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    @94_ROM_12
    稲妻の目金君関連のみ

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    大人目君が買い出しに行く話。ゲーム時空。山も落ちもありません。

    ##CP無し
    #目金欠流

    夏の夜更け「あー、暑い。夜中だというのに熱すぎやしませんかね……」

    眩しいまでの月明かりが静かな街並みを照らす、とある夏の深夜にて。じっとりとした空気が肌を包み全身からジワジワと汗が滲み出る不快な気候の中、目金は一心不乱にコンビニへと歩みを進めていた。
    幾度目のゲーム制作の追い込み期間に突入したメガネハッカーズは、これまた何度目か分からない泊まり込みでの作業に取り組んでいた。泊まり込みを始め数日が経ち宅配飯にも飽きが来て、最早お馴染みとなったコンビニへの買い出し担当を決めるジャンケンが行われた。そして、当然の決まり事のようにジャンケンで大敗した目金は熱帯夜の中買い出しに出ることとなったのである。

    脇目も振らずコンビニへと歩みを進め、店の入り口に着く頃にはミストシャワーでも浴びたかのように全身が汗でじっとりと濡れていた。
    ポケットからハンカチを取り出し頬を流れる汗を拭き取って店に入ると、扉が開かれると同時にその身を包んだ冷気に目金はほう、と息をつく。急いで出ずとも汗が引くまでの間位店内に居座っても良いだろうと目金は更なる涼しさを求め奥にある弁当売り場へと向かう。

    (さて、二人からは何を買ってくる様に頼まれていましたっけね。……って、うわ。何ですかこれ)

    アジトを出る前に二人から渡された手書きのメモを改めて確かめると、そこには十は超える注文が書き記されていた。カップ麺の様な軽いものから500mlサイズと指定されたペットボトル飲料もそれぞれから頼まれているようで、この先過酷な帰路が待ち構えていると分かり目金はハア、と溜息をつく。

    (芸夢君は相変わらずガッツリ系ですね。漫画君は……サラダ?舐めているんですか?)

    メモを見ながらカゴの中にそれぞれから指定された品を放り込んでいく。頼まれた品を入れるついでに自分が食べたいと思った品も入れ、買い出し担当特権だと自分の分だけのアイスを手に取りレジへと向かう。カゴいっぱいになった商品を店で一番大きいサイズの袋に詰めてもらい、目金はコンビニを後にした。

    (あー……。重い、暑い……)

    大きく膨れ上がった袋を肩に引っ掛けて、目金はもたもたと歩みを進める。

    (……あ、そうだ。二人にとやかく言われても嫌ですし道中で食べ切ってしまいましょうか)

    数十円の棒アイス一つで文句を言われると思ってはいないが、万が一にもこれが原因で再度買い出しを頼まれたりしたら溜まったもんじゃないと、目金はアイスを包装する袋を破き口に咥える。荒く削られた氷と爽やかなソーダの香りがほんの一時だけ目金をじめじめとした熱さから解放してくれた。夏はこの手の氷菓子が一番美味しく感じると自身のチョイスに満足しつつ、何と無しに行く道を明るく照らす月へと目を向ける。
    太陽のように煌々と輝き続ける夏の月光はそれを眺めているだけでより暑さが増してくるようで、目金は再び大きな溜め息をつき無心で足を動かしアイスを口に運ぶ。じっとしているだけで汗が止めどなく流れて行く真夏の夜では、ゆっくりと空を眺める気にもならない。早く冷房をガンガンに効かせたアジトへと戻りたいと、一口大にまで減っていたアイスを一気に口の中に入れる。

    「……あ、あたりだ」

    すると、食べ切ったアイスの棒に『あたり』の文字が刻印されているのに気付いた。暗がりの中、空を眺めながら食べ進めていたおかげで食べ切る瞬間まで気付かなかったのかと、目金は久方ぶりに見る当たり棒を月明かりに照らし立ち止まってしげしげと眺める。

    「これってコンビニで買っても交換してもらえたんでしたっけ」

    レシートがあれば交換出来るのだろうかと、どこかで聞いたことがあるような情報を頭の中にある棚を開けて探ってみるが、それらしき情報は思い出せなかった為、まあいいかとアイスを包装していた袋に棒を入れ、再び歩き始める。
    アイスを買ったことは二人には内緒にするつもりだったが、当たり棒を引いてしまったなら話は別だ。子供心をくすぐられる当たりの文字を二人に見せびらかしてやろう。彼らもきっと、コンビニで辺りを引き当てた、という顛末に関心を持ってくれるだろうし、僕だけが当たり棒を手にしているという状況を子供のように悔しがってくれるだろうから。
    目金はクスリと笑い、足取り軽やかに、仲間たちが待つアジトへと帰るのであった。
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    DONE隠れオタクな弟とオープンオタクな兄の話。
    表現の都合上、少し古いオタク観が出てきますが『00後半〜10年代前半のオタク観にVカルチャーが現れた世界』だと思って読み進めて下さい。
    隠れオタクとオープンオタクオタクとは。
    愛好者を指す呼称であり、特定の分野に過度に熱中し詳しい知識を持っている者を指すサブカルチャーの分野で用いられてきた言葉である。昨今では寛容に受け入れられる事の多いオタクではあるが、多感な学生達の中にはオタク趣味をバカにする者も当然存在する。そして、そんな学生達に馬鹿にされることを恐れ己のオタク趣味をひた隠す者も当然存在するのだ。かく言う雷門中に通う目金一斗も漏れなくその『馬鹿にされることを恐れているオタク』であり、所謂隠れオタクという存在であった。

    「なあ、第七人格ってソシャゲあるじゃん。あれ映画化するらしいぜ」
    「え、そうなんですか?」
    「あれストーリーとかあったっけ」

    さして興味のない流行りのソシャゲや芸能人をきっかけにバズった音楽、新発売のスニーカーの情報にまでアンテナを伸ばしそれらの話でクラスメイト達と盛り上がる。そんな涙ぐましい努力を重ね、一斗は日々学生生活を謳歌していた。
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