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    Wayako

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    Wayako

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    ちょっと畏怖エラちゃん。拳ミカ…?くらいの拳ミカです。
    実際ミカの能力って本当に怖いよね。

    #拳ミカ
    fistMicas

    畏怖愚兄は、昔からよく女にモテる。
    こんな野球拳ポンチなハゲ男の一体どこがいいのか全くもって分からないが、遊ぶ女をきらしたところを見たことはない。私にはない根の明るさと社交性の高さで、あっという間に血と屋根のついた寝床を確保するのはあの愚兄のもう一つの才能と言っていいだろう。面倒見の良さと、後腐れのないカラッとした性格。偽善な道徳は解かず説教もしない。多少たかるところはあれどヒモというわけでなく、ちゃんと稼いで個の生活があり、遊ぶ女側にも充分すぎる利がある。だが、同時にそんな男なものだから、外れを引けば面倒ごとに巻き込まれることも多かった。
    そこまで考えてミカエラはじろり、と目の前で自身の下僕に押さえつけられた女の部屋の中を見渡す。極めて平均的な1kのマンションの一室はこれまた平均的な20後半の女性の部屋といった物で、異様なのは外に繋がる扉についた無数の南京錠とベニヤ板で打ち付けられた窓くらいだろう。ミカエラが立つリビングの扉からまっすぐ前に置かれたベッドの上、呑気に座った件の男は鎖で繋がれた片手をあげ、よう、とこれまた呑気に笑っている。あまりの態度にこめかみがぴくり、と疼いたが、足元の女が押さえつけられた口でうーうーとやかましく呻くのがそれ以上に不快で、その羽虫の羽音を止めるべく下僕に命令を下すと、締め上げていた腕をさらに締め上げる。短い悲鳴の後に荒い呼吸を繰り返すだけとなった哀れな女に、少しだけ溜飲が下がるのを感じた。
    「人間の分際で吸血鬼を飼おうなど、片腹痛い。お前たちは、我々に飼われているのがお似合いだ。…いや、飼われているだけだということを忘れるな。」
    静かに、淡々と当たり前のことを告げれば女の涙で濡れた瞳に恐怖が灯り、絶望が深くなる。それに気を良くし、再び命令を下して女の体をこちらに向かせ、頭を横に引いて首筋を出させた。何をされるのか解ったのか再び唸り喚き散らす女の瞳が後ろを見ようと動き、愚かにも兄に助けを求めている姿にまたじわり、と不快感が沸きあがる。当の本人はまったく姿勢を崩さず、何だったら爽やかともいえる笑顔で手をふっているというのに、哀れな女だ。
    「ちょうど、残飯係を探していたところだ。我がビキニに下る名誉に、咽び泣いて喜ぶがいい。」
    噛み付いた首筋の肉は柔らかく、ああ、なるほどこれは旨いと納得して血を吸い上げた。

    「ただの小娘に捕まるなど恥ずかしい。腑抜けもいいところだ。」
    隣人からの通報でやってきた吸対職員を下僕とした女に帰らせ、静かになった部屋で今だ繋がれたままの兄に歩み寄れば「いやー、悪い悪い」などまったく心のこもっていない謝罪を返された。再び沸いた不快を今度は隠さず顔に出し、鼻をフンっと鳴らして踵を返すと虚空を見つめる女の脇を通り扉へ向かう。すると後からガチャリと音がして、一拍も置かずに兄が後ろについた。
    「じゃあな、お嬢ちゃん。優しい御主人さまができてよかったな。」
    扉が締まる音を後ろ手に聞きながら、止まらずそのまま外へと出て歩き続ける。室内や隣人への後始末は残した下僕に任せたので問題ない。当事者の女もいれば、多少変でも大丈夫なはずだ。
    「ミカエラ。」
    追い付いた兄に肩を組まれバランスを崩したので止まると、ハットの下から顔を覗きこまれた。悪びれないその視線を冷ややかに見つめ返せば、少しだけ困ったような色が混ざる。
    「そう怒るなよ。」
    「……。」
    別段、本当に怒っていない。兄が女と遊び回るのはいつものことで、自分と所謂恋人などという関係であろうと、それとこれとは関係がないことなのだ。何故なら兄にとって人間の女など食料と暇潰しの相手でしかない。そんな下等な羽虫に嫉妬するなど、それこそ笑い話だ。

    怒っているとするならばその羽虫に数日間監禁され、すぐに出てこれる癖に出てこなかったことだろう。
    大方、話し合いで解決でもしようとしていたのだろう。あの手の輩にそんなもの通用せぬと知っていて、女にはどこか甘い。

    「あっちゃんが心配している。」
    端的にそう言えば、何に怒っているのか分かったのだろう。珍しく申し訳なさそうに目が泳いだ兄の手を振り払うと再び歩きだし、長兄を心配して泣いている末妹と優しい妹を泣かせた長兄に怒る末弟の待つホラーホスピタルへと向かうのだった。
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