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    のーらん

    @achaacha1607ss

    創作倉庫
    絵も小説も書く。
    🐑右にしがち

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    のーらん

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    👹→🐑←📦
    👹🐑+📦🐑
    兄弟👹🐑と従兄弟の📦さん
    📦さんにからかわれる👹🐑の話。
    誰も付き合ってないけど🐑受け
    設定はからあげいん(@karaageinn1125)様のをお借りしました。

    #Akumasutra
    #Cybussy
    #Fukuma

    かわいい子達に祝福を足の開く限りの大股で階段をかけ上る。
    服は上手く着られていないから、ところどころシャツがズボンからはみ出ているがそれどころではない。
    普段身体をよく動かす方でもないのに、その時のファルガーは走れメロスもかくやという姿で駅構内をかけて行った。

    もっとも、その即席で作られたメロスは目の前で電車を見送るという寂しすぎる別れを遂げたわけだが。

    「あぁクソ!!ほんっとうにクソだ!!」

    勇者は、ひどく罵った。



    ファルガーのバイト先は自宅から電車で1本、30分弱の駅構内にある書店。
    高校へと向かう電車の乗り換え地点でもあるために帰りに寄りやすいだろうとそこに決めた。
    つまりバイト先から家に帰るためには電車しか移動手段はない。
    歩いて帰れるような距離でも、車で簡単に来れるような距離でもない。

    そして今日のファルガーはその読書量と文章力から、働き始めて初のPOP書きを任され、当然の如く熱中し、上がってからも控え室で黙々とそれを続けていた。

    それはもう、終電を忘れるぐらいに。

    もうお気づきだろう。
    終電を逃したら帰る術がないのに、その電車が目の前で行ってしまったのだ。
    改札を目の前にして、どうしようもない苛立ちと何も出来ない不安に身体がふわふわと浮遊するような感覚に襲われる。
    "今日は家に帰れない?"、"お腹がすいた"、"ここで野宿か?"、"車で迎え、もムズいよな"、"金がない、タクシーは論外"

    沢山頭に渦巻くそれを頭をぶんぶんと振っているとまた別の最終電車から降りてきた人達がこちらへと向かってきていた。
    それをぼんやりと眺めていたら、その人混みの中に、不意に透けるような自分より明るいシルバーヘアと青い艶の長髪を見つける。明らかに目立つそれ。
    いやな、予感。
    その男もこちらに気づくと、ぱあっと顔を明るくしてこちらに駆け寄ってきた。

    「あれ、ファル?ファルガーじゃないか!会えて凄く嬉しいけれど、こんな夜遅くになんでこんな場所に?高校生が外に出歩いていい時間じゃないよ。感心しないね。でもその服の乱れ方からするに終電に間に合わなかったんだね。かわいそうに。ここで僕に会えなかったら大変だったよ?おまえは顔がいいからね、攫われてしまうかもしれない。あぁでも乱れたその髪型も実に」

    「………さいっっっっっあくだ!!!!」

    幸か不幸か、このピンチに現れた救世主は自分の苦手としている兄とよく似た従兄弟であった。
    そして何より不快だったのはその知ってる顔を見た時にどこか安心してしまったことだ。

    神様、俺が何をしたって言うんだ。




    「ええ、なので今日僕の家に泊めます。いえいえ、ファルガー1人ぐらい大丈夫です。おばさんほど上手な料理は出せませんが……ははっ、はい、明日の夕方頃には返します。はい。おやすみなさい。」

    ファルガーは車の助手席で窓越しに光るネオンに視線を向けながら、ボックスのその人あたりの良さそうな会話を聴きながしていた。
    こんな時間まで何してんの!と母親に耳元で何度も叫ばれたせいで、お世辞にも気分がいいとは言えなかった。

    あの後、そのままボックスの家に泊まるという選択肢以外は考えられるはずもなく、もう1つ違う線の最終電車に乗り換えて、2人はそこの駐車場に停めてあったボックスの車に乗り込んだ。

    「さて、おばさんの了承も取れたし、僕の家に出発しようか。」

    と、ボックスがハンドルを手にして、エンジンをかける。
    少しずつ動く車体に身を任せているとまたファルガーのスマホが音を立てた。
    画面に表示された『クソ兄貴』をみて思わず舌打ちをしながら、画面を耳に当てた。

    「……なんだよ。」
    『お前は本当に度し難い馬鹿だな。』
    「開口一番ありがたいお言葉感謝痛みいる。冷やかしだけなら切るぞ。」
    『気が短い男はモテないぞ、ボックスの家に泊まると聞いたが』
    「ああ。まぁ駅の冷たいベンチで1晩過ごすことは無くなった。」
    『……』
    「ファル、ヴォックスかい?」
    「あんたは少し黙っててくれ、で、なんの用だ。」
    『……ボックスに隙を見せるなよ』
    「隙?何の話だ、寝るなとでも?」
    『あと家の中でも距離を取れ、目もできるだけ合わせるな』
    「そんな野生動物でもあるまいし、」
    『あいつと2人きりだってことがどれだけ怖いことか分かってないからそんなことが言えるんだ。いいか?とりあえず、』

    突然耳に当てていたスマホがひょいっ、と簡単に取られてやり場の無くなった手が宙に浮く。

    「ハロー!ハロー?聞こえているかい?愛しのヴォックス!電話越しだと一層その声がセクシーだね!かわいい弟を取られて寂しいんだろう、君はファルガーが好きだからな……はっはっはっ、安心してくれ、大事に預かるよ。今度は君も泊まりにきてくれ!じゃあまたすぐに。」

    目の前の信号が赤になった時を見計らってこういうことをしてくるあたり本当に油断ならない。
    器用という言葉だけじゃ片付けられない狡猾さを感じる不気味さがあった。

    きゅうぅ……

    「……」
    「ふふっ、はははっ!そうだね。お腹が減って仕方がない時間だ。帰ったら簡単になにか作ろう。」

    そして全く空気を読もうとしないそれに思わず歯噛みする。
    その甘やかしてくるような言動がどうにも居心地が悪くて、舌打ちをしてまた意味もなく窓の外に視線を投げた。



    「上がったかい?よく温まれたかな。」
    「あぁ。服、たすかった。」

    一般的な一人暮らしの部屋。
    紺や黒、白で統一されたモノトーン調の部屋で、ボックスの髪がよく映えている。
    家のドアを開けた瞬間から清潔感が溢れていて、こんなにも抜け目がないのかと驚いたものだ。

    タオルで髪の毛をガシガシと拭きながらソファに机の前に座ると、ことり、と置かれる平皿。
    ほわり、と立ち上る湯気と表面に広がるまだぐつぐつとしているチーズの香り。
    そして上に乗った赤と緑の鮮やかさが空腹を急速に思い出させる呼び水となって、口の中に唾液が溢れる。

    「この時間だから大したものは作れなかったけれど、味は保証するよ。」
    「ドリア?」
    「ドリアとは言えないかもな。冷凍ご飯に市販のミートソースとチーズ、あとパセリをかけてレンジに入れただけだよ。」
    「……いただきます。」
    「召し上がれ。熱いから気をつけてね。」

    律儀に手を合わせたあと、スプーンを持ち上げる度に伸びる乳白色の線、それをふーふー、と冷ましながら黙々と口に運ぶファルガーの様子を、ボックスは笑みを絶やさずに見つめていた。

    「……なぁ、食いづらい。」
    「おっと、すまない。つい、ね。」
    「あんたは食わないのかよ。」
    「僕はもう食べてきたから、ありがとう。」

    まだ高校生という成熟しきっていない身体に有り余る自分のスウェット。
    汚さないように腕まくりをして、大口で自分の作った料理を食べている様子。
    髪や身体からは自分の使っているシャンプーやボディソープの香りが漂ってくる。
    その光景は、まるで頭から爪先まで自分のものになったような錯覚を起こさせて、ボックスは一層その笑みを深めた。

    「そうだ、ファル、1度こっちを向いて。」
    「ん?」

    もぐもぐと懸命に咀嚼しながらこちらを向くファルガーの目とボックスは視線を交わらせる。
    その身体の奥を嬲られるような視線に、ファルガーは一瞬身体を強ばらせるとボックスの手はそのまろい頬に当てられ、親指でゆっくりとソースで汚れた唇をなぞった。

    そのソースをボックスの薄く、形のいい唇から覗く舌がぺろっ、と攫う。

    「お粗末さまでした。」

    一瞬にして体温が急激に上がり、その羞恥の波を耐えようと口元を抑えるファルガーと、それを見てケラケラと笑うボックスは大層ちぐはぐだった。

    「あ、んたって人は、ほんと……!」
    「じゃあ、残さず食べておくれ。僕はシャワー浴びてくるから。」

    ボックスは立ち上がって、その照れて熟れたさくらんぼのような顔をした愛しい従兄弟の頭をぽん、と撫でてシャワールームへと向かった。

    からかわれたのだと理解したファルガーは、全てを誤魔化すように残っていたドリアを一気に口にかきこんだ。


    シャワールームのドアを後ろ手に閉めて、ボックスはスマホを耳に当てる。

    「やぁヴォックス、また声が聞けて嬉しいよ。……相変わらず心配症だね。」
    『なんとでも言え。ファルガーは?』
    「お風呂に入れて、今はご飯を食べているよ。近くにはいないから安心してくれ。」
    『そうか。』

    いつも自分の前では隙を見せまいと平静を保つその声が、心底安心したことを滲ませるものだから、つい悪戯心が湧いた。

    「ファルガーが僕の服を着て、僕の料理を食べるところは少しそそられるものがあるね。」
    『……そのなんの面白みもない冗談を今すぐやめろ。お前のそれを不能にしてやったっていいんだぞ。』

    突然殺気を滲ませるような声に変わったそれに思わず、口角をあげる。

    「はは、すまない。君のその反応が好きだと言うだけさ、意地が悪いことをしたね。」
    『いつかお前の口を縫い合わせてやるからな。』
    「ああ、糸は赤で頼むよ。君とファルガーの色だからね。」
    『クソっ、明日はできるだけ早く返せよ。』
    「どうだろう、僕はいいけどファルガーは僕の料理が大層お気に召したらしいから。」
    『……これ以上、付き合ってられん、じゃあな。クソ野郎。』
    「おやすみヴォクシー、いい夢を」

    台詞の途中でブツッと切れた電話画面をボックスはひどく慈愛に満ちた目で見つめた。

    「君はかわいいね、ヴォックス」

    兄弟であることが足枷でずっとその気持ちを隠すつもりなんだろう?

    欲しいなら、気にせず力ずくで自分のものにすればいいのに。
    誰よりも近くにいるのだから、兄弟なんてそんなちっぽけな壁を壊して、自分から離れられなくして。

    だって君は、彼が君でない誰かを選ぶことを許せない。
    許せるって思い込んでいるのかな。
    自分が思っている以上に、その業は深いよ、ヴォックス。

    早くしないと僕が攫ってしまうかもしれない、からね。

    「あぁ、君たち兄弟は本当に」


    愚かだかわいい

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