「おかえり」
「…ただいま」
七ツ森の顔には疲れが見えた。彼はここ暫く残業続きで、土曜出勤は常。繁忙期だから仕方がないと割り切ってはいるものの、心身の消耗は激しい。今日も休日出勤を終わらせてきたところで、平日よりは早く帰れているがそれでも時刻は21時をまわっていた。
「飯?風呂?」
「ふろ、」
絞り出した声に被さるように、きゅるる、と間抜けな音がする。風真は思わず吹き出して笑った。
「身体は正直なようで」
「…でも、これから準備してくれるんデショ?待ってるのも何か急かしてるみたいじゃん…」
この頃は帰宅時間が読めず、帰るコールが出来るのは会社を出てからだ。職場まで自転車で五分程のこの環境は有難いが、食事を準備してくれている風真には申し訳ないと、常々七ツ森は思っていた。
1177