アイスが溶ける前に大学の夏休みが直前に迫った頃。風真玲太は恋人である七ツ森実の家を訪ねていた。所謂、お家デートというやつだ。手土産にはちょっとお高めなアイスクリーム。付き合って初めての夏休みに風真玲太は浮かれていた。
「よぅ」
「いらっしゃい」
「あっついな」
「もう7月ですから」
家主である七ツ森実に招かれ、家の中に入るとひんやりとしたクーラーの冷気が風真を包みこむ。
「アイスクリーム買ってきた」
「マジか!食べたい」
「あとでな。その前にさ」
風真が七ツ森の大きな体をギュッと包み込む。
「実を補給させて」
「玲太……アイス……も、俺も溶けちゃうよ」
「それは大変だな」
クスクスと二人で抱き合いながら笑い合う。風真玲太はこんな時間が大好きだった。
「アイス、冷凍庫に入れてくる」
「ん」
風真は冷凍庫にアイスを入れ、部屋に戻ると七ツ森はPCデスクのチェアに座り何かを検索していた。
「何調べてるんだ……?」
「あのさ、カザマ。提案が、……その。あるんだけど……」
「なんだ……?」
「夏休み、旅行に行きませんかっ?」
七ツ森が顔を赤くして風真に告げる。それはつまり、初めての宿泊ということで。
「へーー。2人で旅行か。いいじゃん。」
「はぁ、言った……」
「勇気出して言ってくれたんだな。ありがとな」
「へへ……」
「実と二人ならどこでも楽しいだろうけど、行きたいところとかあるのか?」
七ツ森がPCを操作しながらモニターを指差す。
「幾つか候補があって。暑いから北国なんていいんじゃないかと思ってるんだけど」
「へーー東北か」
風真が画面を覗き込む。そこには幾つかの宿屋が映っていて。
「天然温泉……家族風呂……?」
「わーー!!!これは……!!」
「ふぅん?この宿、いいじゃん。実と二人っきりで温泉入れるって事だよな」
七ツ森は真っ赤になって固まってしまった。
「なーに?実。真っ赤だぞ。もしかして、想像した?えっちなこと」
「これは、その、ちがくて…!!」
「かーわいい」
風真が慌てる七ツ森の頬にチュッと音を立ててキスをする。
「ここにしようぜ。めーいっぱい、可愛がってやるからさ」