闇堕ちリンゼルR18メリバ(百年前設定)の結末案だったもの ────……
「リンク」
透き通るような美しい声。
遠くから聞こえるようでいて、耳元で囁いているかのようにも聞こえるその声に導かれ、そろそろと重い瞼を上げる。
その瞬間、視界に飛び込んできたのは、一筋の白く眩い光。
目も眩むような眩しさに思わず再び目を瞑り、恐る恐る目を開けると、光の中にぼんやりと浮かぶ輪郭が、徐々に人の姿をとり始める。
その人の姿を認め、思わず息を呑んだ。
──それ自体が輝きを放つ太陽のような美しい金色の髪、雪のように白い肌、深い森のような緑色の瞳を持つ、美しい女性──あるいは、女神。
その人を見つめているだけで、何も分からない、何もなかった自分の心の内に、畏れと限りない安堵、そして、どうしようもない愛おしさがこみ上げてくる。
「リンク」
愛おしいものを見つめるような眼差しで、女神のようなその人が自分を見つめている。
──その声を聴くだけで、その眼差しに見つめられるだけで、身体中に力が漲り、胸の内から勇気が溢れ出してくるようだ。
まるで、夜明けの世界を照らす朝日のようなその微笑みに見とれていると、女性の眉が不安そうに、切なそうに徐々に下がっていく。
そうすると、それまでまるで全能の女神のようだったその人が、急に一人のか弱い女の子になったように見えて、自分の心臓が激しく高鳴り出す。
「な、泣かないで」
長い間声を発していなかったのか、強張った頬の筋肉と、動かない舌をどうにか動かせば、喉から出るのは掠れた声。
こちらも長い間日の光に当たっていなかったように生白く、枯れた枝のように細い腕を伸ばして、濡れ始めた少女の目尻を拭う。
少女の、新緑の森に似た緑色の目が驚きに見開かれ、そしてすぐに、喜びに細められる。
その眩しいまでの柔らかな微笑みを呆然と見つめていると、目尻を拭っていた自分の手に、少女がそっと手を重ねた。
「リンク」
少女の双眸に、自分の姿が映し出される。
そこにいるのは、涙を流す少女を気の利いた言葉で慰めることもできず、ただ呆けたような顔をして少女を見つめることしかできない、ちっぽけで無力な一人の男の姿だった。
でも、目の前の少女から目を離せないその男を、少女もまた、ほんの一瞬たりとも目を逸らすことなく見つめている。
少女の目のふちから、とめどなく涙が溢れる。その一滴一滴を全て拭いたいと思うと同時に、朝日を受けてきらきらと輝くその雫がこぼれる様を、ずっと見ていたいとも、思う。
まるで自分だけでなく、この世界そのものが生まれ変わったかのようだ。肺を満たす空気も、頬をくすぐる風の香りも、初めて触れるはずなのに、すべてがひどく懐かしい。
少女が、ゆっくりと唇を開く──。
「──私を、覚えていますか?」