口づける資格を「どうぞお入りください」
通算、何度目かのお宅訪問。リビングに通された俺は、すとんと椅子に腰掛ける。キッチンでコーヒーを入れる恋人ーー入間さんの様子をじっと見つめていると、それに気づいた彼は優しく微笑みかけた。
いつ見ても顔がいい……と惚けそうになって本来の目的を思い出した俺はふいっ、と視線を逸らした。顔は熱いから、彼から見たら照れてそっぽを向いたように見えただろう。実際そうではあるのだが、今日の俺はちゃんと理由があってここにいる。
ことの発端は、俺が気づいた入間さんの行動からだった。いつ会ってもスマートにエスコートしてくれたり、俺の愚痴や話を聞いてくれたりと恋人として申し分ない彼だが、ひとつだけ気になっていることがあった。
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