして、そんな、恋愛にのぼせあがった馬鹿みたいな発言をする恋人を見て、僕は呆気にとられるほかなかった。
「……君は時々、ものすごく気持ち悪いことを平気で言うよね」
「そうでしょうか」
「そうだよ。その手の発言はできるだけ控えてもらいたいものだけど」
「ラキオさんから言わせておいてそれは酷いですよ。それにこの手の発言は貴方にしか言いませんから問題ないです」
「だから、それをやめろって言ってるのに。あぁもう、痛くて困るのは君なンだからね。それでもいいって言うなら勝手にすれば」
「はい、勝手にします」
そう言って妙に機嫌がよさそうな笑みを浮かべながら、食事を再開したレムナンはもう口内に食べ物を含んでも先ほどのように顔を顰めることはなかった。病は気からなんて大昔の言い伝えがあるがまさか怪我にも適用されることがあるのだろうか、なんて馬鹿馬鹿しい考えが脳裏をよぎった。
「ラキオさんがわざわざ勉強してくれたなら、今度復習しなきゃいけませんね」
「……また咬みつかれても知らないよ」
「今度は驚かせないように気を付けますから」
だらしなく眦を下げてこちらを見遣るレムナンの視線は、すべての角が溶け切った角砂糖のようにまろやかで甘い。さっきの発言ひとつとっても、僕にはどうして彼がここまで自分に傾倒してしまっているのか、いまいち理解が及ばない。まぁ、でも、向かいの席から彼の食事風景を眺める時間は僕にとってもそう悪くないものだということは知っているから、今度は食べられそうになっても咬みつかないように気を付けてみようか。
そうして、僕はレムナンから教わったキスの作法の最終行に相手の舌を咬まないという掟を新たに追加したのだった。