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    林(りん)

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    林(りん)

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    学パロ修学旅行乱幻(このまえ冒頭だけ書いたやつの続き)
    まだ書きかけで最終チェックとかもしてないので現時点で色々矛盾点とかあるかもしれないけど書きかけだもんね~という気持ちで見てください。

    #乱幻
    illusions

    学パロ修学旅行乱幻【乱幻】学パロ修学旅行乱幻


    「やほやほー! また一緒になったね~☆」
     彼の語る〝また〟も数えてみればもう三年近くも前の話だ。
     あの時と違うのは今回は彼が自ら進んで「ボク夢野くんと一緒がいいで~す☆」と口にしたことだろうか。
     白々しい。
     ……夢野くん、だなんて呼ばないくせに。
     それでも無意識に口元がほころぶのはこちらの方こそあの時とは違って彼の提案が決して不快なものではないからだろうか。
     相変わらず彼とは友人などではないけれど、多分、きっと、あの時からずっと、相変わらず彼のことが嫌いではないなと、「僕も飴村くんと一緒で構いませんよ」と白々しく答えた自身を省みながら密かに思う。


    ◇ ◇ ◇


     始めて彼とまともに言葉を交わしたのは中学三年生の時だ。
     明るく華やかで人当たりもよく、男女問わずに誰とでも気安く話している彼の姿は所謂〝陽キャ〟そのものだろう。
     対して自分は今のクラスに特定の友人もおらず、それを気にしたことはあまりないがクラスメイトからも少しばかり遠巻きに見られている自覚はあったし、それを居心地悪く思わなかったかといえば嘘になる。
     自分で口にするのも憚られるほどに対照的な自分達の一番最初のまともな会話のきっかけになったのは、彼の「じゃあボク夢野くんと一緒の部屋がいいで~す!」という一言だった。


     修学旅行という、仲の良い友人さえいれば「修学」も名ばかりで楽しいことの方が圧倒的に多い(というイメージを幻太郎は勝手に抱いていた)イベントも、そうでなければまともに話したこともない他人と数日間を共に過ごさなければいけない地獄のような行事だ。(というもの幻太郎のイメージだ。)
     彼――あの男が自分の知らないところで〝そんな〟発言をしていなければ自分はそんな地獄のような行事に参加などしていなかっただろうと幻太郎は思う。……きっと、おそらく。いや、それは関係なかったかもしれない。

     修学旅行当日の斑や部屋割りを決める予定だった日に学校を休んだのが彼だった。
     彼と仲良くしているクラスメイトは多かったはずだ。彼が欠席したところで彼の居場所があぶれるということはなかっただろう。たとえ無遅刻無欠席で登校していても自然とクラスの輪からあぶれてしまう幻太郎とは違って。
     とはいえ本人の希望を全く聞かずに決定してしまうことも出来なかったのだろうか。班決めの時には「一緒の班がいい」という女子の発言もいくつかあったはずだが、そういう意見が複数あったせいか結局彼の班は(仮)のままで正式に決まることはなかった。
     彼が不在のままで彼の所属する班が正式に決定することはなかった。
     ――班は。

     その日欠席していた彼の宿泊先での部屋割りが幻太郎と同室ということで勝手に正式決定されてしまったのは、クラスで唯一あぶれていた幻太郎に巻き込まれてのことだったのだろう。


     次に登校してきた彼は、自分のいないところで勝手に決められていた部屋割りに文句を言うこともなくあっさりと「よろしくね~!」と声を掛けてきた。
     ――これが陽キャのオーラか、と密かに眩しくなっていたのは幻太郎の中だけの話だった。
     彼の班が決まらなかったのは彼と一緒の班になりたいという女子のグループが複数あったからだろうし、担任の教師としても部屋を勝手に決めてしまったからせめて班の方は、という担任なりの気遣いだったのかもしれない。そもそも彼の部屋が勝手に決められたのも、所謂「ぼっち」である夢野幻太郎がクラスからあぶれないようにという半ば強引ではた迷惑な配慮だったのだろう。
     幻太郎は所謂「ぼっち」だったので、次に彼の修学旅行での動向を知ったのは修学旅行当日の班や部屋割り、スケジュールについてが印刷されたプリントに彼の名前が自分と同じ班に堂々と書かれていたのを確認したときだった。
     そのプリントを見たとき幻太郎は「何故……?」と思ってしまったのだが、それについては彼本人が「じゃあボク夢野くんと一緒の班がいいで~す!」と言ったのだと聞いたのは修学旅行一日目の夜のことだった。


    ◇ ◇ ◇


     最初に彼に「よろしくね~」と声を掛けられたのはクラス全員に修学旅行についてのプリントが配られた日だった。(修学旅行のしおりが完成する前のことだった。)
     彼の軽々しく気安く明るい「よろしくね~」に対して幻太郎は「どうも」という絶対に「どうも」だなんて思っていない返事しかできなかった。
     彼がそれを気にする様子はなかった。

     修学旅行当日にも彼から同じように「よろしくね~!」と軽々しく気安く明るく声を掛けられた。
     幻太郎はまた先日と同じように「どうも」と思ってもいない「どうも」だけを返すはずだったのに、それより先に彼が「夢野くんちゃんと来てくれてよかった~!」と言って笑ったものだから幻太郎はつい「むしろ僕が休みの方が君は部屋を一人で広く使えてよかったのでは?」と嫌味や皮肉のように返してしまった。
     ここで注意してほしいのは、幻太郎は嫌味や皮肉を言ってやろうと思ってそんな言葉を返したわけではないということだ。
     ――夢野幻太郎はれっきとしたコミュ障だった。

     コミュ障である夢野幻太郎の嫌味のような皮肉なような言葉にさえ彼は「えー! 一人じゃつまんないじゃん!」とまるで心からの言葉のように返してきたので、その瞬間、今度こそ幻太郎は気安く軽々しく明るい彼のことをとても苦手なタイプの人間だな、と思ってしまった。

     まさか幻太郎がそんな彼のことを好ましく思う瞬間が来るだなんて、その時点ではきっと誰一人として思わなかったはずだ。
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