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    nkmr_9aza

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    お題箱より「はじめての対面座位」
    〜完〜
    注意 多めに喘ぐ攻めのくもんくん ゴムしてない 莇がけっこう乱れる
    #ビストロナカマル

    DON'T STOP 尻ポケットに入れたモノを見られないように気をつけて、九門は後ろ手でドアを閉めた。
     ここは106号室。莇の部屋であり、古市左京の部屋でもある。今日は左京が銀泉会に用事があるそうで、今はここに居ない。莇によると明日の夕方まで寮には帰らないらしい。
    「ね、ねぇ、本当に帰ってこない?」
     九門は疑り深く言う。そうならざるをえなかった。
     数週間前、九門は同室者が夜勤のアルバイトに行くと言っていた日に莇を203号室に呼んだ。それなりにいい雰囲気になって、キスをして、莇の服に手をかけたとき、「シフト間違えた!」と窓から三角が帰ってきてしまったのだ。
     結局その日は三人で夜な夜なトランプをしてそれなりに盛り上がり、日付が変わる前に眠った。
    「あ?…ああ。予定はキモいくらいきっちりしてっからな、クソ左京のやつ」
    「ああ…たしかに想像つくけど…」
    「万が一帰ってきても、入ってこねーだろ。今日九門こっちで寝るって言ってあるし」
    「…そうなの?」
     あんなことがあっても莇は九門を部屋に招いてくれた。九門が泊まることを左京に報告までしていた。莇に恥ずかしい思いをさせてしまったことをどう謝ろうかずっと考えていた九門にとって、それはこの上なく嬉しいことだった。
    「左京さん、なんか言ってた?」
    「なんかって…お前が泊まることに関して?」
    「う、うん」
    「特に何も…『おう』って」
    「そ、そっか…」
    「あと、ちょっとニヤついててキモかった。俺にダチがいることが嬉しいみたいだからな、左京のやつ」
     部屋の片隅を見ると、左京の掛け布団と枕が丁寧に畳まれていた。九門が泊まりに来ると聞いて、わざわざ布団を下ろし、ベッドを空けてくれたのだろう。それを見て九門は少しだけ胸が痛くなった。
     これからしようとしていることを、やっぱりやめておこうか、と思いかけたとき、莇が振り向いた。
    「まー、もう『ただのダチ』じゃねーけどな」
     眉を下げて照れくさそうに微笑む莇が、九門の心臓をきゅっとしめつけた。蛍光灯で照らされているだけなのに、どうしてこんなに美しく見えるのだろう。
    「………なんか言えよ、恥ずいだろ…っ、うわ!」
     九門は莇に飛びついた。両腕でぎゅっと抱きしめると、ボディソープの香りがする。肩に顎をのせて、温かい首筋に頬ずりすると、莇が「おい」と九門の後頭部を叩いた。
    「莇〜、好きだよ…」
    「ん」
    「チューしていい?」
    「…………ん」
     白い頬を両手で挟んだら、思いのほか高い温度が九門の手に伝わった。顔を近づけると素直に目を閉じるのがかわいいと思う。九門より少し高い位置にある唇に、そっと自分の唇を合わせた。



     電気を暗くしてから莇のベッドに2人で上がって、向かい合って座った。そこで何度かキスしたあと、莇がぽつりぽつりと話し始めた。
    「…こないだ、途中だっただろ」
    「うん…ごめんね、ほんとに」
    「気にしてねーよ。気にしてはねーけど…その、途中だったからちょっと、なんか…ずっとムズムズしてて…だから………」 
     全身の血がものすごい速さで巡るのを感じた。あの莇が、九門を誘っている。本人は誘っている自覚などないだろうけれど。
    「ムズムズしたの…?」
     拙い言葉をおうむ返しすると、莇はわずかに頷いた。
     あの日のあとも、毎日一緒に登下校していたし、休みの日に何度か遊びにも行った。もしかしたら、莇はその間にも九門と触れ合うことを考えたかもしれない。九門がいつも考えているように。
    「どのへんが、ムズムズする?」
    「言わなきゃダメか…?そういうの…」
    「じゃあ、触ってみて。どこに触ってほしいのか、教えてよ」
     九門は莇の手を取った。莇はおそるおそる九門の首に触れて、そのまま手を滑らせて鳩尾に手を当てた。
    「バクバクしてる…」
    「えへへ、恥ずかしい」
    「よかった、俺ばっか…緊張してるかと思ったから」
    「そんなわけないじゃん」
     莇の手は下がっていって、九門の臍の下あたりで止まった。
    「それ以上は恥ずかしい?」
    「んー…」
     どんどん俯いて、黒髪がさらりと流れる。九門は両脚を伸ばして、莇の胡座を挟んだ。
    「莇、脚こっち」
     足首を掴んで、九門の脚の外へ出す。驚くほどに無抵抗だ。だから莇は本当にただ慣れていなくて、恥ずかしいだけなのだ。
     さらに近づけば、もっと密着する。
    「オレも触る」
     九門は莇を真似て、まずは首に触れた。手のひらを滑らせて、鳩尾に手を当てる。そのまま手を下げようとして、少しの好奇心が芽生えた。
     両手を服の下に入れても、莇は嫌がらなかった。薄い胴に手のひらをそっと沿わせて、親指で突起に触れてみた。
    「えっ…何…」
    「何か感じる?」
    「恥ずい…」
     短い爪の先でかりかりと軽く引っ掻くと、莇は戸惑って九門の腕に触れた。
    「他に何か感じない?」
    「…くすぐったい…なぁ、ほんとに恥ずい、それ…」
    「わかった、今日はもう触らない」
     左の乳首を強めに引っ掻いたとき、わずかに身体が震えたのを九門は見逃さなかった。今日はもう触らないけれど、近いうちに。
     手を下に移動させて、莇のスウェットの中に指を差し込む。
    「そのまま…膝で立てる…………?」
     莇はふうっ、と熱い息を吐いて、九門の肩に手を置き、九門の両脚を跨いだまま膝立ちになった。

     莇のスウェットを腰骨が見えるまでずらした。肩に置いた手の力が少し強くなったけれど、莇はやっぱり嫌がらなかった。
     左右の腸骨を指でなぞると、内腿がぴくりと震えた。
    「はぁ…………っ、ぅ…………」
    「どう?ムズムズする?」
    「んん…………」
     返事の代わりに、鼻に抜けた声が聞こえた。九門は視線を莇の開いた脚の間に向ける。厚いスウェットの上からでは、まだどれだけ感じてくれているのかわからない。
     スウェットのゴムに手をかけて、ゆっくりと下ろす。スウェットの生地が緩いからか、莇が細いからか、九門を跨いでいても、脚の付け根を過ぎたところまで下ろせた。
     濃い青色のボクサーは、ついさっき風呂を出たときに穿いたばかりなのだろう。ゴムに刻まれたブランド名が斜めに歪んでいるのは、九門がずらしたからだ。
     中心は既に少し形が浮き出ている。指先でくすぐると、莇は「バカ」と小声で言って腰を引いた。
    「ごめん、意地悪しちゃった」
     九門は逃げる腰に腕を回して引き寄せた。そのまま背中の中心の溝に沿って、指先を下着の中へ侵入させた。中指が尻の割れ目のはじまりに触れて、心臓がドキドキした。
    「…………"そっち"、すんの」
    「うん」
    「練習、してない」
    「一緒に、しよ」
     挿入をしようとしたのは、過去に一回だけ。親が留守にしていた日の九門の実家で、九門のベッドの上だった。
     端的に言えば"失敗"だった。ちゃんと調べて、必要なものを買い揃えて臨んだけれど、お互いに緊張しすぎて使い物にならなかったのだ。
    「九門…………」
    「なに」
     九門が顔を上げると、黒髪の毛先が降りてきて頬をくすぐった。シャンプーの香りがして、気がつくと唇に柔らかい感触があった。
    「…珍しいね、どしたの」
    「したくなった…」
    「ねえ、もう一回して」
     莇は九門の顔にかかった自分の髪を片方の耳にかけた。2回目はより長く、でも、触れるだけのキスだった。
    「はぁ…恥ず………なんか今日おかしいな、俺」
    「ふふ、スッゲー"破廉恥"」
    「やべーかな」
    「やばい。オレがやばい」
     見上げる九門の顔に、莇の手が触れた。
    「ホントかわいい顔してんな、お前……っあ、」
     莇の下着の中に入れた指で、割れ目の奥にある窄まりに触れた。そこを指の腹で押しながら、莇の目を見つめる。暗さに目が慣れて、莇の表情も、頬が上気しているのもよく見える。
    「莇に言われると照れちゃうな」
    「ぁ…………っ、ん、」
     穴を刺激しながら、ポケットに入れていたローションのミニボトルを出した。
    「…っ、それ、」
    「莇、オレ片手塞がってるから、これ開けてくれない?」
    「…っ、ちっ、片手で開けられるやつに入れろよ…」
     九門が右手で持つボトルの蓋を、莇が左手で外した。九門は「ありがと」と言って、ボトルを持った手ごと腰に腕を回す。
    「オレの顔が好きなら、ずっと見ててよ」
    「ん、んん…………」
    「オレも莇の顔が見たいな〜…」
     莇は悩ましげに眉を寄せて、九門と目を合わせた。九門はにっこり笑ってみせる。
    「…なんだよ」
    「かわいい?」
    「バカ……………………かわいい」
    「へへ、ありがと。もっとこっちに来て」
    「もっと…………?」
     蓋の開いたボトルを持ったまま手首で腰を押すと、莇はおずおずと膝を前に進めた。九門の顎の先が、莇の鳩尾に当たった。莇の尻に差し込んでいた指を抜いて、下着に手をかける。
     下ろそうとすると、また肩に置かれた手に力が入った。
    「…嫌?」
    「っ、悪い、嫌じゃない…恥ずいだけ……」
    「よかった。嫌だったらすぐ言って」
    「ありがと。けど、嫌って言ってもやめなくていい。すげー恥ずいし、ちょっと怖ぇけど、今日はなんか、大丈夫な…気がするんだ…」
     そんなことを言われたら、本当にやめてあげられなくなってしまう。Tシャツ越しに莇の鳩尾にキスをしたら、鼓動が唇に伝わった。上を脱いでもらえばよかったな、と九門は思った。
    「じゃあ、ホントに嫌なときは"ストップ''って言って。そしたらやめる」
    「わかった」
    「こっち見て、莇」
     また莇が九門の顔を見下ろした。
    「待て、髪結ぶ」
     莇が手首に掛けていたヘアゴムで髪を後ろに束ねている、その両手が塞がっている隙に、片手で下着を脚の付け根まで下げた。
    「あ…っ、ちょ、待てって言った」
    「やめなくていいって、莇が言ったんだよ………」
     少し身体を離してそこを見ると、莇の性器が上を向いて、先端を透明な液で濡らしていた。
    「あ、硬くなってる。かわい…」
    「やだ、見んな」
     莇は九門の首の後ろで手を組んで引き寄せた。九門の顔は莇の薄い胸に埋まる。
    「ふぐっ」
     そして、九門の腹に莇の性器の先端が当たった。九門はその少しの刺激で、自分の下半身に窮屈さを覚えた。もうだいぶ前から、"ムズムズしている"のは九門の方だった。すぐにでもジャージと下着を脱いで、いつものように莇のと一緒に握って激しく上下に扱きたい。でも、今日は、今日こそは、その先に進みたい。九門は己の衝動と必死に戦った。

     左手の指先にローションを付けて、隔てるものがなくなった莇の尻にもう一度触れる。薄い尻の肉を左右に開いて、指先で押した。
    「はぅっ」
     莇がその刺激から逃げようとすると、勃ちあがった性器がまた九門の上半身に擦れた。自ら擦り付けているようにも見えて、とんだ目の毒だ。
    「もうちょっと、お尻突き出せる?」
     緩慢な動きながら九門の言う通りに尻を後ろに突き出す莇がいやらしくて、九門はふうっと息を吐いた。
     中指の先で穴の周囲を撫でてから、少しだけ力を込めて、ぷつりと挿し込んだ。
    「ん…………っ」
    「大丈夫だよ…」
     ローションを足しながら、ゆっくり、ゆっくり、指を奥へ進めていく。狭くて、温かくて、やわらかい。九門は今、莇の身体の中に触れている。
    「っ、ぅ、…………っ」
    「大丈夫、大丈夫だよ、ごめんね、気持ち悪いね」
     莇は首を振って否定する。余裕がないはずなのに九門を気遣っているのが、九門には嬉しくもあり、少し悔しくもあった。こちらを気にする余裕もないくらいに乱れさせてみたいと、ずっと思っている。
    「はぁ…っ、は…は……………」
     苦しそうながら懸命に呼吸する莇の背中を撫でて、しかし指は遠慮なく根元まで挿し込んだ。ゆっくり抜いていくと、「んん…」と小さな声が聞こえた。九門は莇の腰を抱き抱えるようにして、指を抜き差しする動きを少しずつ速めていく。
    「ぅぁ、ぁ……………………っ……」
     この動きに弱いんだとわかってしまって、どこまで速めたらもっと声を出してくれるんだろう、と好奇心が湧いてしまう。指先だけの動きから、腕ごと動かして攻めてみる。
    「ん…は、ぁ、ぁ、ゃ、ぁ、やだ…っ、ぁ…」
     九門を跨ぐ内腿が震えている。
    「莇、『やだ』じゃやめないよ」
    「んぅ、ちが、い、いい、ぃ、嫌じゃない、ぃ〜っ…」
     もう少しで、壁を一つ越えられそうな気がする。莇が「ストップ」を言わないのをいいことに、九門は容赦なく攻め続けた。
    「んっ⁉︎うぐぅ…」
     莇が九門の後頭部に差し込んだ手に力を込めたせいで、九門の鼻が莇の薄い胸に潰された。息ができなくなり、九門は唸りながら指を抜いた。
    「あざみ、ぐるじいよぉ…………」
    「あ…っ、悪い…」
     ようやく解放され、九門は肩で息をする。莇の鳩尾で窒息するのも悪くないかもしれないと思いながら。
    「ごめん、オレもちょっとムキになっちゃったかも…。ホントに続けて大丈夫だった?しんどかったんじゃない?今の」
    「変な感じしたけど、なんか…嫌ではなかった」
    「そう…」
     九門は、目の前の黒いTシャツと、中途半端に下ろしたままの莇のスウェットを見つめた。
    「脱ごっか、下」
    「はぁ…………?」
     莇はあからさまに嫌そうな顔をした。既に出すところは出してしまっているのだし、全部脱ごうが変わらない、と九門は思ったが、莇の方は違うらしい。
    「俺だけかよ」
    「うっ…わかった、オレも脱ぐから!」
     九門は自分のジャージを引っ張ってみせて、ね!と莇の顔を覗き込んだ。莇は「まあ、それなら…」と一度九門の上から降り、スウェットと下着に手を掛けて下ろし始めた。
     目の前で始まったストリップショーに九門のまるい瞳は釘付けになる。固まって見つめていたら、莇が睨んだ。
    「お前も脱げよ」
    「あっ、ご、ごめん」

     上にTシャツを着たまま、下半身には何も身につけていない。二人ともなんてひどい格好をしているのだろう。九門は恥ずかしさと背徳感で頭がくらくらした。ばかみたいなことをしているのではないかと思った。
     部屋を暗くしていてよかった。変に冷静にならずに済むからだ。こんなとき大人なら、酒を入れたりして理性を取っ払ったりするのかもしれない。
    「おいで莇」
     両手を広げると、莇は再び九門の両脚を跨いだ。布越しだったのが素肌の触れ合いになって、それだけで腰がずくんと疼いた。
    「勃っ…てる」
    「恥ずかしいから言わないでよぉ、莇のエッチ」
    「エッ…!バカ、安心しただけだよ…………」
     今日の莇は九門が興奮することしか言わない。九門は戻ってきた莇の身体をまた抱きしめた。莇に「大好き」と行動で示すためであり、暴れ出しそうな己の本能を鎮めるためでもあった。
     下腹部に力を入れて深呼吸すると、衝動は少し治まる。九門はこのままの体勢だとまた莇の鳩尾に顔を埋めるだけになると気づいて、ひとつ提案した。
    「ね、そのまま腰、下げられる?」
     言われるがまま、莇は膝を曲げて腰を下げようとしたが、すぐに「無理」と元の体勢に戻ってしまった。
    「これ、座…っちまう」
    「いいよ、座っちゃって」
    「え…っ、重いぞ」
    「全然大丈夫だよ、そんなの」
     莇は反論できなくなって、渋々また腰を落とした。完全に乗っかるのはやっぱり遠慮してしまうようで、両脚が強張っている。でも、今はそれで問題ない。これから力を抜いてもらえばよいのだから。
    「ほら、ぎゅーってしやすくなったでしょ」
    「ん…」
     莇の背中に手を回すと、莇は九門の肩に顎を乗せて、真似してぎこちなく抱きついてきた。手を再び下へ持ってきて、まだべたべた濡れたままのそこに触れる。
    「っ…」
    「なるべくくっついてて。その方がやりやすいんだ」
     またローションを足して、指を挿入する。今度は中指と薬指の2本。抜き差ししながら、この間は見つけられなかった"いいところ"を探す。
    「ふ…………ぅ、ぅ…ん、ぁ…………」
    「ねぇ、この体勢、すっげーエロいね」
    「バカ、っぁあっ…」
     2本の指を根元まで挿れて、腹側に曲げたときに当たるところ。そこをぐりぐりと押すと、かろうじて浮いていた腰がストンと落ちた。九門の両脚に体重がかかる。
    「ぅゔ〜、っ………ぁ…」
     無自覚なのか、莇の腰がもぞもぞ動いている。自ら快感を追い求めているのだと思うと、九門はたまらない気持ちになった。時折自分の屹立したものと莇のそれが触れ合って、それだけで暴発しそうだった。
    「もっとぎゅってして。落ちちゃうよ」
    「は、っぁ……っ、ぅぅ」
     優しく、且つ的確に、"そこ"を捕えて刺激していれば、莇は縋るように九門に抱きつく。莇の太腿は九門の脚に密着した。
     我慢の限界が訪れて、九門は莇の腰に回していた右手を自分と莇の身体の間に差し入れた。蜜をこぼしながら寄り添う2本の欲の塊を握り込む。
    「っあざみ、オレ結構やばい、かも……ぁあっ、きも、ちぃ…………」
    「ぁ、あ、くもん、ぅ…っぁ、あ、待っ、」
     強く握って扱いたら、もうどちらがどちらのかわからない。ただ手の中が熱くて、どろどろして、気持ちがいい。莇は九門の耳元で時折声を裏返らせて喘いだ。前を扱く動きが激しくなるのと同時に、莇の穴の中を攻める動きも粗大になっていく。
    「くもん、く、くもん、ぁ、あ、ああっ、ま、待っ、あ、くもん、す、ストップ…っ」
    「っえ⁉︎…………っく、うう…」
     あともう3回くらい扱いたら達しそうだった。けれど約束した合言葉が出てしまった。九門は額に脂汗を浮かべて、眉間に皺を寄せる。手の中のものは根元を強く抑えた。
    「ごめん…こわかった…………?」
     できるだけ優しい声で、安心させるように言った。しかし莇の返事は、九門の予想を裏切るものだった。
    「っじゃなくて………挿れ、ないのか…………と思って…………」
    「えっ…………え⁉︎ なに…?も、も、もう一回言って…………」
    「挿れてーんじゃねぇの…?」
     莇がこんなことを言うなんて。九門としては挿入できるのはまだ先だろうと考えていた。今日は後ろで気持ちよくなれるようになってもらって、その次は後ろだけで達せるように、と徐々に段階を踏むつもりだった。それなのに。
    「…………………………………………いいの?」
    「いい。このまま…」
    「まって、ゴ、ゴムつけなきゃ」
    「っう、要らね…一回離れたら、っだめな気がする」
     コンドームを付けずに挿入するなんて、クズのやることだ。どんなに興奮していても、好きな人の身体は大切にしなくてはならない。それなのに。
    「あざみぃ…………だめだよ、そんなこと言ったら…………オレ…………」
    「いいっつってんだ。お前ので腹壊すくらい平気」
     ああ、ダメだ。もうダメだ。九門の精液を体内に入れてもいいと、莇は言っている。九門の脳はもう正常な判断をすることができなくなった。
    「お尻、開くから…抜くよ…………」
    「っぁ…………はぁあぅ…………」
     3本の指が、莇の中でふやけていた。いつ指を増やしたのか、九門自身も覚えていない。べたべたのままの指を穴に引っ掛けて、大きく広げた。
    「腰、上げて…もすこし前に…………そう…………」
     莇は九門の言う通りに尻を動かす。九門は反対の手で自分の性器を支え、少し腰を上げて、先端をちょん、と触れさせた。
    「あっ…………」
    「お尻下ろして、ゆっくり…………っあ、先っぽ、入っ…………」
     体温で温まったローションに誘われて、文字通り飲み込まれるように、生身の性器が莇の中に入っていった。
    「はぁ…ぁ…あああ、九門、九門…っ」
     密着した腹部の間で莇の性器は擦られる。その刺激のせいか、九門を跨いだ両脚が震えた。
    「力抜いていいよ…っ、ゆっくり…あ、やば、い…っ、」
    「九門、う、むり、あ、」
     力を抜くに抜けない莇が泣きそうな声を出す。九門は自分の性器から手を離して、両手で莇の尻を支えた。
    「あし、脚、莇、脚立てて、片方ずつ…そう、そう、だいじょぶ、支えてるから…っぅあ、だいじょぶだよ…っ」
    「んん…んぅ〜…ぁ、ああ…!」
     そっと手の力を抜いていくと、体重で腰が落ちる。九門の鼠蹊部にやわらかい皮膚が触れた。
    「入っ…た……あったか……だいじょぶ…? 苦しくない…?」
     黒髪の頭が九門の肩で頷く。結合部をなぞると、九門の胴を挟んだ細い腿がひくひく痙攣した。
    「ちゅー、しよ」
     莇は九門の肩から顔を上げた。九門は指についた粘液を自分のTシャツで拭い、汗で額に張り付いた莇の前髪を避けた。頬には涙の跡と、布の皺の跡が付いている。九門は胸が締め付けられた。赤く濡れた唇に自分のそれを合わせたら、目の奥が熱くなって、視界が潤んだ。
    「莇、だいすき」
    「うん…」
    「ごめんね、我慢させて…ここ触ろっか」
     二人の間に押しつぶされていた性器に、九門がそっと触れる。とろとろこぼした粘液が、九門の服を汚していた。
    「ぁ…いい、今やばいっ、から…ああっ」
     裏側に親指を当てて刺激すると、莇は首をのけ反らせた。
    「イッちゃいそう?」
    「ん…あ、落ちる…っ」
    「ぎゅってしてるから大丈夫、きもちいいね、出しちゃっていいから…」
     密着したままゆりかごのようにゆらゆら揺れた。それだけでやわらかい内壁がうねって、九門を昂らせる。
    「あ、ああ、う、…ん、んん……っ」
    「あったかいよ、莇…っ、きもちい、きもちいね、ぁ、莇…」
     莇は必死に九門にしがみつき、九門が性器を刺激するたびに肩や腿や下腹部を震わせて感じ入った。
    「ん、ん、くも、やば、ぅうう、あ、、〜〜〜〜っ!」
     びくん、びくん、と震えた性器が愛おしくて、体液を放出している間も九門は手のひらでそっと包んでいた。
    「…ストップする?」
     は、は、と短く呼吸しながら、莇は左右に首を振った。
    「お、れは、動けねー、けど…九門の好きに、しろ…」
    「ちょっと激しくしちゃってもいい?」
    「変な声出そうだから、こうしとく」
     莇は九門のTシャツの肩を噛んで、布を咥えた。肩を直接噛んでくれてもいいのだけど、と九門は思った。
    「ごめんね、オレもうやばい。つかまってて」
     長い脚が九門の背中で交差した。九門はふたたび莇の尻を両手で支える。
    「ん…」
     こもった声が聞こえたのを合図に、結合部を上下に、前後に、欲の求めるままに揺らした。
    「んんっ、ん、んむ、〜、っ、!」
    「はぁ、は、ぁ、あざみ、あざみ…っ、あー、あ、あ、」
     ロフトベッドがギシ、ギシ、と音を立てた。口からは獣のような息が漏れる。頭がぼうっとして、額を汗が流れる。心臓がばくばく脈打つ。莇の身体の中に突き刺した性器が熱くてじんじんする。
    「ぁ〜、イッ、きそ…莇ぃ…っ、あ、、っきも、ち、ぃ、」
    「〜、ん、んぅ、んんっ、〜!んっん、っ」
    「あざみ、ああ、あ、イく、イ、くぅ…」
     Tシャツの引っ張られる感触が無くなった。莇が口を離したのだ。まさか今「ストップ」か、と思ったとき、莇が声を震わせながら言った。
    「っあ、くもん、上、むけ…ッ」
    「っえ…?」
     言われるがまま莇を見上げると、その顔が近づいてきた。
    「んむ⁉︎」
     気がついたら、唇が触れ合っていた。
    「ん、んん、…………っ、!」
    「んふ…………ん…っ、んんっ」
     莇にキスされている、と実感した瞬間に、埋めた性器が爆ぜた。九門は莇の後頭部に手を差し込んで押さえ、深く口付けたまま、結合部を軽く揺すって、奥へ奥へ種を放出した。後で掻き出すのが大変になるのに、莇が腹を下してしまうかもしれないのに、そうせずにはいられなかった。

    「…………っはぁ、はぁ、莇…もう…………あそこで、ちゅーはやばいって…………」
     繋がったままゆっくりと莇を寝かせた。
    「でも、がっついたのはオレが悪いや、生でやっちゃったし…………」
    「ん…俺も、服汚した…………」
    「それはいい、嬉しい」
    「変態…………っあ、」
     性器を抜くとき、莇が小さく喘いだ。ぽっかりと空いた穴から白濁した粘液が漏れ出して、敷いたタオルに染み込んでいく。
    「えろぉ…………」
    「なに、見てんだよ…………」
    「ごめん、ごめん莇、ほんとは掻き出したりしないといけないんだけど…………オレ、まだ足りないよ…………」
     莇が濡れた睫毛で瞬きをして、九門を見つめた。
    「なー、お前やっぱ、顔かわいい」
     ずくん、と腰が疼いて、引いたはずの熱が勢いよく戻ってくるのを感じた。
     九門は莇に覆いかぶさって、またキスをした。

    ──────────◆◇おわり♪
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