こたつ【江の仲良し】「うー寒い寒い……。」
桑名が、その大きな背を丸めて部屋へと急ぐ。
夕方、冬の太陽はあっという間に姿を隠し、かわりに綿毛のような雪が音もなく世界を白く染め始めていた。
すっと部屋の戸を開けると、似たようなジャージの4人が同時に桑名の方を向いた。
「おう、おけーり。」
「畑、お疲れ様です。」
「お茶、いれようか。」
「みかん、美味しいですよ。」
それぞれにねぎらいの言葉をかけてくれる。
豊前、篭手切、松井、そして最近仲間に加わった五月雨だ。
どうやら4人で部屋のこたつに入り、仲良くお茶をしていたようだ。
「うん、ありがとう。松井、お茶は熱めでお願い。」
桑名は、上着をハンガーにかけ、その輪に入ろうと振り向いた。
「よっこいしょっと。あー、暖かいねぇ。」
「おい、なんでそこに座るんだ?」
桑名は、豊前を膝の上に乗せて、その背中にはりつくようにしてこたつに入った。俗にいうカンガルースタイルだ。
「なんでって。4人でこたつ囲んじゃったら、僕のはいる場所はここしかないじゃん。」
桑名が豊前の肩にのしっと顎を乗せると、豊前はその口にミカンをひと房、放り込んでやった。
「甘いねぇ。」
桑名はふにゃりと笑う。
「ずるい、僕も豊前と一緒に暖まりたい。」
桑名のお茶を入れ終えた松井が、いそいそと座布団の位置を変えて、桑名と豊前の横にぴたりとくっつくようににして座った。
「桑名、もうちょっとそっち行ってよ。あー豊前暖かいー。」
豊前の腕をとるようにして松井が暖を取り始める。
「あ、松井さん。いいですねぇ。私もやりたいです。」
篭手切も座布団をもって松井の反対側に陣取り桑名と豊前にぴったりとくっつく。
「おいおい、せっかくこんなに広いのに、みんなくっついたらせめーじゃねーか。」
豊前が困ったように声を上げるが、桑名もニコニコとして豊前を背中から抱きしめている。
「いいじゃない。あったかいよ。暖房も節約になっていいよね。」
「でも、これじゃ、五月雨が入るところが……ってあれ?」
豊前の対面に座っていたはずの五月雨がいない……。
「五月雨……?」
「はい……。」
「うわぁ。」
五月雨はひょいっと豊前の股の間、こたつの中から顔を出した。
「私はここがいいです。とっても暖かいです。」
豊前の腰に抱きつくようにして五月雨は豊前の膝の間に陣取った。
「そっか、五月雨がいいならいいけど……おい、変なとこ触んな、こら!」
◇◇◇
「あ、加州くん。江のみんな、呼んできてくれた?そろそろご飯だよって。」
「うん……声はかけたよ。でも、江たちこたつで団子になってた。」
「だんご?」
「うん……。やっぱ距離感おかしいよね。江たち。」
はぁ、とため息を付きながら手を洗う加州に、燭台切は不思議そうに首を傾げた。