AWAY,AWAY,AWAY from HOME ホメロス3日目3日目
クマのような男の大きな手で、キッチンのカウンターの上に様々なスイーツが並べられてゆく。
出来ればスーパーのスイーツコーナーのものではなくちゃんとした専門店で買ってきて欲しいところだったが、まぁいい。そこまでこの男に求めるまい。
どれから食べようか。
フルーツがのったタルト風のものもいいし、生クリームがのったプリンも捨てがたい。
カスタードクリームをパンケーキの生地で挟んだものもいいが、…フルーツサンドも買ってきたのか。そこは褒めてやる。
真剣に吟味して選んだ一番クリームが多いものを手に取って、リビングへ持っていく。
もちろんスプーンも忘れない。
ソファーに座って早速一口食べてみる。
「…普通だな」
可もなく不可もない。まぁ、スーパーで売っていたものならこんなところだろう。
それでも久々の糖分が体に沁みた。
あっと言う間に食べ終わって、次を取りにキッチンへ戻ると、グレイグが冷蔵庫の前でなにやら唸っていた。
今日の献立でも考えているのか。
自分に気が付くと、こちらを向いて何か言ってきた。食べたいものでも聞かれているのだろうか。
「なんでもいい。どうせキノコ料理だろう」
適当に答えてカウンターの上から追加でスイーツ(今度はフルーツサンドにした)を選ぶと、さっさとリビングに戻る。
2つ目は本でも読みながらもう少しゆっくり食べようと、読みかけの本を手にソファに寝転がり、アームレストに頭を乗せた。
そうして片手に持ったフルーツサンドを食べながら本を読み進めていると、突然頭上で叫び声がした。
「!?」
驚きのあまりソファから落ちそうになったが、なんとか耐えた。
「なんだ!突然!?」
体を起こして頭上の男を見上げると、奴はひどく慌てて辞書らしきものをめくっている。
3日目にして辞書を用意してきたらしいが、明らかに体のサイズに合っていない。
持ち運びするにはそのサイズが便利だと思ったのかも知れないが。
ああ、ほら見たことか。上手くめくれていないじゃないか。
「グレイグ、電子辞書って知ってるか」
と、言うか何をそんなに慌てているんだ。
料理に使おうと思っていたキノコが盗まれたのか?
言っておくが犯人はオレじゃないぞ。
そうして暫く不器用なクマが単語を調べるのを待っていたが、一向に目当てのページを見つけられないそいつに痺れを切らせて、オレは奴の手から辞書を奪い取った。
お前の調べ物などどうせくだらないことだろう。
それならこっちのほうが優先だ。
辞書はこちらの言葉と、デルカダール語の両方に対応していた。
一応こちらと意思の疎通が図れるようにという考えはあったらしい。
数多の単語の中から2つだけ指し示すと、それを見たグレイグは慌ててキッチンへ戻っていった。