風の行方 冬になると あの日の傷が未だじわりと痛む。
あの日、あの時。
大事な、誰よりも大切だった弟を庇って受けた傷。
あのデュナンの戦争が終わって幾年月、私の大切な弟は立派な王様になっていると聞く。
トランとの同盟は磐石で、摂政としてシュウさんがなにかと頑張っているのだと、時折訪れる使者の人に伝え聞く。
綺麗に居場所を隠していたはずなのに、何処をどうツテを辿ったのかはわからないけれど、外交官になった旧友夫婦が時折 この隠された場所に訪れるのは、ささやかな楽しみにもなっていた。
「うちの国に来りゃいいのに、ルートなんてロッカクの連中がいくらでもお膳立てしてくれるだろ」
蜂蜜色の彼は、あの頃と変わらず日の光みたいな笑顔で手を差し伸べる。
鳶色の彼女は、何時も何処か悲しげに、私が首を横に振るのを何も言わずに見守ってくれる。
遠く離れているよりも 私は此処に居たいのだ。
会うことすらも出来なくとも、少なくとも同じ空の下に在りたいと願うのだ。
死んだ姉、失った親友。
私の小さな、小さかった弟は、色々なものを背負い今を生きている。
偽りの死ではあったけれど、あの子が1人で立つ為には仕方が無かったのだ と今でも思う思っている。
いつまでも私の後ろをついて歩いていた、小さいカインのままじゃダメだから あの盾の紋章の大きな光の様に、あの子の両の手にはたくさんの人達の命と思いが詰まっているんだから。
だから 私ここで大切な家族を見守る事に決めたのだ。
亡き祖父の思い出と共に、あなたの護る国の行く末を 近くて遠い、この場所で。
例のイベント、生きて再会は幸せエンドではあるけれど、お姉ちゃんが身を引いてってエンドはそれはそれで幻想水滸伝らしい美しさがあると思っている。いやまあ怒られそうだけどさあ、自分が2主君んの弱みになる事を気づいたら 気づいてしまったら あの娘はどうするんだろうなあ…と。
遠くからでは無く、決して近くはないけれど同じ空の下で見守る事を選びそうなんだよなあ。
だからこそ「お姉ちゃんってよんで…」欲しかった。姉のまま、あなたの家族でいたかった。ずっと。