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    hydroxideion010

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    hydroxideion010

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    鋭心に教えてあげる百々人くん

    #鋭百
    excellentHundred

    【鋭百】失くし物 首筋に湿った感触がした。先程まで散々自分の唇と絡み合っていたそれの感触にぞわりと背中が震える。そのまま強く吸って、歯をたてて痕をつけたりしてくれないだろうか。けれども肌に押し当てられた感触はそのまま離れ、まるで傷を労るようにその部分を舌でそっと撫でられた。
    「……痕、つけてもいいよ」
     百々人の言葉に鋭心は顔を上げる。わずかに揺れた翠に、困惑の色が浮かんでいた。
     困らせるのを承知で言った。僕たちの身体は商品であり見世物だ。そこに誰かが傷をつけることなどもってのほかで、それが例え同じユニットの仲間だとしても、不快に思う人がいるなら避けなければならない。そんなことを今更言われなくても分かっているし、鋭心も百々人がそれを理解した上で言っていると分かっている。だから優しいこの人は、否定の言葉を百々人に押し付けることもできず、答えを選べずにいるのだろう。
     未だ何も言わない目の前の身体を両腕で抱き寄せ、赤い髪をそっと撫でる。鋭心はそろりと百々人の腰に腕を回してきた。
    「ごめんね」
    「いや……」
     ぎゅ、と腰に回った腕に力が入り、肩に額を押し付けられる。これがこの人の精一杯の甘えなのだと百々人は知っている。自分の欲を正しさで押し込んでしまって、どこにあるのか分からなくなってしまったのだろうか。肩に乗せられた愛おしい温もりを撫でながら、そっと耳元に唇を寄せて息を吹き込んだ。
    「ね、もう一回キスしたいから顔を上げてくれる?」
     ゆっくりと上げられた瞳の中にきらりと熱が灯るのを見つけた。互いに顔を寄せ合い、唇が触れる直前に目を閉じる。
     そうして今日も鋭心の失くし物の在り処を教えてあげるのだった。

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    hydroxideion010

    DONEチョコレートと鋭百
    【鋭百】チョコレート・ジェネシス 真っ赤な果実がプリントされた箱の中からは、十粒ほどの艶やかなチョコレートが顔を覗かせた。その中の一粒がつままれて、口の中へ放り込まれる。こり、とチョコレートを頬張った百々人は口元を綻ばせた。
    「美味いか」
    「うん、すごく美味しい」
     こちらに顔を向け、とろん、と目尻を下げて微笑む百々人に自然とこちらも頬が緩んでしまう。ほんのりと爽やかな甘い香りがして、友人から貰ったという珍しいチョコレートはなるほど確かに美味しそうだ。
    「マユミくんも食べる」
     そんなに物欲しそうにしていただろうか。一瞬己の行動を省みたが、一人じゃ食べきれないから、と言われてしまえば断る理由もない。
    「いいのか」
    「もちろん」
     百々人はそう言ってもう一度箱に手を伸ばし、一粒チョコレートをつまみ上げる。てっきり箱ごと差し出されると思っていたから、その一粒は百々人の口の中へと運ばれていくのだろうと思った。しかし百々人はそのまま自分の顔の前に手を持ち上げて動きを止めた。どうするのだろうかと眺めていたが、動く気配はない。意図を図りかねて顔を見ると、小首を傾げてこちらを見つめ返してきた。
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