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    greensleevs00

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    束縛するために先生の四肢を切断して監禁するタルくんと、世話が必要な状態であればタルを一生側に置いておけると思ってる先生の話。
    タル鍾ワンドロワンライ「束縛」より。

    【タル鍾】「束縛」 鳥の囀りによって鍾離の朝は始まる。窓から漏れる薄明かりをぼんやりと眺めながら、鳥の美しい声に耳を傾けるうち、扉を叩く音が聞こえて、使用人が姿を現す。鍾離様おはようございます、と挨拶を述べるだけで、よく眠れましたか、という言葉をかけもしない。この生活に慣れぬ当初はいささか居心地が悪かったが、今ではもう気にならなくなった。この使用人は、ただ命令されたことをだけ成し遂げる人形のようなものなのだ。
     使用人は鍾離を抱き起こし、湯に浸した布で顔や体を拭う。そして、服を着せ、髪を梳く。それから、寝台の上に朝食が運び込まれて、食事となる。今朝は海老と松茸の粥だった。それと、蓮の花をかたどった甘いパイ。豊かな出汁の香りが鼻先に漂い、食欲をそそった。
     だが、鍾離は自分の手で食べることが叶わない。口を開けて、使用人から差し出される匙を待たねばならない。まるで、親鳥から餌を貰う雛のようだった。美食家である鍾離にとって、自分の食したいように食すことが出来ないのは、侘しいものがあった。だが、それも今は甘んじて受け入れるしかないのだろう、と考えていた。
     全ての歯車が狂い始めたのは、家族を弔うために祖国へと帰郷していたタルタリヤが任務で璃月に戻ってきてからだった。タルタリヤは自分の家族を深く愛していた。だが、故郷の村が火事に見舞われた時、彼の住み慣れた家と愛する家族とは呆気なく焼けてしまった。放火でも何でもない、ただ数軒隣の家の失火だった。
     戻ってきたタルタリヤに、どう声をかけていいのか、鍾離は迷った。常より光を宿さない青い瞳はますます虚ろになり、それでいて異様に鋭い眼光を閃かせる瞬間があった。
     ある晩のことだった。鍾離はたまたま知り合った考古学者を家に招いていた。三杯酔で講談を聞き終わった後に声をかけられ、それから何度か食事を共にしていた。その学者は鍾離が趣味で集めている骨董の話を聞くと興味を持ち、ぜひ現物が見たいと言い出したのだ。鍾離としては断る理由もなかった。
     男は、ひとしきり蒐集品を眺めた後、それが収納されていた棚へと鍾離の肩を縫い付けた。離せと言っても聞かず、だが棚の物に累が及ぶことも恐れ迂闊に身動きもできず、男の手が物欲しげに体をまさぐった。――そんな時だったのだ、タルタリヤが久々に鍾離のもとに現れたのは。
     鍾離は、助かった、と安堵した。これで男は追い出されるはずだからだ。そして、タルタリヤはこういう時に嫉妬を露わにする性格ではなかった。自分の守護してきた民に欲情されるなんて先生も大変だね、とそう笑うだけだった。
     だが、その日ばかりは異なっていた。タルタリヤは男の腹を蹴り、手荒に家の外へ追い出した。それから、俺がいない間はあいつの寝てたのかな、と問い、鍾離が首を振っても信じようとしない。強い力で手首を掴まれ、寝台へ引きずり込まれる。違う、お前は何かを勘違いしている、と言っても聞かず、その晩は手酷く犯された。
     それから間もなくのことだった。璃月に家を買ったから一緒に住もうなどと言われ、その家を訪れた。その時には全てが設えられており、酒を振る舞われた。いつもより酔いが早く回る、と思った時には既に遅かった。寝台に横たえられ、朦朧とした視界の中で、痛いかもしれないけど我慢してね、と相手が水刃を構えているのが見えた。何故、と問うよりも早く、腕に違和感が走る。見れば、肘の上あたりから腕を切り落とされていた。次いで、もう片方の腕を、そして右脚、左脚と奪われていった。やっぱり鉱物で出来てるから痛くないんだ、良かった、とゆったりと頭を撫でられ、意識はそこで途絶えた。
     
     夜、夕食を終えて書見をしていると、タルタリヤが部屋に現れた。かつかつと神経質な音を立てながら、寝台へと乗り上げる。黒革の手袋を外し、無骨な手が鍾離の頬を撫で上げる。
    「先生、今日も良い子にしてた?」
     出来ることなど限られていることを知悉している癖に、タルタリヤは毎晩、部屋を訪れてはこう訊ねてくる。鍾離が今日読んだ書物の話や、手元に飼っている美しい小鳥の話などをすると、タルタリヤは目を細めて満足気に頷く。
     相手の手が首筋に伸び、鍾離の襟元を寛げる。そして、ゆったりと唇を近づけて、皮膚に歯を立てる。それが強く食い込んで、血が――と言っても鍾離の血は黄金そのものだ――流れ出るのを、鍾離は感じていた。痛みはない。ただ、ねっとりと舌を押し当てられ、愛おしむように啜られ、思わず背筋が震える。
    「……んっ、……」
    「あは、先生、感じちゃった?」
     タルタリヤは笑って、鍾離の臀部を撫で上げる。下腹部が熱くなり、微かに身悶えた。腕があれば、このまましがみつけるものを、と僅かに悔しくなってしまう。
     衣を捲られ、僅かに残された短い脚に手が這わせられる。鍾離が思わず身を引きかけると、それよりも強い力で抱き込まれ、好きなだけ撫で回される。タルタリヤの顔にはただ愉悦ばかりが浮かんでいる。
    ――明日、脚を削っておかなければ。
     鉱物でできている体は、ごく僅かずつ再生する。仮に時間をかけなくとも、未だ残されている神の力を使えば、手脚を取り戻すことは難しい話ではなかった。だが――。
     再び首筋に歯が押し当てられ、肌を強く吸い上げられる。
    「俺が先生のお世話をしなきゃだから、長生きしないとね」
     岩神の血を啜った者は不老長寿となる――その伝説をタルタリヤは忠実に履行しようとしている。どれだけ長生きできるのか、それは鍾離にも分からなかったが、人間の生命力を上回ることはできるはずだ。
     ようやく唇が重ねられる。貪欲な舌が捩じ込まれ、呼吸すらも奪われていく。手脚がもがれたままであれば、この男は命尽きるその時まで自分の傍にいるのだ。一日待ち侘びた楽しみに、鍾離は陶然とした。
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    greensleevs00

    DONE #タル鍾ワンドロワンライ  
    お題「花言葉」
    *タルが何気なくあげた花についての花言葉でぐるぐる考えてしまう先生と、そんな先生が何を考えているのか分からなくてもやもやするタルの話。

    タル鍾ワンドロワンライさんがクローズされるということで、2021年11月に投稿したものを記念に再アップ。タル鍾初書きかつ、初めての原神二次創作だった。
    花言葉 夕間暮れ、太陽が寂々と山の端に入りかかる頃、朱の格子から滲むように漏れ出す橙の灯りを、タルタリヤは薄ぼんやりと眺めていた。見慣れ、通い慣れた往生堂の玄関口である。普段ならば悠々とその扉を抜け、奥へ進み、此処の客卿と名乗る男に会いに行く。だが、今夜はどうにも扉へ手をかけるところから躊躇われた。ここ幾日か、鍾離の態度がどうにも奇妙なのである。
     発端と思しき出来事は数日前のことであった。
    「先生、これあげる」
     まるで野良猫が都合の良い投宿先を見つけたかのように往生堂に居つくタルタリヤは、ある日、蝋梅を鍾離の眼前へと差し出した。蝋梅は、古来より璃月で愛でられたきた梅花の一種であり、その名の通り蝋の如き花弁を持つ花であった。寂とした黄金こがね色であり、その長閑な輝きは月の風格に似る。鍾離と異なり、文人墨客的な美学を持たないタルタリヤでも、その璃月の文化的風土の一縷をその身に湛えたような花は、素直に美しいと感じた。
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