チュートリアル戦闘(双子ハリ)優に3メートルは超えているだろう。甲冑姿の石像がそこに立つだけで圧倒的な威圧感を放っている。その手に握られたモーニングスター―「星」という名を冠しながらも、ロマンチックさの欠片もない棘だらけの鉄球が、今まさにハリーめがけて振り下ろされようとしていた。
ゴッ――!
空気を切り裂く鈍い音とともに、鉄球がハリーの目の前に迫る。
「プロテゴ!」
鋭い叫び声が響いた瞬間、ハリーの前に青みがかった防護膜が張られた。杖を握るハリーの背後から飛んできたそれは、到底受け止められそうにない一撃を見事に弾き返す。
「デパルソ!」
間髪入れずに放たれた呪文が、今度はハリーの横から飛び出した。力強い魔法の一撃に石像はのけぞり、重々しい足音を響かせながら数歩後退する。その振動を足の裏で感じながら、ハリーは素早く杖を突き出した。
「エクスペリアームス!」
赤い閃光が一直線に走り、石像の手から武器を弾き飛ばす。宙を舞う鉄球はくるくると軽やかに回転しながら、ふわりと浮かび――
「いただきっ!」
背後に立つジョージがすかさず杖を向け、楽しそうな声を弾ませながら呪文をかけた。次の瞬間、鉄球は弧を描き、失った武器を見上げる石像の頭へと一直線。
ドゴンッ――!
鈍い衝撃音とともに、石像の頭が陥没し、細かな石の破片が四方に飛び散る。崩れ落ちる石像を見届けながら、フレッドが愉快そうに叫んだ。
「やるじゃないか、ジョージ!」
「この程度で褒められちゃ、プライドに関わるぜ!」
肩をすくめながら軽口を叩く双子に、ハリーは呆れたような笑みを浮かべる。だが、気を緩める暇もない。前方から新たな気配が近づいてくる。
「ほら、次が来るよ!」
ハリーが注意を促すと、フレッドとジョージは顔を見合わせ、不敵な笑みを交わした。
「さあ、次はどんな手でくる?」
「何でも来い、俺たちに敵なしだ!」
ハリーは内心苦笑しながらも、杖を握る手に力を込める。今度は複数分の轟く重い音……戦いはまだ続きそうだ。