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    ruka

    @blaze23aka
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    ruka

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    パラレル設定の🔥❄️

    ファンタジーっぽいお話です。

    イベントにむけてポイピクの使い方を勉強中。
    同じ話はpixivにもあげます。

    #煉猗窩

    炎と雪の協奏曲───雪が舞う白き国。




    そこに住む猗窩座は王家の血筋でありながら、両親に捨てられた青年だった。
    正しくは、殺されるところを救い出されたと言うべきなのだが。


    双子が忌み嫌われるこの国を治める王家では、兄の狛治は次期王として育てられ、弟の猗窩座は殺されるはずだった。

    だが、当時王家の守護戦士だった素流慶蔵が子どもを守りたい王妃から預かり、騎士をやめ国境くにざかいで素流道場を開き、そこで息子として育てることにした。

    その後すぐに生まれた、慶蔵の実の娘である恋雪の兄として。


    狛治と猗窩座はよく似ていたが、黒髪に空のような青い瞳の狛治に対し、猗窩座は桃色の髪に金色の瞳と大きく異なっていた。
    王族である狛治の姿は市中のものには知られていないため、誰も猗窩座が彼の双子だと気がつくものはいなかった。


    猗窩座は慶蔵に稽古をつけてもらいながら、幼くして母親を亡くしたのも影響したのかあまり年の変わらぬ恋雪をとても大切にする優しく強い兄として育っていく。
    少々喧嘩っ早いのが玉に瑕だが、概ね素直に育った猗窩座に運命の転機が訪れたのは16歳になった頃だった。


    友達と城下街まで遊びに行った恋雪が、ある人と出逢ったことが発端だった。

    その人に会うために何度も街へいく恋雪は段々と元気がなくなっていく。
    それなのにじっとしてられないのか行くのをやめない。

    それが心配となった猗窩座と恋雪の間で小さな喧嘩が続いたある日、
    慶蔵も含めた3人でいた時に恋雪が震えながら言った。


    「猗窩座兄様にそっくりな方と出会ったんです」


    その言葉に瞬間表情を無くしたのは慶蔵だった。
    猗窩座はそれに気づくことなく恋雪の話を聞き続けている。

    「その方はハクと名乗られました。
    きっかけはハクさまに暴漢から助けていだいたことです。……また逢いたいと言われました。
    兄様と似ているのに違うその人に、私は……恋をしてしまいました」


    涙を零しながら恋雪がそう告白する。

    兄とは違う青色の瞳に見つめられると胸が高鳴り、兄とは違う優しさに温かな気持ちとなった。


    「………私と兄様が血の繋がりのないことはわかっていました」
    「恋雪…」

    恋雪の言葉に猗窩座はただ妹の名前を呼ぶことしかできなかった。

    「きっと深い事情があるのだとわかっているのに、このままハクさまと会うことがどれだけ兄様に危険が及ぶことなのか!
    わかって、いるのに……私は、あの方に逢いたくて……行く事をめられなかった」

    そのままシクシクと両手を顔に当てて泣き続ける恋雪の頭を優しく撫でると猗窩座はずっと黙ったままの慶蔵に振り返った。


    「父さん……、いや、師範」
    「猗窩座…」
    「俺もわかっていました。
     俺は二人にも、母さんにも似てないし、きっと拾ってもらった子どもなのだろうって。
     事情を教えてください。俺は恋雪に幸せになってほしい。血の繋がりが無かろうと恋雪は俺の妹だから」


    慶蔵はいつもの大らかな優しい顔ではなく
    辛そうな顔をして、猗窩座と恋雪に話を始めた。


    ハクは間違いなく、この国の次期王となる狛治であり
    猗窩座の双子の兄だと。

    王家では、双子は忌み嫌われておりどちらかのみを生かすこととなった。
    選ばれたのは狛治、そして選ばれなかった猗窩座を二人の母である王妃が慶蔵に託した。

    「王妃さまはお前の事を深く愛していらっしゃったんだ、猗窩座」

    数年前に亡くなられた王妃と、慶蔵だけが知る秘密。
    慶蔵は部屋の奥にある机から何かを取り出してきた。それは紫水晶と水晶が交互になっているブレスレットで、そっと猗窩座に手渡した。

    「成人になったら渡そうと思っていたんだ。
     王妃さま、お前のお母さんからだ」

    猗窩座は両手でそれを受けとり、胸に抱き締めるようにする。そして涙を堪えようと目をキュッと閉じた。

    恋雪が猗窩座に寄り添うように体を寄せ、慶蔵は二人を包み込むように抱きしめる。


    「恋雪と猗窩座が俺の子どもだ、家族だ」



    血の繋がりなんてなくていい。
    今まで積み重ねてきた時間が、お互いを思いやる気持ちが自分たちなりの家族の形なのだと。

















    だが、それから数日後。

    ある雪が降り積もる日に猗窩座は恋雪たちの前から姿を消した。




     『今までありがとうございました。
      二人の幸せを祈っています。
                猗窩座』


    と書かれた置き手紙だけを残して。













    恋雪のためならこの命を無くしても構わない。

    自分の存在をこの国の誰かに知られてはならないと猗窩座は急ぎ国から離れることにした。
    手に形見のブレスレットと、慶蔵にもらった恋雪とお揃いのペンダントだけを持って猗窩座は最小限の荷物で旅に出た。


    あと少しで鍛錬用の山小屋に着く。

    だが、急に酷い吹雪となったため大きな木の下で動けなくなってしまった。
    正確には方向を見失いかけたので、それを見極めるためでもあったのだが……。




    ここでじっとしていたら、母さんと母上が迎えにきてくれるかな。




    甘い悪魔の誘惑が聞こえた気がした。
    瞼を閉じてその誘惑に身を委ねようとしたとき、それを突き破る大声が響いた。




    「こんなところにいては死んでしまうぞ、君!」




    吹雪の中でありながら、太陽のような目をした男が目の前に立っていた。



    「………俺は死んだほうがいいんだ」
    「何か事情がありそうだな……。
     君、名前は?」
    「……」
    「な、ま、え、は?」

    雪崩が起きるのではないかと錯覚する程の大声で問われて思わず

    「猗窩座」
    と答えてしまう。

    「猗窩座、ここで死ぬつもりならその命俺にくれないか?」
    「……は?」
    「俺は煉獄杏寿郎!
     諸国を漫遊しているしがない男だ」

    どこをどう見ても良いところの坊ちゃんにしか見えんぞ

    とその装備等を見やり思ったものの、死ねないのならばこの国からすこしでも離れるために利用してやるかと猗窩座は心を決めた。

    死んでもいいと思ったのだ、己の命をこの男にやっても惜しくはない。

    「俺の命、どうするつもりだ?」
    「うむ!君は体をしっかりと鍛えている。おそらくは何らかの武術を極めようとしていたのだろう?
     俺はあるものを探して旅をしているのだが、俺の仲間になってくれないか?」
    「お前の仲間?」
    「正直当てもないし、着の身着のままで進むだけの旅だ。危険ならいくつもあるだろうが良いことはあまりないかもしれない。
     だが、一人よりは二人の方が楽しそうだろう?」

    良いアイデアだとばかりにニッコリと笑う男の笑顔はまるで慶蔵や恋雪の笑顔みたいで猗窩座は泣きそうになる。太陽のように温かくて。

    「仕方ないから、なってやる。杏寿郎、お前の仲間に」
    「よかった!じゃあ早速なんだが、ここから一番近い街までの道を教えてくれないか?
    腹が減りすぎて今にも倒れそうなんだ!」

    この吹雪の中で明るく言うことじゃないだろう!と思いながら猗窩座は思わず吹きだすと笑い出してしまった。

    雪の多いこの地域から一番近いのは自分が出てきた国だが、戻るわけにはいかない。
    だが、一旦どこかで休まなくては死んでしまうのは間違いないから猗窩座は

    「街までは遠い。だが、俺が鍛錬に使っていた山小屋なら近い。
     実はそこに行こうとしていたんだ。
     方向も確認できた、食料もすこしは置いてあるからまずはそこに行こう」
    と提案した。





    歩くこと10分強。
    目当ての山小屋についで直ぐに猗窩座は暖炉に火を灯した。
    徐々に暖かくなる部屋。

    それぞれに濡れた上着を脱いでいくと杏寿郎がポカンと口を開けてこちらを見ていることに猗窩座は気がついた。

    不思議そうに首を傾げると
    杏寿郎は微かに頬に赤みが差して感嘆するように言の葉が溢れた。

    「よもや、君は雪の精霊かなにかか?」
    「はあ?」
    「俺はこんなに綺麗な人を見たことがない」
    「俺は男だぞ?」
    「我が国ではパートナーは同性も認められている」

    なんだか話がおかしな方へと向かっていると猗窩座は感じ始めていた。
    綺麗だと言われても俺は男だと思いつつ、なんだかこそばゆい感じが体の奥の方でする。

    目の前の男は、体も鍛えられているし
    顔も……正直今まで見たことがないほどの美丈夫だと思う。

    (はっ!? 俺は今何を考えた?)

    出会って間も無い男なのに、
    感じる気配の気高さと瞳の強さが美しいなどと…。


    猗窩座は何故だか胸がドキドキと高鳴る己に戸惑っていた。

    そんな様子を知ってか知らずか杏寿郎はうんうんと頷くと
    「俺は目的を達成できたようだ!」
    と言った。

    「いや、待て。
     お前、当てもない旅とか何とか言ってなかったか?」
    「確かに当てはなかった。
     だが君に会えた!」
    「はあ?」

    杏寿郎は猗窩座に優しく微笑みかけ、説明を始めた。

    「煉獄家では成人したときに生涯のパートナーを旅をして探すという、しきたりがあるのだ。
    もちろん旅立つ前に出逢っていることもあるので、実際に旅に出るかどうかは自由ではあるのだが、俺はこの人だという人と出会えてなくてな。
    見聞を広めるためにも旅に出たのだ」

    猗窩座はそれを聞きながら、だんだんと顔が熱くなるのを感じてしまう。
    暖炉のせいだけではない。
    このままいけば、この男が何を言うか検討がついてきたからだ。

    杏寿郎はなおも熱く語り続けていた。

    「父上が言っていたのだ!
     父上が母上に出会った時、電流が体中を駆け巡ったと!
     まさに!君を見て俺はそうなったのだ!」

    「ま、まて!きょ……」

    ずいっと猗窩座へとさらに近づいて杏寿郎は
    猗窩座の言葉を遮るように最後の台詞を放った。

    ゆえに!猗窩座、俺と結婚してくれ!」



    猗窩座の両手を温かか大きな手が包み込む。

    太陽のようだと感じた目が真っ直ぐに己を見て






    猗窩座は





    キャパオーバーで、目を回して倒れてしまったのだった。














    後に、伝説となる
    炎の躍る紅の国の青年、杏寿郎と
    雪が舞う白き国の青年、猗窩座との出逢いはこうしてはじまりを告げたのだった。





                      【終】




    2022.2.11
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    DONE■女子高生の猗窩座♀ちゃんと教師の煉獄さん。ひとつ前の話しと同じ世界です。
    ■男ではなくて大人の返事する君にチョコレート革命起こす。(俵/万/智)
    バレンタイン・デーになると思い出す歌です。こちらを女子高生の猗窩座♀ちゃんに贈りたくて書きました。
    ■猗窩煉のオタクが書いています。
    革命とは、いつも弱者が強者に向けて行うものだ。

    *

    「杏寿郎。」
    「どうした、素山。」
    「…、猗窩座だ。」
    「?知っている。」
    「猗窩座と呼べ!」
    「なぜ!」
    「…名前で呼んで欲しいから。」
    「断る。生徒は名字で呼ぶことに統一している。それから君は、せめて呼称に先生と付けるように!」
     それじゃあ、と片手を上げてさっさと職員室へ向かう煉獄杏寿郎の背中は暗にこの話はこれでおしまいだ!と言っているものだった。

     素山猗窩座、良くも悪くも学内で彼女の存在は知れ渡っていた。偏差値がそれなりに高く、中高一貫でほとんどの生徒が顔見知りという狭いコミュニティの当校に、二年生の秋口という中途半端な時期に編入をしてきた転校生。手足が長く、目鼻立ちの整った生徒であると言うこと以上に、全校生徒揃いのブレザーに身を包む中で一人だけこの辺では見掛けない真っ黒のセーラー服に真紅のタイを結った出立ちなのも目を引く要因だった。
     何をしていても自然と目に着いてしまう素山の動向は、当人の意識よりもずっと広く知れ渡っていた。両親が居ないということ、前の学校では暴行事件を起こしたということ、噂の域を出ないあれこれから 4128