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    abicocco

    @abicocco

    『過去のを晒す』カテゴリにあるものはpixivにまとめを投稿済

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    abicocco

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    ※ノーマルEND軸革命後交際中のレムラキ

    色っぽい描写はほぼ無いですが、一応行為中のやりとりではあるのでご注意ください。

    #レムラキ
    lemniscate

    萌芽「……ン。ッレムナン! それ、やめてっ」

     突如自分の下から上がった制止の声にレムナンは慌てて声の主から自分の身を離した。今、己の下に組み敷いている人物と夜の行為に及ぶようになってからもう半年ほど経つが、最中にストップをかけられたのは今までにないことだった。はじめて指と舌とで丁寧に穴をほぐされて、レムナンのものを受け入れたときでさえ、何度も大丈夫かと確認する相手に「問題ないから早く進めて」と気丈に振舞っていたあのラキオが「やめて」と言ったのだ。特に心当たりはないが、自分は一体どれほどの失態をおかしてしまったのだろう、と内心冷や汗が止まらないレムナンだったが、慌てて様子を確認した彼に待ったをかけた人物の顔には怒りや不快感といったような感情は見つけられなかった。どちらかというと困惑に近い表情を貼り付けて、シーツに影を作るレムナンの顔を見つめている。


    「すみません。どこか痛かったですか?」
    「いや、痛くはないンだけどね……。前々から思っていたンだけど、この行為になにか意味はあるの?」
    「え」

     今更それを聞くのかと、今度はレムナンが困惑の色を浮かべる番だった。ラキオの属する汎という第三の性をもつ人達の大半は、性愛を伴う恋愛感情を有していないことが一般的であることはレムナンも当然知っている。だからこそ、パートナーシップ登録を行う際も、初めての性行為に及ぶ際も、レムナンは何度もラキオの意思を確認した。いくら、しつこいと相手に顔を歪ませられようとレムナンがそれをやめなかったのは、ひとえに彼の過去に起因する恐怖心によるものだ。相手を傷つけ甚振り、一方的に愛でることこそが愛なのだ、と、多感な少年期に植え付けられたトラウマは今は乗り越えたものとはいえ、完全に彼の中から消え去ったわけではない。

    「あの、僕とするのが嫌に、なりましたか……。今夜はもうやめておきましょうか」
    「ん? あぁ、違うよ。性交自体を拒否しているわけじゃない。情を交わすのに互いの性器を結合させる意味は流石に僕も理解している。そうじゃなくて、そこに至るまでの君の行動だよ」
    「そこに至るまで……?」

     突然恋人から与えられた謎解きにレムナンは首を傾げつつも、己の行動を振り返ってみた。

    「……つまり、僕の前戯が、気に食わないということですか?」
    「まぁ……うん。気に食わない、というよりは疑問に感じている」
    「はい?」

     察しの悪い相手に焦れたのか、ラキオは眉を吊り上げて続きを主張した。

    「最初の頃は僕の緊張を解くという意味でも、挿入をスムーズに行うために他の部位への愛撫を行うことは必要だったんだろうと分かるよ。だけど、今はそうじゃないだろう? 僕の記憶では君と行為に及んだ回数はもう両指の数を超えている。未知の行為に対する僕の抵抗感はとっくに払拭されているし、身体の方だってもう随分と君のに馴染んだ。なのにどうして、今になっても君はやたらと……僕の身体をあちこち弄りまわすンだ」

     ようやくラキオの疑問の最終着地点を確認できたレムナンは、あぁなんだそんなことかと、本気で悩んでいるのかもしれない相手には失礼かもしれないが、心の内で安堵の息を吐いた。どうやら嫌われたわけではないらしい。

    「そんなの……ただ、僕がしたくてしているだけですよ。今すぐは難しいかもしれないけど……ラキオさんにも少しでも気持ちいいと思ってもらいたいじゃないですか」

     レムナンの言葉を聞いたラキオは、予想もしていなかったとばかりに普段公の場では決して見せないような、きょとんとした無防備な顔を彼の前に晒した。化粧ののっていないつるりとした素顔はそうした表情を浮かべると、今彼らが興じている行為と反してより幼い印象を受ける。


    「……君がしたくてしているなら、まぁいいか。中断して悪かったね。再開してくれて構わないよ」
    「えぇ……? 本当に止めた理由はそれだけですか? なにか、されて嫌なことがあったんじゃあ……」
    「まったく、君は本当に杞憂が得意だね。べつになにも嫌じゃないよ。……ただ、今までと少し、与えられた刺激に対する感じ方が違うような気がしたってだけ」
    「それって……」


     道のりは長いと思われていた自分の希望が叶う未来は意外と近いのかもしれない。そんな期待に胸を膨らませながら、レムナンはふたたびラキオの胸元へと顔を沈ませた。
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    PAST※ノーマルEND軸革命前のレムラキ

    友好関係が築かれつつあるふたり
    大停電の夜のこと 元は何の変哲もない夜だった。第四と五の区画を繋ぐ船間連結部の定期メンテナンスを概ね予定時刻通りに終わらせたレムナンは、使い込んでほどよくくたびれてきた革製の仕事鞄を肩に掛け、帰路についた。帰る先はカナン579メインドーム、シングル用深宇宙探査船に続き、彼にとって第三の家となって久しいグリーゼの管理下にある居住船の一角だ。レムナンは玄関からまっすぐ続くリビングのドアをくぐると同時に、既に学校から帰ってきているであろう同居人に向かって「ただいま」と帰宅の合図を出した。しかしながら、その人物の定位置であるソファの上に彼の期待していた姿は見当たらなかった。

    「あれ? ……あぁ、シャワー室か」

     オーバル型のローテーブルの上に置き去りにされたアームカバーを見て、レムナンはラキオの居場所にすぐに思い当たった。いつもより随分早いシャワータイムだななどと考えながら、少し目を細めて壁際の時計で今の時刻を確認する。たしか今日は校内で代替未来エネルギーについてのディベート大会があると昨晩話していたから、きっと侃侃諤諤の議論で蓄積した疲労や雑念を湯で洗い流しているのだろう。
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    abicocco

    PAST※ノーマルEND軸革命前のレムラキ

    レムがグリーゼに来てからラキが革命を起こすまでに二人の間で発生したやりとりについての想像
    ブロカント「レムナン。作業ペースが通常時の八十パーセントまで落ちています。休息を取りますか?」

     今日は各船を繋ぐ自動走行路オートチューブの定期メンテナンスで地下へと潜る日だった。僕がこの国にやってきてから、そして擬知体を含む機械全般の整備士として働き始めてから、もう何度もこなしてきた仕事だ。それにも関わらず、いや、慣れている作業だからこそか、いつも僕の業務に同行してくれているサポート擬知体から集中力の欠如を指摘されてしまった。

    「いえ……。いや、そう、ですね。昼休憩にしましょうか」

     作業が丁度キリのいいところだったこともあり、彼女の提案に甘えることにした僕は工具箱を脇に避けて作業用のグローブを外すと、持ち込んだランチボックスからマッケンチーズをフォークでつついた。鮮温キープ機能のある優秀な容器のおかげで、チーズと胡椒をまとったマカロニとベーコンはフードプリンターから出てきたばかりの今朝と変わりない姿で湯気を立ちのぼらせている。食欲を刺激する濃厚なチーズのジャンクな香りは僕の好物に違いないのに、食事の手はなかなか進まなかった。
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    PAST※ノーマルEND軸革命中のレムラキ
    ※2023/12/14公開の🎃×ゲーム開発スタッフさんの対談動画のネタを含みます。
    飛んでかないように 国内トップのエスカレーター式教育機関の高等部。その中でも一握りの成績優秀者にだけ与えられた貴重な社会見学の機会。
     そういった名目でラキオとそのほか十数名の生徒がある日教師に連れてこられたのは、テラフォーミング計画で使用されているロケットの発射場だった。管理首輪で抵抗の意思すら奪われた、グリーゼから不要の烙印を押された国民たちがタラップを上り順に乗り込んでいくところを、生徒たちは管理塔の覗き窓から黙って見送る。彼らが着せられた何の装飾もない揃いの白い簡素な服がまるで死に装束のようで不気味だなと、過去文献で知った他星の葬儀の様子を思い出しながら、ラキオもその現実味に欠けた光景をどこか他人事のように眺めていた。今回打ち上げ対象として選定された人間の多くは肉塊市民だが、それ以外の階級の者も少数ながら混じっているらしい。国産の最新ロケット技術の素晴らしさや、各地で進行中のパラテラフォーミング計画の実現性について先程から熱心に概念伝達装置を通じて語りかけてくる職員の解説を適当に聞き流している中で、ラキオは小さく「あ」と声をあげた。覗き窓の向こう、だんだんと短くなっていくロケットまで伸びる列の後方部に見慣れた人物を見つけたからだ。
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    abicocco

    PAST※ノーマルEND軸革命後交際中のレムラキ
    レムが初めて酒で失敗した翌朝の話。
    それみたことか(だから、僕は止めたじゃないか)

     ラキオより二十分ほど遅れて目を覚ました隣の男は、呆けた顔でまだ眠気の抜けきらないとろりとした瞬きを何度か繰り返したのち、のそりと身体を起こした。覚醒したての彼が緩慢な動きで自分と、それからラキオの格好を見て、みるみるうちに顔を青く染めていく様を目にして……ラキオは小さく溜息を吐いた。

    「ら、ラキオさ……。あの、その、ぼ、僕、は」
    「……おはようレムナン。元気そうだね。見たところ二日酔いの症状も出ていないようでなによりだよ」

     
     ラキオの言う通り、レムナンの顔や体臭には昨晩あれだけ摂取したアルコールの気配は残されていなかった。彼の肝臓は働き者らしい。
     昨日の晩、珍しく……そう、本当に珍しく。レムナンとラキオは家で晩酌を楽しんだ。というのも先日外星系への調査のついでにグリーゼに立ち寄ったという沙明が置き土産として、彼が現在身を置いているというナダ産の飲食物をふたりの家にいくらか残していったのだ。グリーゼと違って未だ自然光で作物栽培が行われ、一次産業が国の経済をまわすのに一役買っていると聞くナダで作られたワインは、会食や社交場で提供されるような合成品とは違い、強く芳醇な葡萄の香りがした。
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