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    k i r i

    練習練習。

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    k i r i

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    グ6日目。
    ホメチヤンに比べてグのパートが長くなるのはもう仕方がないとあきらめた。
    仕方ないよ描いてる人間がホメチヤン大好きなんだもの。

    AWAY,AWAY,AWAY from HOME グレイグ6日目6日目

    俺の淹れた紅茶に砂糖をドボドボ入れるホメロスを見ていたら、視線に気がついた彼が露骨に不機嫌な顔をした。

    「いや、お前が甘いもの好きなのは十分分かったが…あまり、砂糖を入れ過ぎるのはどうかと思うぞ。少し太ったんじゃないか?」

    顔が丸くなった気がする。
    心配する自分をちらと見て、ホメロスは何か言った。分からないが、多分放っておけとかそんなところだろう。
    そうしてホメロスはさっさと視線をテーブルに戻すと、どこからか持ってきた赤い表装の本を開いてペンを走らせ始めた。
    仕事ではなさそうだ。

    「日記か?俺の悪口など書いていないだろうな」

    自分の言葉が伝わったのか、こちらを見上げてちょっと悪戯っぽい顔をしてホメロスが笑った。
    その顔はどういう意味だ。
    そのまま横に立っていると、彼が少し首をかしげて何か言った。まだ何か用かと言いたいのだろう。

    「ああ、いや、実は提案と言うか…アレなんだが、今日の夜は外食しないか」

    あらかじめ辞書で調べた単語を書き留めたメモを見せながら説明する。

    「いくらお前がキノコ好きだといっても、さすがに毎日キノコ料理では飽きるだろう。
    と、言うか正直に言うとな、俺の料理のレパートリーが尽きたのだ」

    元々自分のレパートリーなど数えるほどしかない。
    自分一人の食事なら適当でも構わないが、やはり人に食べさせるとなるとそれでは気が引ける。
    自分なりに色々レシピを調べたりして何とかやってきたが、ちょっと、そろそろ、限界が来た。

    「あ、もちろん代金は俺が払うぞ。家政婦料金には食事代もはいっているからな」

    メモを見せながら必死に説明するとホメロスは俺に分かる言葉で「分かった」、と返事をした。
    ちゃんとこちらの意図は伝わったようだ。
    こっちは相変わらずデルカダール語は分からないしジェスチャーと辞書に頼る日々だが、向こうはなんとなくこちらの言っている言葉を理解しているようだ。
    日に日に話せる言葉も増えている。地頭の良さの違いだろうか。

    「この店には俺も何度か行ったことがあるが、なかなかだぞ。お前の口にも合うといいんだが」

    彼は家でゆっくりしたいのだろうが、折角なのだからなにか旨いものも食べてほしい。
    レパートリーが尽きたのも本当だが、こっちも本心だ。







    『大人2人』で予約したからか、店ではキャンドルの灯されたロマンチックな窓際の席に案内された。
    『大人の【男】2人』と言えば良かったか、と後悔したがもう遅い。
    席に着いて、そっとホメロスの様子を伺うと、彼は珍しそうに店内を観察していた。
    気にしていないようだ。
    勝手なイメージだが、高級な店に慣れているホメロスからしたら、田舎のレストランは物珍しいのだろうか。
    これでも、知っている店の中では一番ちゃんとしたところを選んだつもりなのだが。
    ホメロスが滞在するコテージから車を20分ほど走らせたところにあるこのレストランは、自分からしたら何か特別なことでもない限りはこないような、ちょっと改まった店、という位置づけだった。
    本当はいつも行っている安くて旨い店に連れていきたかった。
    ただ、そこは安くて旨いがついでに「古くて」そして「汚い」。
    それがまたいい味を出しているのだが、なんとなくそこにホメロスを連れて行くのは気が引けた。
    洗練されたこの男相手に、かっこつけたかったのかも知れない。

    「なにか食べたいものがあれば言ってくれ」

    向かいに座るホメロスにメニューを渡したが、中を一瞬ちらっと見ただけで、すぐに戻されてしまった。

    「俺のおすすめでいいか?」

    俺の言葉に、ホメロスは首を縦に振った。
    それなら話は早い。
    店員を呼び止めて適当に注文をする。
    本当は食べたいが、キノコ料理はなんとなく避けた。
    そうして粗方注文が終わったところで、向かいに座る男にメニューをひったくられた。
    ホメロスはメニューを指さし、何かを店員に頼んでいる。
    店員は愛想よく頷くと、メニューを持って下がっていった。

    「どうした。なにか食べたいものでも思いついたのか?」

    聞いてみるが、ホメロスは答えず窓の外を眺めている。

    「デザートでも頼んだのか?それは食後でもいいと思うぞ」

    もしかしたら、甘いものが好きな人間は食前にもデザートを食べるのだろうか。
    まぁ、彼が何を頼んだかはすぐにわかるだろう。
    俺はホメロスと一緒になって窓の外を眺めた。
    夕闇の田舎の風景だ。

    「今はまだ遠くの風車が見える程度の暗さだが、もうじき真っ暗になる。
    そうすると、星がきれいに見える。都会の夜景とは違うだろうが、悪くないぞ」

    ここに来てから、彼は星空を見る機会があっただろうか。
    もしまだなら、帰る前に是非見てほしい。
    そんなことを考えていると、店員がやってきた。手には見るからに高そうなワインを持っている。
    しかもボトルだ。ボトル?

    「あれを頼んだのか!?」

    思わず立ち上がる。
    ちょっと待て。代金は俺が持つんだが。
    隣の空席に置いてあったメニューを手に取って確認すると、それほど高い銘柄ではなかった。高いは高いが。
    ほっとしたのも束の間、それより大きな問題に気が付いた。

    「ちょっと待て、帰りの運転はどうするんだ」

    ホメロスはまるで何でもないことのような顔をして、ポケットから出した車の鍵を俺に投げてよこした。

    「俺が運転するのか?」

    ということは俺は飲めないのだな。
    そして、お前は一人でそのボトルを空ける気なのだな。
    ああ、グラスはひとつでいい。もうひとつは下げてくれ。
    がっくりと肩を落とし席に座り直す俺を見てホメロスは楽しそうに笑っている。
    何がそんなに楽しいんだ。



    そうして酒が入って更に上機嫌になったホメロスはやたら饒舌になるわ途中から鼻にコルクを詰めようとするわで大変だった。

    この男、口も悪い(多分)が、酒癖も悪い。







    「おい、ホメロス。着いたぞ」

    車をガレージに入れ、助手席に声をかけるが返事はない。見てみれば、完全に寝ている。
    店を出た直後はご機嫌で鼻歌のようなものを歌っていたが、途中から静かになったので、まぁ予想はしていたが。

    「仕方ないな…」

    車を降りて、助手席のドアを開ける。
    シートベルトを外して自分に凭れ掛からせるようにすると、ホメロスが微かにうめいた。

    「ほらホメロス、ちょっとでいいから起きてくれ。」

    流石に大人の男をここから引きずり出すのは至難の業だ。

    「立って歩かなくてもいいから、せめて俺につかまってくれ。頼む」

    背中をぽんぽんと軽くたたくと、多少意識が覚醒したのか、ホメロスが俺の首に腕を回した。

    「よしよし。いい子だ」

    腰を痛めないように慎重に体勢を整えながら助手席からホメロスを引っ張り出すと、その体を何とか抱え上げた。
    体力には自信があるが、酔っ払ってほぼ意識のない成人男性をいわゆるお姫様抱っこするのはかなりしんどい。
    背負ったほうが楽だろうが、この酔っ払いにこれ以上の協力は望めないだろう。
    俺の首にしっかり腕を回してくれているのが唯一の救いだ。
    車のドアを足で閉め(へこんだかもしれない)、姫を抱えたまま玄関へ向かう。

    ドアの前まで来て、大きな問題にぶち当たった。

    「おいホメロス、家の鍵はどこだ」

    当然のように返事はない。
    まあ、鞄は持っていないから、ポケットだろう。
    ホメロスを抱えたままなんとか手だけを動かして彼の服のポケットを探る。
    尻のポケットにそれらしき感触を見つけて、落とさないように体勢を調整しながらポケットに手を入れる。
    くすぐったいのか、ホメロスが体をもぞもぞと動かした。

    「…あ、ん…」
    「…おい、耳元で変な声を出すな」

    なんとか鍵を取り出し、ドアを開ける。
    あと一息だ。
    寝室は2階だがさすがにこの状況で階段は厳しい。
    そうなるとリビングのソファー一択だ。
    リビングまで姫をお連れして、その体をソファーに下すと、思わずふう、と声が漏れた。

    「おいホメロス、もう離していいぞ」

    声をかけるが、俺の首に回した腕が解かれる気配は全くない。
    ついでに耳元では規則正しい寝息が続いている。

    「ホメロス、起きてくれ」

    起こすのは忍びなかったが、このままではこの体制で朝を迎えることになってしまう。
    ホメロス、と再度名前を呼んで背中を軽くたたくと、不意に首に巻き付いていた腕が緩んだ。
    密着していた体が少し離れると、灯りのほとんどない部屋でも分かるくらいに焦点のあっていない金色の目が近距離からこちらを見ていた。

    「起きたか?今、ブランケットを持ってくる。それから、もう一度寝る前に水を飲んでおいたほうがいいぞ」
    「……」

    俺の首にまだゆるく腕を巻き付けたまま、ホメロスは相変わらずぽんやりした顔でこちらを見ている。
    その姿に、昨日と同じ心配が頭をもたげてきた。
    このまま置いて帰って大丈夫だろうか。
    今この状態で不届き者に襲われたら碌に抵抗などできないのではないか?
    そうすると今日こそは泊って行った方がいいのではないか…

    「なぁホメロス、昨日のこともあるし、今日は泊まっていこうかと思うのだが」

    取り敢えずこの手を離してくれないか、と首に回されたホメロスの腕に自分の手を添えると、ホメロスは何故か嬉しそうに微笑んだ。







    ちょっと待て。なんでそこで目を閉じる。



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