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    miya_ko_329

    @miya_ko_329
    完成できなかったネタはおもむろに増えてたりします。

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    miya_ko_329

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    Xrd~STのどこか。第一連王捜索隊の第二連王と、つかの間の逢瀬のカイデズ。

    GG/レオとカイデズ 第一連王が見当たらない、と城内職員がそろそろ心配し始めた。およそ彼を害することのできる人類は非常に限られている。平時の城内においては皆無と言っていい。まず心配の必要はないと思いつつレオは彼らを宥め、少し席を外すことを告げて見当を付けている場所に進む。行政エリアを抜け、王のプライベートエリアへ。人の私的な時間にまで足を突っ込むことは本意ではないが、そう言っていられる状況でもない。足を進め、見えてきた扉には複数の門衛が立ち侵入者を拒む。だがそれを第二連王だと認めると張りつめていた空気を少しだけ緩めた。
    「あいつはここか?」
    「三十分ほど前にお入りになりました」
     若い門衛は遠慮がちに答え、レオは軽く息を吐き足を踏み出す。わずかに残されたカイの自由を、これ以上許すことのできない時間の無さと状況を恨むしかない。少々の罪悪感が過るが、これも給料の内と割り切ることにした。築年数の割に古めかしいデザインの扉は重い音を立てて開かれた。見た目は単なる扉だが、その実厳重なセキュリティが敷かれている。組み込まれているであろう複雑怪奇な術式はレオの理解の範疇外だった。これを突破できる人類こそ存在しないのではないだろうか(しかしこの数ヶ月で人類の枠の外のような人類に散々出くわしてしまったので、油断は禁物だ)。それほど堅牢に守られた扉の向こう。果たしてその先は緑萌ゆる園であった。空調の行き届いた屋内とは違う自然そのものの空気。幸いなことに今日は暖かな日だった。やわらかな陽射しが程良い熱を持ってレオを迎え入れる。色彩豊かな花々が咲き誇り、小鳥が遊ぶ。間違いなく現実でありながら、世界から隔絶された楽園を思わせるのは、ここがあまりにも完成された空間だからだろう。それぞれが完全な調和を以てこの場を作り上げている。
     しかしその美しの園から彼を引きずって来なければいけない。気が進むものではないが、それが王の一人たる自分の責務である。
     庭園を進みゆく大柄な体躯に一瞬身を固くした侍女が、その正体に気が付くとしずしずと頭を垂れる。軽く手を挙げ「邪魔するぞ」と一応断って最奥の開けた場所へ向かうと、紺碧の長い髪とそれを結んでいる大きな黄のリボンが見えてくる。正確にはその女性の後ろ姿が。
    「木陰の君」
     なるべく声を潜めてレオはその名を呼ぶ。この庭園ではいざ知らず、彼女の存在は隠されているはずのものだったので。もっともそれも『公然の秘密』程度のものになってしまったのかもしれないが。
    「レオさん」
     柔らかな表情で振り向く木陰の君ことディズィー。花のような笑みを浮かべる彼女を誰がギアだと思うだろう。世間一般の感覚で言えば恐怖の対象であるが、ディズィーの纏う雰囲気はそれともっともかけ離れたものだ。可憐で慈愛に満ちている。
    「すまないな。貴女のご夫君の捜索願が出されてしまった」
    「あら……申し訳ありません。あまりにもよく眠っているので起こすのも忍びなくて」
     その気持ちはレオにもわかる。ディズィーの膝を枕に安らかな寝息を立てているのは、イリュリアの第一連王カイ=キスクである。この世で最も多忙を極めていると言っても過言ではない男だった。
    「この数日まともにベッドで寝た時間を数えるのも馬鹿馬鹿しいくらいだったからな。……寝られる状況でもなかったのも事実だが、人間眠れるときには眠っておくのが一番だ」
     自らの経験則からレオはそう思っている。はい、とディズィーも小さく頷く。
    「それにしても、……っかー、幸せそうな顔しやがって」
     印象的な碧い瞳は閉ざされ、目蓋は長い睫毛に縁どられている。
    「カイさんがこんなに穏やかな顔で眠っているのを見るのは、とても久しぶりです」
     ディズィーの指先が触れるか触れないかの柔らかさでカイの額をなぞる。
    「私が封印される前は、眠っているときでさえ眉間に皺を寄せていましたから」
     伏せた紅の瞳が憂いを帯びる。ギアの証でもあるそれは、だが今は愛する夫を案ずる伴侶のものに他ならなかった。カイの心労の原因は彼女とその子ども、つまり自らの家族の出自ではあるが、彼を悩ませるのは家族がギアの血を引いていることではなく、人類とギアが共存する道筋を見つけることの困難さゆえだった。そんなカイの心情をレオは知っている。カイを連王の座に縛り付けたお偉方は、限界まで彼を飼い殺しにして、用済みと目せば躊躇いなく切り捨てるだろう。そのような、カイを追い詰める格好の材料である事情を打ち明けられたのは、仮にも共同統治者、同僚、あるいは戦友として信頼されているのだと受け取っておく。
    「貴女を陽の当たる場所へ早く連れて行きたいのだろう」
     レオが眠り続けるカイを見ながら呟けば、ディズィーはふわりと柔らかく笑む。
    「私は今も十分幸せですよ」
    「こいつは結構欲張りなのでね。何にも憚られることなく、自由に貴女と連れ立って歩きたいのだろう」
     それを聞いたディズィーは少しだけ目を見開いて頬を朱に染める。少女のようなその様子にレオは表情を緩める。友が禁忌を犯してでも選んだひとは、彼に相応しく清らかだ。
     彼がかつての仇敵であったはずのギアと共に生きようとしたのは、最愛の人――一人の少女に出会ったからだ。あらゆる意味で人間離れしていたカイを、ただ一人の人間にしてしまったのは、ギアであるディズィーだった。彼女がカイの弱点であり、同時に強さの根源でもある。世界を変えてしまうまでの決意をカイにさせたのは、ディズィーとシンだ。それほどまでにカイは家族を想っている。それだけは疑う余地のない真実だった。
    「……ディズィー?」
     閉じられていたカイの目蓋が震え、次いでゆるゆると開かれて視界に入る妻の名を呼ぶ。まだ夢と現を行き来しているカイの愛しいひとを呼ぶ低い声は無防備でどこか甘さを孕んでいた。
     あ、コレ、第一連王ファンクラブ会員が黄色い悲鳴あげながらぶっ倒れるヤツ。とレオは妙に冷静な思考で横目に見る。非公認とは言え、その活動領域はイリュリア城内の全域に及んでおり、決して侮れない一大勢力と化している。
    「はい。おはようございます、カイさん」
     ディズィーを見て微笑んだカイは、しかし即座に自分が置かれている状況を理解した。
    「……レオ?」
    「おう、ちょっとばかり時間オーバーだ。悪いが強制連行させてもらうぞ」
     ややばつの悪そうに、けれどそこは流石に王の称号を冠する者か、思考を切り替え体を起こした。
    「……まずい、そんな時間か」
     解いた長い髪を整える間もなくカイは慌ただしくも「また後ほど」と優しくディズィーに告げて足早に彼の戦場に向う。それを追う形でレオも足を城内へ向け、去り際にディズィーに別れを告げる。
    「それでは木陰の君、ごきげんよう」
    「はい、お気をつけて」
     彼らの姿が見えなくなるまでディズィーは手を振っていた。
    「悪いな。わざわざ探しに来てくれたのか」
     羨むばかりの美しい金の髪を手早く、しかしきっちりと整えてカイは王へ戻っていく。
    「いや……、めずらしいこともあるもんだと思ってな」
     レオが知るカイ=キスクは、およそ定刻に遅れるという発想の無い男だ。おおよそのことにおいてルールを順守するが(ただしそれは常識の範囲内のことであって、そこから外れた事象に関してはその限りではない)、数少ないそれを破った例が色恋沙汰だったというのは、なかなかに興味深いことだった。
    「顔を見たら気が緩んだのかもしれないな。……我ながら危機感が足りない」
     苦々しく柳眉を寄せて苦笑する中にも、わずかな逢瀬の幸いをかみしめる様子があった。
    「まあとりあえずの危機は回避されたけどな」
     そしてそれが去った後は、また違う激動が待ち受けていることも知っている。
    「今の内だな。また寝てる暇なんざなくなる」
    「聖戦の頃に比べたらいくらかマシかな」
    「そりゃあの頃に比べたらな」
     不意に何年も前の夜のにおいが鼻についた気がした。腐った肉や錆びた鉄のようなそれを、麻痺した嗅覚はもはや異臭として感知しなくなっていた。そういう場所と時代に生きていた。
    「……だいぶ違うだろう」
     そう言いながらレオは隣の同僚を見遣る。変わったのはカイも同じだった。レオの知るカイは、比喩ではなく戦場で刃を抱いて眠るような戦士だった。まだ少年と言って差し支えの無い歳だったにもかかわらず。
    「そうだな、今の方がずっと良いに決まっている。帰る場所が決まっているからな」
     まるで今日の空のように、明るく透き通った表情でカイは笑った。
     いつから彼はそんな表情をするようになっただろうか。
    「お前……」
    「うん?」
     いや、とレオは頭を振り、何とはなしにカイの後頭部、あるいはしっぽのように揺れる髪に目を遣る。
    「それ、随分伸びたよな」
    「ああ、これか。いい加減切るかな」
    「そこまで伸ばしておいて今か?」
    「別に伸ばしていたわけでも無いんだがな……」
     そうしてカイはしばらく自分の髪を一房掴んで眺めていたが
    「うん、今度時間が取れたら切ろう」
     特に感慨も無く、そう決めたらしかった。
    「……お前、本当に思い切りが良いよな。躊躇いとか無いのか」
    「惜しむものでもない。どうせまた伸びてくるのだし」
     手遊びにしていた髪を離し、カイは言う。
    「本当に大切なもの以外は、案外手放せるものだ」
    その手放せないものが抱えきれないほど増えてしまったことを、自覚しているだろうか。
     まあ落としそうになったら拾うくらいはしてやってもいい、と第二連王は、おら急げ、と同僚の背中をやや強めに叩く。
    「……もう少し手加減してくれても良いと思う」
     割と本気で恨みがましい視線を寄越された。
     ああ、そういう風に言えるようになったのだな、とあの頃の少年の面影を残したまま、あの頃には見せなかった表情を見せる彼の頭を、軽く叩いてやった。
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    miya_ko_329

    CAN’T MAKE2ED後。いろんなひとのはなしを経て約束の場所にたどり着く2主が書きたかった。
    幻水/2主人公 僕らはいつも背中合わせの関係だった。
     小さい頃からずっとそばにいたから見るもの聞くものは同じものだった。けれど彼は僕みたいに前ばかり見ていないで、後ろのことも時々振り返って見ているような子だったので、「ヤマト、ほら落としてたよ」とポケットか何かに入れておいた僕の大事なものを拾い上げてくれるのなんてしょっちゅうだった。ナナミも「あー! またヤマト落し物して!」なんて言っていたけれど、自分だって彼に落し物を拾ってもらったことは一度や二度ではないはずだ。
     ともかく、僕と一緒に歩いていたはずの幼馴染は、前しか見えていない僕が見落としていたものもきっと多く知っていたはずなのだ。


     ハイランド皇都ルルノイエ陥落から数日が過ぎ、デュナン城の人の出入りは一層激しくなる。傭兵としての契約を終え出立する者、戦争終結に伴う事務処理のため招聘された文官、物資を搬出入する業者……コボルトやウイングボートも含むありとあらゆる人間がこの古城を旅立ち、あるいはたどり着く。とにかく人の往来が激しいので、そのどさくさに紛れてしまえば出るのはそれほど難しいことではなかった。城内の中枢はさすがに警備が厳しいが、商店が軒を連ねるエリアはほぼ誰でも出入りが可能だ。
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    miya_ko_329

    CAN’T MAKE書きたいところだけ(ガエリオとヤマジンの辺り)。CPメインじゃないはなしだったが、結局ガエジュリになったった。
    鉄血/ガエリオとジュリエッタ 永遠ではなく、けれど不変の。

     寒さは嫌いではない。互いの身を寄せ合うための格好の口実になるから。
     別に訳もなく引っ付いても許されるだろうけれど。

     温かさを保証する柔らかな寝具に包まれながら窓の外を見遣る。ほとんど白に近いような薄い青の空と、鈍い色の常緑樹や裸木の木立に目を遣る。温暖な海域を漂うことが多いヴィーンゴールヴにある自宅から見える景色と、色も空気も何もかもが違う。すべての景色の彩度は低く、太陽光は薄い雲の向こうから射していてどこか遠く感じる。慣れ親しんだ潮の匂いを多く含んだ大気はここにはなく、湿った土や木々を感じさせるものが取り巻いている。馴染みのないはずのそれらは、けれど決して不快ではなかった。たとえ自立が叶わない身ではあっても、大地に足を下ろしているのだと実感するからだろうか。宇宙空間とは明らかに違う圧倒的な安定感。それでいて絶えず変化する景色。薄い雲が流れて太陽がさっきよりもやや強い光を地上に落とす。一瞬たりとも同じ風景は無い。移ろう時間を感じられるのは大地の上で生きているからこそだ。あれほどに長く星の海に身を置いていても、結局自分が帰る場所はこの惑星の大地だった。
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