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    @94_ROM_12
    稲妻の目金君関連のみ

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    学生萌目の導入。この時点の彼らはただの友人です。
    起承転結の「起」ですらありません。頑張ります

    ##学生萌目

    始まり稲妻町商店街の通りにあるメイド喫茶の地下深く。選ばれし者だけが立ち入ることが許されたその空間には秋葉名戸サッカー部の秘密基地が存在した。サッカー部という看板こそ掲げられているもののそこは部員達が各々の趣味を楽しむための空間である。ある者はゲームの攻略にのめり込み、ある者は自作のジオラマの完成度を上げ、そしてある者は自作のコスプレ衣装を手縫いする等、皆思い思いに秘密基地での時間を満喫していた。

    「え。……目金君、もう一度言って?」
    「ですから、進学先は秋葉名戸学園にするつもりですので、来年の春から宜しくお願いしますねって話です」

    そんな秘密基地の一角で、他の部員と同じように趣味でイラストを描いていた漫画萌は、いつからかそこにいるのが当たり前になった目金欠流の言葉にペンを走らせる手を止め、顔を上げる。
    目金欠流。彼はFF地区予選準決勝にて戦った雷門中サッカー部の一員であり、秋葉名戸サッカー部の企みをオタクとしての在り方ひとつで打ち破り、萌を含む部員達の目を覚まさせてくれた恩人であり唯一無二の友である。目金君との交流は試合が終わった今も続いており、休日を使ってオタク街へと繰り出したり、共に秘密基地で屯したりと短い縁ながらも長年の付き合いがあるかのような濃密な時間を過ごしている。その目金君の口から飛び出したまさかの言葉に萌は暫し呆然とした後、自身が聞いた言葉が聞き間違いでないか震える声で確認する。

    「……それ、本当?」
    「ええ、本当です」
    「本当に本当?」
    「ですから、そのつもりですってば!」
    「……〜〜〜!やったー!ねえ皆んな、聞いた聞いた!?目金君が秋葉名戸学園に来てくれるって!」

    この喜ばしい話が事実であると理解すると同時に萌は秘密基地にいる全員の耳に入る様大きな声でその情報を共有する。突然大きな声を上げた萌に驚いた様子を見せた部員達であったが「おいマジかよ目金!」「歓迎するよ目金君」と次々に皆それぞれの言葉で秋葉名戸を進学先に選んだ目金君を祝福し歓迎する。

    「漫画萌先生。喜んで下さるのは僕も嬉しいですか、少しはしゃぎすぎですよ」
    「これを喜ばずにはいられないよ!君が僕と同じ学校に通ってくれるなんて、こんな嬉しくて楽しみなことはないよ!」

    目金君は少し呆れた様子で萌を窘めるが、そんな言葉などで高まる気持ちを抑えきれず萌は足をパタパタと揺らし、喜びを全身で表現する。

    「……一応ですが、僕が落ちることは考慮していないんですね」
    「え?だって、落ちないだろ君。これだけ成績優秀なら今受験したとしても間違いなく受かるよ」

    目金君は類まれな記憶力を有しており、少なくとも萌の知る限りでは暗記の分野で彼の右に出る者はいない。それに加え目金君はPC分野に強いこともあり工学系を始めとした理数分野も得意としている。そんな彼が幾ら進学校の試験とはいえ中学生レベルの問題で躓くわけが無い。

    「……ふふ、そうですね。ええ、その通り。僕の実力であればまず合格する事でしょう!」

    萌の言葉に少し呆けた顔を見せた目金君であったが、すぐにいつもの調子を取り戻し高らかに声を上げる。

    「ふふふ、けど本当に楽しみだなあ。目金君うちに来るんだ。そっかあ〜」
    「そんなに嬉しいものですか」
    「勿論!……え、目金君は楽しみじゃないの?」

    喜び浮かれているのは自分だけなのかと、萌は悲しい気持ちを隠すことなく目金君にそう尋ねる。

    「そんな事はないですけど。今だってこうして放課後や休みの日に会ってるじゃないですか」
    「それはそうだけど。……同じイベントは楽しめないじゃないか」

    萌の言葉に目金君は目をぱちぱちと瞬かせ「同じイベント」と呟く。

    「うん。文化祭や体育祭みたいな学校行事は今までお互いの話を聞いて学校毎の違いを楽しむって感じだっただろう?それが来年からは2人一緒に同じ行事に参加する様になるんだ。そんなの、今まで以上に楽しいに決まってるじゃないか」

    そう語り萌はにこりと微笑みかける。目金君と出会ってからの数か月、何度『ここに目金君が居たらな』と思った事か。幾ら放課後や休みの日に顔を合わせているとはいえ違う学校に通っている以上一緒にいる時間は限られてくる。今まではそれも仕方がない事だと諦めていたが来年からその問題がなくなるというのだ。これほどまでに嬉しいことは無い。

    「……成る程。確かに、貴方の言う通りですね。僕も楽しみになってきました」
    「ね。楽しみだね、目金君」

    顔を見合わせて二人はくすくすと笑いあう。まだ中学三年になって間もない時期の話であったが、萌は目金君と共に秋葉名戸学園に通うその日が待ち遠しくて仕方がなかった。







    そして、そんな話をして数ヶ月経った翌年の春。

    「あ、目金君。こっちこっち」

    目金君はあの日の宣言通り入試試験を余裕で突破し、無事秋葉名戸学園へと通うこととなった。幸いというべきか秋葉名戸学園は始業式と入学式が同日に行われる為、通学路の確認も兼ねて、駅で待ち合わせてから一緒に学校へと向かう事にした。そんな目金君との約束が楽しみで萌は約束の20分前に待ち合わせ場所に辿り着いたのだが、目金君も予定の10分前に集合場所へと姿を現した。目金君は辺りをきょろきょろと見渡した後こちらの姿を捉えたのかパタパタとこちらへと駆け寄ってくる。少し長めの袖のブレザーを身にまとい裾が折りたたまれたスラックスを着用する彼はいかにも新入生といった出で立ちで初々しい。

    「おはようございます、漫画萌先生。お待たせしましたかね」
    「おはよう目金君。ううん、僕も今さっき来た所だから。……って、呼び方。そう呼ぶのはもうやめてって言っただろう?今日から僕ら同級生になるんだから」
    「あー……すみません漫画君。つい癖で」

    目金君は申し訳なさそうに頬を掻きアハハと笑う。昨年の夏頃に『同級生になるのだから先生呼びは禁止』と約束したのだが、スムーズに漫画君と呼んでくれるにはもう少し時間がかかりそうだ。

    「全くもう。……それじゃ、いこっか」
    「この道を真っ直ぐ進む、で良いんでしたっけ」
    「うん。この道を真っ直ぐ進んで、突き当たり左にある桜並木の先にある信号を渡ったら秋葉名戸学園に着くよ」

    目金君の問いかけを肯定し、萌は「こっちだよ」と率先して通学路を歩き辺りをきょろきょろと見渡しながら歩く目金君を先導する。

    「……なんだか、変な気分ですね。漫画君と同じ制服を着て秋葉名戸学園に向かうだなんて」
    「あはは、そのうち慣れるよ。これからはそれが当たり前になるんだからね」
    「それもそうですね。……漫画君。これから3年間、宜しくお願いします」
    「此方こそだよ。これから宜しくね、目金君」



    目金君と歩む3年間。一体どんな学生生活が待っているのだろうか。

    (きっとどんな事だって目金君と一緒なら楽しい思い出になるに違いない)

    そう確信めいた気持ちを抱きながら、萌は飽きるほどに潜った校舎の入り口を新鮮な気持ちで通り抜けた。
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    REHABILI「嘘はまことになりえるか」https://poipiku.com/4531595/9469370.htmlの萌目の2/22ネタです。22日から二日経ちましたが勿体無い精神で上げました
    猫の日「……えっと、つまり。漫画君は猫耳姿の僕を見たいのですか?」
    「今日は2月22日だろう?猫の日に因んだイベント事をこう言う形で楽しむのも、恋人がいるものならではの体験だと思うよ」

    2/22。2という数字を猫の鳴き声と準えて猫の日と呼ばれているこの日。そのイベントに乗じてインターネット上では猫をモチーフとしたキャラクターや猫耳姿のキャラクターが描かれたイラストが数多く投稿されている。そして、猫耳を付けた自撮り写真が数多く投稿され、接客系のサービス業に勤めている女性達が猫耳姿になるのもこの日ならではの光景だろう。
    古のオタクを自負する萌にとって、猫耳とは萌えの象徴であり、身に付けたものの可愛さを最大限までに引き出すチートアイテムである。そんな最強の装備である猫耳を恋人にも身につけて欲しいと考えるのは自然な流れの筈だ。けれど、あくまでそれは普通の恋人同士ならの話。萌と目金の間に結ばれたこの関係は、あくまで友として萌と恋人のごっこ遊びに興じる目金と、目金に恋慕する萌という酷く歪な物であった。
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