「なんか、ちょっと緊張するかもー」
駅を出て歩き始めること約5分。スマートフォン上に表示した地図では、目的地まであと4分と出ている。
そわそわと気分が落ち着かない想楽は、手にした紙袋の中をちらりと覗き見た。
想楽は今日、雨彦とクリスが暮らすマンションを訪れる約束をしていた。
恋仲である二人が共に暮らすべく引っ越したのは一ヶ月ほど前。ようやく荷解きや家具の搬入などが落ち着いたと聞いたのが先週のことだ。
クリスが想楽を一番に招きたいのだと言い、雨彦もそれに賛同した。そんな二人の誘いに、想楽は少し照れくささを感じながらも頷いて、オフである今日二人の部屋を訪れることになったのだ。
思い返すと、こうして二人が恋仲になり、共に暮らすようになるまでには、いろいろなことがあった。
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