痛々しくて愛くるしい◇◆──────────
はっと目が覚めて、飛び起きた。ここはベッドの上で、布団も天井も壁に掛けた時計も見覚えがある。よかった、ちゃんとうちに帰ってきたんだ。スマホで時間を見ると、もうすぐ夜中の三時だ。LIMEには酔っ払ったオレによる連投メッセージが残されていて、居た堪れない気持ちになる。
隣に寝ているのは莇だ。遅くなってごめんって、ちゃんと直接言ったかな、オレ。今回こそは酔いすぎないようにしようと思っていたのに、結局飲んだ後の記憶が曖昧だ。
そういえば今日、というか昨日は、莇と久しぶりにしようと約束をしていたんだっけ。久しぶりといっても三日ぶりだけれど、オレにとっては二日以上空くのは「久しぶり」のうちに入る。
もしかして、準備してくれていたのだろうか。だとしたら本当に申し訳ない。せめて寝顔にキスだけでもしようと思って、莇の鼻まで隠す掛け布団を捲った。
莇は裸だった。
そしてついでに、オレも一糸纏わぬ姿だった。
(もしかして、オレ、酔っ払ったままやっちゃった!?)
万が一ゴムを付けないでしてしまっていたら大変だ。暗闇の中、ごめんね、ごめんね、と心の中で謝りながら、手さぐりで莇のお尻を割り開き、穴の中に指をそっと挿し込んだ。
「ん…………っぅ…」
悩ましげな声は寝言だった。指の根元まで挿れても、精液のどろっとしたあの感触はない。しかしローションの滑りが少しだけ残っているのと、難なく指を挿入できたあたり、してしまったというのは残念ながら事実のようだ。
記憶がなくなるほど酔った状態の自分のことを信用できないオレは、念のため莇の身体を清めることにした。ベッドを抜け出して、下着だけ穿いて蒸しタオルを用意する。
寝室に戻り、電気を点けた。起こしてしまうかもしれないと思ったけれど、深い眠りに入っているのか、莇は「うぅ」と唸っただけで、目を覚ますことはなかった。
布団を剥いでいくと、莇の裸体が露わになる。肩や肩甲骨に鬱血痕があって痛々しい。シーツの上に使用済みのコンドームがへにゃりと投げられていて、中から溢れた液体がシミを作っている。それを摘んでゴミ箱へ放った。
完全に布団を取り去ったとき、莇のお尻を見てオレは目を疑った。
異常に赤いのだ。右も、左も。
手のような形もついている。その痕に自分の手を合わせると、どう考えてもこれをやったのはオレだとわかる。オレ以外がやっていたらそれはそれで別の問題が発生するが。
(叩いた…ってこと? うそ…………)
ベッドにバスタオルを広げて、莇をその上にゆっくりと仰向けに転がしたが、お尻が下になると痛いだろうと気づいて、すぐに横向きにした。
下腹に精液が付着したまま乾いている。これは多分、莇自身のだ。蒸しタオルを当てて、そっと拭き取っていく。臍の中をくるりと拭くと、ぴくん、と腰が震えた。身体を綺麗にしてあげなきゃいけないのに、無抵抗で横たわる莇を見ていると、いたずらしたくなってしまう。
我慢しろ、我慢しろ、と自分に言い聞かせて、なんとか汚れているところを拭い終わった。
赤くなっているお尻をどうしようかと思って、オレは浴室に行ってボディクリームを持ってきた。いつも莇が風呂上がりに塗っているやつだ。莇をうつ伏せにして、小さなお尻にクリームをそっと塗り込んでいく。赤い部分が熱を持っていて、白いクリームはすぐに温まって溶けていく。
服を着ているとお尻がないんじゃないかってくらいに胸から腿までストンと一直線なのに、裸になると確かにそこに小さな丘がある。しかも今、そこだけが赤くなって目立つし、今しがたオレが塗ったクリームの香りがする。
これ以上はまずい、と思いながらも、オレはその香りに引き寄せられて顔を近づけた。鼻先が触れて、熱が伝わる。心臓がどく、どく、と脈打った。すん、と吸うとフローラルの香りと莇自身の香りが混ざって鼻腔に入り込んできた。
(や、やば)
オレは急いで莇の身体に布団をかけ、トイレに駆け込んで自身を慰めた。排出された体液が思ったより薄くて、一体何回出したんだと思ってゾッとした。
◇
同じようなことが、続けて二回あった。
職場の人とお酒を飲んでいたところからの記憶がなくて、気づいたらうちのベッドに裸で寝ている。飛び起きて電気を点けると、莇のお尻が赤くなっている。
目覚めた莇には、そのたびに頬っぺたを抓られて、オレはもうしません、と涙目で謝った。
さすがに三回目の後は、もうオレはしばらく職場の飲み会でお酒を飲むのをやめよう、と決めた。
「あ、オレ、今日ウーロン茶オンリーで!」
「兵頭、飲まないの?」
「いやー、実はこの間、飲みすぎて帰ったら同居人に迷惑かけちゃって!」
「ゲロったの?友達かわいそー!」
「そ、そうなんすよ。だからしばらく禁酒です!」
勇気を出して言ったら、先輩は意外にもあっさり酒瓶を下げた。「飲み会で酒を飲まない」というのがこんなに簡単だとは知らなかった。お酒は好きだけれど、莇にひどいことをしてしまうのならやめた方がいい。
今回は一滴もアルコールを入れずに済んだ上に、二次会を断ることに成功した。真っ直ぐな足取りで帰路につけることの素晴らしさに感動しながら、オレは電車の中で莇にメッセージを送った。
【今から帰るね。今日お酒飲んでないから】
今日は飲んでないから何なのか、は書かなかったけれど、どうにか察してほしい。
今日こそはとびきり優しくしよう、と思った。
口には出さないが、莇は優しく抱かれるのが好きだ。奥をぐりぐり押しながら、きもちいいね、と言うと、涙目で頷いて身体を震わせる。オレの方はちょっとだけ我慢が必要になるけど、その方がとろとろになった莇を見られるし、甘えてきてくれることもあるのだ。
「ただいま!」
「おー、おかえり」
もうすぐ着く、と小まめに送っておくと、玄関まで鍵を開けに来てくれるところがたまらなく好きだと思う。
「ご飯もう食べた?」
「ん、適当にな」
「ねーねー、オレお酒飲まなかったよ!今日」
「へー、やればできるじゃん」
頭を撫でられて、情けなくデレデレしてしまう。莇も今日はご機嫌だ。
「お風呂まだだよね」
「ああ」
「一緒に入んない?」
「…っていうのは」
初めてじゃないんだから、わかってるだろうに。
「しよ、ってこと」
莇は少し視線を泳がせてから、小さな声で言った。
「今日、なんもしてねーんだけど…」
オレが両腕を広げると、莇は素直に肩に頭を乗せた。そっとハグすると、ほのかにアルコールの匂いがした。
「いいよ、オレがやってあげる」
「…シラフでやられんのはきつい。俺、先に入ってるから、冷蔵庫に入ってる酒なんでもいいから一缶飲んでから来い…」
「ん、わかった」
莇がタオルを持って浴室に消えるのを見送ってから、オレは冷蔵庫に入っていた度数の高い発泡酒を開けて、中身を全部流しに捨てた。潰した空き缶はわざとらしく放置しておいた。
寝室を整えて、使うものを一通り用意してから浴室に戻り、扉をノックする。返事はなくて、ざばん、と浴槽から上がる音がその代わりだ。
開けると、莇が立っていた。身体はずぶ濡れだけど、髪は乾いたまま。それだけで、これからオレと「する」つもりでいるんだとわかる。
温まった身体はタオルで丁寧に拭いてから、新しいバスタオルを肩に掛ける。タオルごと抱きしめて、「いい?」と聞くと、莇は無言で頷いた。
肩からバスタオルを掛けただけの莇には暖かい浴室の中で膝立ちになって、上半身をオレに預けてもらう。少し勿体無いけれど、床に転がしたシャワーからはお湯を出しっぱなしにする。服を着たままのオレは、浴室の入り口に座って、莇を支えながら「準備」する。
付き合って十年以上ともなると、莇は「準備」を自分で出来るようになって、今ではむしろ自分で済ませることの方が多くなった。多少の苦痛を伴うし、見せるのは恥ずかしいし申し訳ないからだという。
それでもたまに、本当にたまに、こうやってオレにやらせてくれることがある。口にすると怒られるだろうけど、オレはこの作業が結構好きだったりする。
「力抜いて…」
腰を撫でながら、潤滑液を纏ったもう片方の手の指で穴の付近を押したり、軽く引っ掻いたりして刺激する。お尻にはもう赤い痕はなくて、オレは安堵した。
「ふ、ぅ、…………っ」
莇は両手でオレの服をぎゅっと掴んで、浅くなる呼吸を必死に整えている。息を吐いたタイミングで指を1本挿し込み、ゆっくりと埋めていく。
「っ、は、ぁ…………」
根元まで埋まったら、一度抜いて、また奥まで埋め込む。何度か抜き差しを繰り返していると、腰が少しだけ揺れ始めた。
「んぅ…………」
「ごめん、ちょっと辛いね」
「っ、平気…………ぅ、あ…」
「抜くから、息吐いて」
ふー、と熱い息が首にかかるのを感じる。埋め込んだ指を少しずつ抜いて、その間も震える腰を撫で続けた。
「お湯入れるね」
「…ん、」
撫でていた手でお尻を開いた。プラスチックのシリンジにお湯を入れて、その先端を穴に当てる。
「大丈夫だよ、大丈夫……」
ゆっくり、ゆっくり、中身を注入していく。莇の呼吸が浅くなって、肩に顔が押しつけられる。う、う、と苦しそうに唸るのが可哀想だと思うのに、どうしようもなく愛おしく感じられて困る。
お湯が体内に入った。シリンジを床に置き、今度は流しっぱなしのシャワーヘッドを腰に当てて温める。調べたときにはここまでしろとは書いていなかった。でも、こうすると身体が冷えにくくなるし、排出物がすぐに流れるから、莇に負担が少ないと思う。
「出せるかな」
黒髪の頭が頷く。シャワーの音に紛れて、小さな穴からお湯が吹き出した。ぶしゅ、と空気の混ざった音を聞かせるのは恥ずかしいだろうけど、もう少し我慢してもらわなければならない。少し色がついた液をシャワーで流し、オレは大丈夫、大丈夫、と囁きながらお尻を撫でた。
本当に大丈夫なのだ。莇の身体から出るものなら何も汚いと思わない。むしろ莇がちゃんと生きていることが実感できて嬉しいとすら思う。
お湯を入れて、出す、というだけの作業を、時間をかけてあと2回やった。排出されるお湯はすっかり透明になっていた。
「終わったよ。頑張ったね、ありがとう」
「九門…………悪いな」
「ぜーんぜん平気」
バスタオルで下肢を拭いてあげると、莇はようやくオレの肩から顔を上げた。苦痛から解放された安堵感と羞恥で真っ赤になっている。
何気なく脚の間を除いて、オレは思わず口角を弛めた。「それ」が膨れ上がり、しっかりと上を向いていた。
「勃っちゃったね」
◇
「じゃあオレ、シャワー浴びてくるから。ちょっとだけ待ってて」
寝室で莇を寝かせてから言うと、莇は目を見開いた。口には出さないけれど、「今すぐ俺を抱くんじゃないのか」って言ってる。
「ごめん、今日タバコ吸ってた人居たからさ。すぐ戻るね」
「…わかった」
白い身体が冷えないようにタオルをかけて、その上から布団をかける。
「あっ、寝ちゃダメだよ。寝たまま襲っちゃうからね」
「バーカ」
恨めしげにオレを睨む莇の視線には気づかないふりをして、オレは再び浴室に向かった。ローションのボトルはベッドの上に置いたまま。
身体を洗っているだけなのに、さっきここで莇にしたことと、これからしたいことと、今まで見てきた莇の痴態が、全部映像のイメージとして脳内を駆け巡る。そのせいでうっかりというか、当然というか、脚の間に血液が集まって、触ってもいないのにオレの中心はすっかり反応してしまった。
一度抜いてから戻ろうかと思ったけれど、勿体ないな、と思い直し、タオルを腰に巻いて隠した。
「ん…………っ…………っふ、ぅ…………」
寝室に戻って目にしたのは、こうなってたらいいな、と期待した光景だ。
掛け布団は床に落とされたようだ。バスタオルをかけただけの莇は、右手を後ろに回して、くちゅ、くちゅ、と音を立てている。
オレはゆっくり近づいて、火照った頬を両手で挟んだ。莇はびく、と肩を震わせて目を開いた。驚いて半開きになった口にかぶりついて、舌を入れてキスをした。
「ん…………んん、む…………」
鼻から抜ける声が、まるで甘えているみたいに聞こえてエロい。両耳を塞ぐようにすると、より呼吸が荒くなる。後ろに突っ込んだままの指が時折動いて、またぐちゅぐちゅと粘性の音が聞こえる。耳を塞がれてキスの音しか聞こえなくなっている莇には、オレに自慰がばれていることに気づいていないのだろうか。
口を離すと、形のいい唇が唾液で濡れていた。親指で拭って、もう一度触れるだけのキスをする。開いた瞳にはいつものような眼光の強さはなくて、とろんと溶けた視線でオレを見つめる。お酒が回っているせいなのか、キスのせいなのか。後者だったらいいなと思う。
バスタオルを捲ると、莇は白いお尻に自分の中指と薬指を挿し込んでいた。手首を掴んでゆっくりとそれを抜く。二本の指の腹だけがお風呂に入ったときのようにふやけていた。粘液を纏った指を、オレはそのまま口に入れた。
「ぁ、バカ…」
指を根元まで咥えて、付け根に舌を沿わせて、ちゅ、と吸った。莇が眉を寄せるのが見えた。
滑らかなお尻に手のひらをのせると、ぴったり吸いつくような感覚がある。全体的に無駄な肉の少ない莇の身体で、柔らかさを感じられるところ。しかも、ここを直に触れるのはオレだけなんだと思うと興奮する。酔ったオレが叩いてしまったのも、認めたくないが納得はしてしまう。
お尻を割り開いて、その谷間に指先を入れて、指の腹で撫でたり、押したり、短く切った爪の先で穴の付近をかりかり引っ掻いたりしてみる。少し前まで自分の指を二本も咥え込んでいた場所は、期待してひくひく震えた。
人差し指と中指を穴の縁に引っ掛けて広げると、中からとぷり、と潤滑液がこぼれ出した。
「ローション入れたの?」
「んん…………」
すぐ挿れて欲しいんだな、と思う。でも、そうわかってしまうと焦らしたくなる。指を一本、第一関節まで挿れて、小さく動かすと、腰がゆらゆらと揺れて、シーツに皺を作った。
ギリギリまで抜いて、また挿し込んで。それを繰り返して、少しずつ、少しずつ、奥に進めていく。根元まで入ったら、今度は抜き挿しのスピードを速める。莇はこの刺激に弱くて、でも指一本では達することができない。
「ふ…………んぅ……ん、ん、ん、ぅ…………」
快感を逃がそうとしているのか、細長い脚がシーツを蹴った。
指を二本に増やして、またゆっくりとした動きに戻す。前立腺をわざと掠めたときに、ぴくん!と身体が跳ねた。こんなに敏感で大丈夫なのかな、と思うけれど、莇の身体をこうしたのはオレだ。
緩慢な動きに焦れて、横を向いていた莇は徐々にうつ伏せになる。枕を抱え込んで快感に耐えるポーズを取っているが、腰は反って、お尻だけがくんっと上がっている。オレが中を刺激するたびに、さらにお尻が上がって、誘うように揺れる。
「んん…………ん、ゔ…………んぅ」
指が三本に増えた頃、枕に顔を埋める莇は、膝を立ててお尻を高く上げていた。消し忘れた照明が白い丘を照らして、穴から漏れ出した潤滑液が光っている。オレがそのポーズをしろと指示したのではない。今そのポーズをしていることを、わざわざ莇に伝えることもしない。オレの指だけで、莇が快感に翻弄されることしかできなくなる、ということは、オレだけが知っていればいいことだ。
前立腺を強く押すと反っていた背中が波打って、バスタオルは肩の方へ滑っていった。全身を真っ赤にしているし、もはや防寒は必要なさそうだ。オレはバスタオルを取り払って、莇の身体が作るアーチの下に差し込んだ。
「っくも、ん…ぅ…」
「…なに?」
「なんか、言えよ……っあ、」
「辛くない?痛かったりしない?」
莇は首を左右に振る。こんなにお尻を突き出して、痛いわけがない。
「ん……ぅ、い、れ…」
「どした?」
「っどしたじゃ、ねーよっ、ぁ、あ…」
指をゆっくりと抜いていくと、それを追うように腰が動くのがかわいい。もう一回突き刺したい気分だけど、オレの方も限界だ。
敷いたバスタオルで指を拭いて、コンドームの封を切ると、その音に反応したのか、高く上げたままの腰が少し動いた。ナントカの犬っていうんだっけ、こういうの。
両手でお尻を掴んで、親指で左右に開いた。咥えるものがなくなった穴がひくひく痙攣しているのが見える。
ここに、入る。今から。
心臓がドクドク脈打って、顔が火照る。
オレのを突き刺して、この白いお尻を思い切り叩いたら、赤くなって綺麗だろうな、と、思う。
「くもん、ぅ…ぃ、いれろ、よ……っぁ!」
莇の声でハッとした。そう、今日は優しく、優しく…………
先端を穴に触れさせただけで、突き出していたお尻が逃げようとした。オレはすぐに腰を掴んで引き寄せる。ハァ、ハァ、と荒くなる自分の呼吸をどこか遠くに感じながら、震える手で反り立つ性器を掴んで、小さな穴に押し込んだ。
「は、ぁぅ…………んんん…っ」
奥へ、奥へと進めていくと、堪えるような籠った喘ぎの中に、快感を逃がす高い声が混じるようになる。オレは莇のこの声がたまらなく好きで、これを聞くだけで暴発しそうになる。
「あざみ…ぃ…………入っちゃった、ぜんぶ」
「ん…………」
「動きたいんだけど……この体勢でいい?」
「んん、」
オレは莇の腰を抱き抱えて、奥に挿したまま押しつけるように揺さぶった。
「っ!はぁっ、ぁ、あ、あ、あ、あぅ、ぁー、あ…………〜っ」
体重をかけると、立てていた膝がずるずる滑っていく。手探りで莇の性器を見つけて、その先端をバスタオルのパイル地に擦り付けた。
「んん⁉︎ ばか、ゃ、やだ、ぁ、、むり、むり、ぃ、ぁっ」
「きもちい?きもちいね、あざみ、出しちゃいな」
びくん、びくん、と手の中の性器が震えて、バスタオルを粘液で濡らす。その度に脈打つ背中はオレが押さえつけた。
強い刺激から逃れようと腰を引くと、オレの性器がより深く刺さってしまう。逃げられなくなった莇は髪を振り乱してイヤイヤする。オレはもう片方の手でお尻を撫でてあやした。
「やだ、やだ、うう、…っ、〜っ」
「ん、やだね、つらいね?莇、どう、したい?」
「ぁ、ぁ、あ、や、嫌、ぁ、」
「教えて、オレに、っ、あざみ、」
莇が顔を上げて、ヒュッ、と息を吸った。
「ぅ、う、なん、でっ、今日、、」
「ん〜?」
「ばか、ばかくもん、っ、〜、あ、もう、嫌だ、〜っ」
莇が顔だけこちらに向けた。涙で濡れた瞳でオレを睨んで、お尻に触れているオレの手を掴んだ。
「た、た、けよぉ…………っ」
「えっ」
なんて言ったの、莇。
「じれったい、んだよ、今日…っ!飲んで、ねーだろ…………!」
「あ…ばれた?」
羞恥で真っ赤になった顔で、莇は訴える。
「足りない……っ、ばか、お前のせい、だ、!」
「いいの?叩いて…痛いよ?」
「んん、痛く、しろ、よ…………!」
頭がくらくらした。オレは背中にキスをして、「ごめん」と言った。
「オレのせいだね。でも今…叩いてって、莇が言ったからね」
莇がこくりと頷いて、シーツに黒髪が擦れる音がした。
オレは覆いかぶさっていいた上体を起こして、莇の背中に真っ直ぐ入った筋を視線でなぞる。まるで掴むためにあるような細い腰、そこからほんの少しだけゆるやかな曲線を描いて、その先は今、オレの下腹部にぴったりとくっついている。
小さなお尻を手のひらで包む。指先に力を入れると少しだけ沈んで、その柔らかい感触がオレの頭をおかしくする。
大きく息を吸って、吐いた。
パシン!
「ッ!」
「んぐっ…」
衝撃で穴が締まって、オレも唸り声をあげてしまった。下半身にずくん、と電流が溜まる。我慢できなくなって、激しく抜き差しした。
「ぁ、そこ、ぁ、ぅ、んぅ、〜〜っ!」
片手を振り上げて、汗でしっとりと湿るお尻にぶつけると、莇は首を反らせて痛々しい悲鳴を上げた。
「ぁっ!」
痛そう、可哀想、でも、すごくかわいい。
興奮が背中を駆け抜けて、身震いした。もう止まらない。左右のお尻を断続的に、力いっぱい叩いた。
「ぅッ!いた、痛いッ、っ!ぁっ!はぁ、はぁ、ッ!…ぁ、はぁ…………っ、」
白かったお尻が赤く染まっていく。そこを鷲づかみにすると、莇はシーツを握りしめて叫んだ。
「ぁ〜〜〜〜ッ、んぅっ、〜〜〜!」
びくん!びくん!と全身を震わせている。オレはまた莇に覆いかぶさって、肩にキスをした。
「はぁっ、あざみ、あざみ…」
「ぁ……あ…………」
「お尻、真っ赤だよ…かわいいね、莇……だいすきだよ」
腕を巻き付けて、達したばかりで痙攣が止まらない身体を押さえ込む。オレは背中に歯を立てて、熱い息を吐きながら腰を動かした。
「んぐぅ、ぅ、むり、むぃ、ぅ、んんん、ん!ん!や、ああ、あ…〜〜っ」
「っ、ふぅ〜〜ッ、ふ、う゛…………っ!」
激しい絶頂に、思わず両目をギュッと瞑った。
「っ…………はぁ、はぁ…………莇、大丈夫…?」
「ん…………悪い、今日はもう、無理…」
「へへ、オレも…………」
下に敷いたバスタオルは、一部がびしょびしょに濡れていた。今日はあんまり触ってあげられなかったな、と思って、乾いているところで莇の性器を軽く扱いてあげたら、「ひゃうんっ」と子犬みたいな声をあげて射精した。
お互いに息を整えて、裸のまま抱き合って、ベッドの上で何回かキスした。さっきまで暴力的なセックスをしていたなんて、自分でも信じられないくらい甘ったるい時間だった。
「どうしてくれるんだよ…………」
「なにが?」
口を離すと莇がため息混じりに言った。
「ヘンなクセついたかも…」
「お尻のこと?なんで?すげーエロくてかわい…痛って!」
莇が長い脚でオレを蹴った。
「バカ、責任取れ」
「はぁい、一生責任とりまーす!」
オレが茶化すと莇の表情が険しくなって、口が尖った。その口に音を立ててキスしたら、莇は吹き出して、また「バカ」と言った。
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