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    ruka

    @blaze23aka
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    ruka

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    🔥❄️ワンライ 「ゆらめき」で書いた
    同じ時を刻んでの続き。

    いかしきれなかった設定について書いてみたので
    それに伴いワンライから裏設定を削除しました。

    改めて🔥さん 誕生日おめでと🎂
    このお話だけだと誕生日関係ないけれど😅

    #煉猗窩

    続・同じ時を刻んで 猗窩座が煉獄家に初訪問してから三ヶ月。

    大学が夏休みとなったときに、高校2年生である千寿郎に請われて家庭教師をすることとなった。

    と言っても、千寿郎は頭が良いので
    勉強を教えるよりも、大学の話やいろんなことを聞きたがった。
    その時間は猗窩座にとっても楽しいものだった。

    瑠火も猗窩座がくるのは嬉しいらしく、何時行っても沢山のご馳走が出てくる。
    杏寿郎の話を猗窩座とする時にとても優しい母の顔となるのが、猗窩座には何故か切なくなるほど美しく思えた。

    そして


    槇寿郎はというと…。


    煉獄家は剣道の道場を生業としている。
    その師範である槇寿郎は剣道は勿論、合気道、柔道と様々な武道に精通していた。

    その中には空手も含まれていた。


    と、くればすることは一つだ。





    道場での組手。


    槇寿郎は猗窩座に教えてもらうと言うが、それはこちらの台詞だと毎回猗窩座は思っていた。

    強さ、それは文字通りの意味だけでなく
    武道を極めようとしたものの心の強さが槇寿郎にはあるとわかるからだ。

    ………、
    この組手の話だけは杏寿郎が拗ねるのであまりしないようにしている。
    その理由に猗窩座はあまりピンとこないが、
    千寿郎が
    「父上に猗窩座さんを取られそうで怖いのだと思います!」
    と冗談を言うので、それが理由でもいいかと思うようにしていた。

    ……千寿郎が冗談ではないのですが、と苦笑していたような気もするが。



    話を戻して
    今日は久しぶりに組手ではなく剣道を教えてもらった猗窩座。

    竹刀を使うのはまだ苦手だが、杏寿郎と同じことをしてみたい気持ちもあり稽古をつけてもらっていた。


    「今日はここまでにしよう」
    「はい!
     ありがとうございました!」



    冷たい麦茶が喉を通る感覚が心地よい。
    猗窩座はほうっと、息を吐いた。

    「猗窩座くん……、ありがとう」
    「え…」
    「一度、きちんと礼を言わねばと思っていたんだ」
    「礼?そんな、俺は何も礼を言われるようなことは……」

    槇寿郎は猗窩座の頭に右手をぽんと置くと優しく撫でた。

    「君が杏寿郎の隣にいてくれる。
     そのことに感謝しているんだ」

    そう告げて。






    ―――昔話をしよう。


    と、槇寿郎は幼い頃の杏寿郎の話をしはじめた。



    「あの子は子どもの頃から聞き分けが良い素直な子だった。良すぎるほどに」


    素直で真っ直ぐなお子さんですね。
    とてもしっかりとされていて、さすが煉獄さんのところのお子さんだ。

    など、誰からも褒めてもらう我が子。

    喜ぶことなのだろう。

    だが、槇寿郎はそれが苦々しく思え、母である瑠火は心配をしていた。

    子どもの前では決して出さないが、
    槇寿郎の前でだけは

    「あの子は、周りの人たちを優先しすぎて、どこか自分の心を大切にしていないような……そんな気がしてしまうのです」

    と不安な心を吐露した。

    子どもならではの我儘を言わない。
    食べることも体を動かすことも好きで、剣道をやりたいとか、芋が食べたいとかそう言うこと以外では
    これが欲しいとか、何かを要求することは無かった。


    「千寿郎が生まれてからは、少し落ち着いたんだ。
     あいつは千寿郎を可愛がったし
     気心の知れた友達もできたようだったからな」

    その頃に、宇髄と実弥と友達となったんだな、と猗窩座は思った。

    二人とも杏寿郎と出会った頃には
    ぼんやりと記憶を思い出しつつあったと以前聞いたことがあったから。


    (前世の記憶……の影響なのだろうな)

    炎柱として、責務に邁進していた時の。
    父親に認めてもらうために
    母親の言葉を背負い
    千寿郎の良き兄として
    鬼殺隊の柱としてのみを主軸に生きてきたときの。

    猗窩座はその時のことを杏寿郎から聞いたことはない。
    ただ、ひとつだけ。


    『君は真っ直ぐに、ただの煉獄杏寿郎を見てくれた。
     俺の生き方を何も知らないのに
     俺の全てを認めてくれた。
     あの時、心の奥底では嬉しかったんだ』

    そう、言われただけで。



    猗窩座がその時の杏寿郎の柔らかな笑顔を思い出していた時に

    「あの子は君と出会って変わった」

    槇寿郎の声が耳にすとんと入ってきた。

    驚いて槇寿郎を見ると、杏寿郎の微笑みに重なるような優しい瞳で己を見ていた。

    「君は、杏寿郎の心を解き放ってくれた。
     “炎柱”ではない、あの子の心を」
    「っ!」


    槇寿郎にも、前世の記憶がある!?

    そのことに猗窩座は心臓が嫌な動きをし始める。
    猗窩座が鬼であり、杏寿郎を殺したことも覚えて…、いや、思い出したのなら……。

    そんなことを考えている猗窩座の様子に気がついたのだろう。
    槇寿郎はもう一度猗窩座の頭を撫でると

    「落ち着きなさい。
     俺はさっき、杏寿郎の隣に君がいることに感謝していると言っただろう?」

    諭すように言った。

    「でも、俺は……」
    「君とのことは杏寿郎とも話した。
     だから、わかっている。
     なによりも、杏寿郎と君を見ていたらわかる」

    前世は前世なんだ。
    記憶があると言っても、今の二人の気持ちが大切だろう?

    槇寿郎の言葉に猗窩座は気がつけば涙を溢れさせていた。
    そんな猗窩座に槇寿郎は
    「だからな、君には胸を張ってあの子の隣にいてほしいんだ。これからも、ずっと」

    優しい言葉に猗窩座は涙を何度も拭いながら
    「はい」と答えた。




    その時だった。


    「あー!父上!!
     猗窩座さんを泣かせたんですか!」
    「せ、千寿郎!?
     いや、これはだな」

    麦茶を下げにきた千寿郎が慌てて猗窩座の隣にきて
    槇寿郎に抗議すると
    先程までと違いワタワタとしはじめる、その姿に猗窩座は堪えていたが、最後には笑い出してしまう。

    その猗窩座に親子喧嘩をしそうだった千寿郎と槇寿郎もつられて笑いはじめるとそれを聞きつけた瑠火まで道場にやってきて……

    四人でそれから楽しく、ここにいない仕事中の杏寿郎の話をした。








    それを帰ってきてから千寿郎に聞いた杏寿郎はひどく残念がったと言う。

    そんな兄を見て、千寿郎は

    (最近の兄上は幸せオーラいっぱいで僕は嬉しいです)
    と心の中だけで呟いた。


    幼い頃は何故か兄がいつか急に消えそうだと思っていた。理由もなく。

    だがもうそんなことは起こらない。


    「僕も、猗窩座さんみたいな恋人が欲しいな」


    と、今度は音にしてしまい杏寿郎を慌てさせてしまうのだった。




















    幼い頃から、心に刻まれた炎柱としての記憶。
    それ故に
    生き方を選べなかった自分に





    生きていることの素晴らしさ。

    嗚呼、世界はこんなにも美しい!



    それを思い出させてくれたのは
    あの黎明で別れた君を見つけた時だった。





    だから、猗窩座。



    君を離せないのは俺の方なんだよ。
    誰よりも必要としているんだ。
    自分の全てで君を愛しているから、
    どうかこの命が尽きるまで、尽きたならば次の生でも。





    「俺のそばに居てくれ、猗窩座」




    もう二度と離れないように。







                 【了】

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