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    ruka

    @blaze23aka
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    ruka

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    🔥❄️ ワンライ 「ゆらめき」 
    時間は3時間くらい💦
    現パロ 教師×大学生 
    それと、少し早いけれど🔥さん誕生日おめでとう🎂も込めました。

    #煉猗窩

    同じ時を刻んで桜が終わり、カラフルだった山は夏に向けて緑色を鮮やかにしていた。

    猗窩座は大学生となり、充実した日々を送っていた。

    だがいつも付き纏うのは
    本当に自分は人として生きられているか、
    目の前の幸せは、また、この手からすり抜けていくのではないかという不安だ。

    そんな心の揺らめきをいつだって
    大丈夫だと
    自分がずっとそばにいると
    言って抱きしめてくれるのは


    「杏寿郎……」


    前世で、鬼の自分が殺した、今世では高校で教師と生徒として出会った男だった。


    ただ一緒にいて欲しかった。
    二度と離れないように
    死なないで、誰にも殺されないで、共にいたいと願った。

    結局は……
    自分が壊してしまうくせに。


    「はぁ……」


    猗窩座は大きくため息を吐く。


    信じていないわけじゃない。
    これまでも、ずっと……自分が落ち込みそうな時に、
    心が悲鳴をあげている時に、
    杏寿郎はいつも側に来てくれた。

    「何故か、君が泣いているような気がしたんだ」

    そう言いいながら、抱きしめてくれた。
    その度に、
    猗窩座は今、自分が人として生きていることを実感して心がゆっくりと落ち着いていくのだった。



    大学生となった今でも、それは変わらなかった。
    教師が天職のような男だ。
    きっと幾つになろうとも彼にとって自分は生徒なのだろう、そう猗窩座は切なげに微笑む。


    「それでも、いい。
     杏寿郎が俺を見てくれるなら」


    初夏の太陽のような熱く、温かく、強く、優しい、真っ直ぐな人。

    猗窩座は杏寿郎のことを考えると、いつだって胸がとくんとくんと動きだす。

    ずっと前から気がついていた。


    「好き、だよ……」

    絶対に届かない想いだと知っているけど、この恋心消すことだけはできないから

    「杏寿郎……。
     それでもいい、なんて嘘だ」


    さっきの自分の言葉を否定する。

    先生と生徒は、もう卒業したいのだ。
    他の生徒よりも面倒を見てもらってるとしても、
    生徒じゃなくて

    「俺は、お前の特別になりたい」


    俺にとって杏寿郎が特別なように。


















    「だからと言って、これはやりすぎか?」


    バイト代三ヶ月分!
    とまでは、流石に無理だったが
    それに近い金額の杏寿郎に似合いそうだと思って用意した時計。


    煉獄家の長男で、自分よりも年上に贈るには
    きっと安物となる時計なのだろう。


    それでも、

    「杏寿郎の炎みたいで、カッコよく見えたんだ」

    シルバー主体の文字盤がシックな赤色。
    一目見た時から気に入ったそれは自分の予算よりも上だったけれど、頑張ったんだ。

    きっと似合うと思う。
    一瞬でもいいから、着けてほしい。
    それだけで、いいから。


    誕生日に、贈らせて欲しい。
    そして言わせて、もう抑えられないこの気持ちを。







    五月十日に。

    杏寿郎の、誕生日に。















    そしてその日はきた。




    「杏寿郎、誕生日おめでとう!
     これ、受け取ってくれるか?」
    「ありがとう!」

    久しぶりの高校の正門で放課後、誕生日だからだろう、今日は実家に帰るのだという杏寿郎を捕まえた猗窩座は
    少しだけ話したいと告げて近くの公園へと歩いた。

    誰もいない公園のベンチに並んで座って
    猗窩座は誕生日の祝いだと告げたのだった。

    「開けても?」
    とい杏寿郎の声に首を縦にぶんぶんと振って肯定すると
    楽しそうに杏寿郎はその包みを開けていく。


    「猗窩座……、これ、結構高かったんじゃ…」
    「こら、値段のことを言うのはマナー違反だぞ!
     前に恋雪に狛治も言われてた!」
    「それは……、確かにそうだな。
     すまない、猗窩座。
     改めて、ありがとう。凄く素敵な時計だ」

    杏寿郎は今着けていたものを外して鞄にしまうと
    すっと左手を猗窩座へと差し出した。

    「杏寿郎?」
    「誕生祝いなんだろう?
     甘えさせてくれ、着けてくれないか?」
    「っ!!」

    杏寿郎の願い事に猗窩座は顔を真っ赤に染め上げた。
    それは夕焼けのせいでは決してなかった。

    「わ、わかった」

    震えそうになる手を心の中で叱咤して
    剣道をしている好きな人の大きな手に触れる。
    触れた先からこの想いが伝わるのではないと思うほど心臓を速くさせて。


    かちゃ。


    これぐらいかと思って調節していたバンドは猗窩座の見立て通りだったようで
    杏寿郎の左手に猗窩座の想像よりも凄く似合っていて
    それだけで堪らなく幸せな気持ちになった。

    「誕生日、おめでとう」

    そう震える声で言いながら、猗窩座は杏寿郎を見て微笑んだ。

    何故か、杏寿郎が滲んで見てる。
    あれ、おかしいなと猗窩座が目を擦ろうとした時に
    ぐいっと腕を掴まれた。

    そう思った刹那には
    満月のような瞳に僅かに水の膜を張った猗窩座は杏寿郎に抱きしめられていた。

    「猗窩座…。
     俺は、自惚れてもいいのだろうか?」
    「杏寿郎…?」

    少しだけ腕が緩んで、杏寿郎の右手が猗窩座の頬を捉えると

    「好きだ」

    年上の男は瞳と瞳を真っ直ぐに合わせて、シンプルな言葉でストレートに告白した。

    「猗窩座、ずっとずっと君のことが好きだった。
     君との関係を、変えたい。
     俺の恋人になって欲しい」

    杏寿郎にはわかっていた。
    自己肯定感の低い猗窩座には、回りくどくいくよりも
    素直な気持ちを言葉にするべきだと。

    そしてじわりじわりと距離を詰めてきたことを
    猗窩座はきっと気がついてなかっただろうが、

    初めて会った時から、
    高校で再会した時から、

    「愛してる、猗窩座」


    君が欲しくて堪らなかったんだ。



    その想いのまま、杏寿郎は猗窩座へ口付けた。
    気持ちを伝えるように
    優しい、重ねるだけのキスで。









    「ずるい……、
     俺がカッコよく決めるつもりだったのに」

    そりゃ全然カッコよくできてなかったし
    手も震えてたし

    と、ぶつぶつ言ってる猗窩座を杏寿郎は抱きしめたままなだめるように頭を撫でていた。

    「すまないな、年長者としては
     俺から先に伝えたかったんだ」
    「だからそれがずるい!
     いつだって助けられてばかりなのに
     今日は杏寿郎の誕生日なのに」

    自分ばかりもらって、これじゃ俺が誕生日みたいだ。

    だなんて、可愛い拗ね方をする年下の青年に杏寿郎は頬を緩めるしかなく

    「君なあ、そこだけは訂正するぞ。
     俺は最高の贈り物をもらったし、
     猗窩座の恋人になれたのだから、こんなに嬉しい誕生日はないぞ」

    と、告げると

    「そろそろ機嫌を直してくれないか?
     早速で悪いが、君を家族に紹介したいんだ」
    「………え?」

    猗窩座が思考を停止するような提案をしてきた。

    「君が大学を卒業するまでは恋人として過ごしたいが、卒業したらすぐにでも、結婚しよう!」
    「いや、待て。
     俺もお前も男だ!そもそもまだ付き合いはじめたばかりだし」
    「善は急げと言うだろう?
     だからまずはうちの家族に紹介させてくれ」


    すまないが、歳上としての余裕なぞない。
    君は自分がどれほど魅力的かわかってないのだ!

    俺の誕生日なのだから、俺のわがまま聞いてくれないか?

    それに今日気持ちが通じ合ったばかりなんだ、離れたくない。

    矢継ぎ早にそう言われてはコクンと頷くしかなくて
    猗窩座は気がつけば煉獄家の前に。




    そしてその夜。
    猗窩座の不安など吹っ飛ばす勢いで
    煉獄家の皆から、大歓迎されるのだった。





    杏寿郎の初めての恋人として。




                 【end】






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    DONE■女子高生の猗窩座♀ちゃんと教師の煉獄さん。ひとつ前の話しと同じ世界です。
    ■男ではなくて大人の返事する君にチョコレート革命起こす。(俵/万/智)
    バレンタイン・デーになると思い出す歌です。こちらを女子高生の猗窩座♀ちゃんに贈りたくて書きました。
    ■猗窩煉のオタクが書いています。
    革命とは、いつも弱者が強者に向けて行うものだ。

    *

    「杏寿郎。」
    「どうした、素山。」
    「…、猗窩座だ。」
    「?知っている。」
    「猗窩座と呼べ!」
    「なぜ!」
    「…名前で呼んで欲しいから。」
    「断る。生徒は名字で呼ぶことに統一している。それから君は、せめて呼称に先生と付けるように!」
     それじゃあ、と片手を上げてさっさと職員室へ向かう煉獄杏寿郎の背中は暗にこの話はこれでおしまいだ!と言っているものだった。

     素山猗窩座、良くも悪くも学内で彼女の存在は知れ渡っていた。偏差値がそれなりに高く、中高一貫でほとんどの生徒が顔見知りという狭いコミュニティの当校に、二年生の秋口という中途半端な時期に編入をしてきた転校生。手足が長く、目鼻立ちの整った生徒であると言うこと以上に、全校生徒揃いのブレザーに身を包む中で一人だけこの辺では見掛けない真っ黒のセーラー服に真紅のタイを結った出立ちなのも目を引く要因だった。
     何をしていても自然と目に着いてしまう素山の動向は、当人の意識よりもずっと広く知れ渡っていた。両親が居ないということ、前の学校では暴行事件を起こしたということ、噂の域を出ないあれこれから 4128