米は美味しく炊けました「たまには一緒に作るか?」
「え」
まさかのコンビニ行こうぜ、と同じノリだった。
エプロンを持つカザマの隣に並ぶ。自分の家のキッチンなのに、これから料理をするんだと思うとなんだか新鮮な気持ちになる。
「ナニ作るの?」
「ハンバーグ。あと朝作った味噌汁が残ってるから、それも……。だいたいは俺が作るから」
不安が伝わったのか、カザマがエプロンの紐を結びながら「大丈夫だって」と笑顔を向けた。
冷蔵庫からハンバーグのタネを取り出し、慣れた手つきで形を整え、真ん中に凹みを入れる。それから手際よくフライパンにサラダ油を入れ、強火のまま投入する。ジュージューという肉の焼ける音が目の前で繰り広げられる。いつもはカザマの背中越しに聞いている音だった。
「赤ワインでソース作るから、これ煮詰めててくれ」
「へっ?」
カザマはそう言うと火を調節し、赤ワインの他にいくつかの調味料を加えた。みるみるうちにハンバーグが浸されていく。
「半分くらいになったら教えて。俺、味噌汁用意する」
「え、あ、ハイ」
言われるがままハンバーグを見守る。
(……赤ワイン入れてたけど、アルコール……大丈夫だよな? さすがに飛ぶよな? え、一応しっかりめに煮詰めた方がイイとかある? 半分ってどれくらいだっけ??)
そんなことを考えてるうちに、どんどんソースがなくなっていった。
「か、カザマ……ゴメン、なんか、こ、焦げたっぽい……」
「えっ? あー、それくらいなら大丈夫だから、こっち見てて」
「ハイ……」
場所を交代して味噌汁を見守る。
鍋の中で、カザマ特製大根の味噌汁がぐつぐつと煮立ち始めている。
(えーと……コレは、俺何かした方がイイ? 火は? このまま放置でオッケー?)
隣を見ると、カザマは俺が焦がしたハンバーグをどうにかしている最中だった。
(ちょっと、混ぜるだけ……)
チョンチョンと菜箸でつついていたら、中の大根がほろほろ崩れた。
「そんな顔すんなって」
「ゴメン……」
「おまえが隣にいるの、新鮮で楽しかったよ。また作ろうな」
カザマが嬉しそうに笑うのが可愛くて、失敗したけどやってみて良かったかも、なんて思った。
ハンバーグはやっぱり少し焦げてたし、味噌汁の具は不格好だったけど、なんだかあったかい味がした。視線が重なり、二人で笑い合った。ある日の昼のことだった。