Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    suamapipipi

    @suamapipipi

    公式のCPが好きです
    オリジナルも書きます
    気の向くままに妄想したものを書きます
    ちょっとアレな内容なのでこちらにポイっ!!

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 10

    suamapipipi

    ☆quiet follow

    小夜と恵一郎の話しその2です。
    小鳥遊夫妻の情報は前作「爪先に熱」にを読んでいただけると幸いです。(説明が面倒臭いとかそうゆう事ではない…ありますすみません)

    #小夜と恵一郎
    sayaAndKeiichiro
    #オリジナル
    original

    赤い花に風ジワジワとセミがうるさい。縁側に掛けられた風鈴は1度か2度、音と取れるかどうかくらいの大きさで鳴っただけであとはだんまりだ。
    「あっつ…」
    思わず小夜の口から言葉が転げ出た。
    梅雨が明けるかどうかの時期の突然のうだるような暑さに縁側の窓を全開にして大の字に寝そべる。滲み出る汗に目の上で切りそろえられた前髪が額に張り付く。背中の真ん中までの長い髪はバンズクリップでひとまとめにしたが、わずかに残された髪が首筋にまとわりついてしまい、しっくりとこない。
    夫の恵一郎は買いたいものがあると出掛けてしまって小夜はひとり暇を持て余していた。少し家の事をしようかと思っていたがこの暑さだ、なかなかやる気も起きずにいた。特に外に出る予定も無かったので大きめのサイズのショートパンツに恵一郎の着古したTシャツといったラフな格好でいるので涼し気ではあるのだが、如何せん風がない。
    築年数の経った家なのでクーラーを付けられるような場所もない。唯一寝室は洋間なのでそこに1台取り付けてあるのだが、日当たりが良くないので昼間でも少し薄暗いため、折角の明るい時間に籠るのはあまり好きではなかった。
    「あ、アレ出そう…」
    小夜は独りごちてもそもそと起き上がると和室の押し入れの襖を開ける。中に目的の物を見つけるとズルズルと引き出して、掛けていた布を取る。
    1年ぶりに姿を表した扇風機はなんだかキラキラして見えた。
    小夜は布を軽く畳んで側に置いてからコンセントに繋いでスイッチを押す。
    軽快な電子音に続いて羽が回り出して振動音をたて始める。高速回転を始めた羽から生まれた風が小夜の顔に当たって後ろに通り抜けていく。
    「はぁー…。」
    小夜は走り抜ける風の爽快感にうっとりと息を吐き出す。汗ばんだ肌に風が当たってひんやりと体を冷やしていく。だが冷えていくのは羽の前の顔や、それに当たって砕けた風がほんのり当たる体の前方だけだ。
    小夜は珍しくいたずらっ子のような顔で笑むと扇風機を『強』にしてさっと立ち上がる。
    そして風でぴたりと体に張り付いたTシャツの裾を捲りそれを扇風機にすっぽりと被せた。
    先程とは裏腹に風がTシャツの中に入り込んで背中や袖口を大きく膨らます。汗のある腹に直接風が当たって心地よい。襟から吹き出た風が前髪を持ち上げて汗で張り付いた髪も剥がしていってくれる。
    オーバーサイズのTシャツの襟から風が吹き出た事で胸元がちらりと目に入る。そこには無数の花弁を散らした様に赤い模様がくっきりと浮かび上がっていて、昨晩の情事を思い出させる。恵一郎はいつも着衣していれば絶対に見えない位置にその痕を残すのだ。痕を付けている時の熱い唇と吸い上げた時のチクリとした僅かな痛み、そして何よりその刺す様な強い眼差しを思い出して体の奥がずくりと疼く。小夜に見えないだけでもしかしたら背中にも付けているかも知れないと想像しては、体に吹き付ける風の冷たさと湧き上がる熱が互いにぶつかり合って僅かに熱が勝る。だがその熱を満たしてくれる恵一郎は出かけてしまったのでここには居ない。
    「…ばか。」
    ぼそりと呟いて扇風機に被せたままのTシャツの裾をギュッと強く握る。
    「っふっ…ふふ」
    その時、扇風機の羽の音に混じって聞き覚えのある声が届く。
    小夜が勢いよく振り返るとそこに壁に肩を預けて口と腹を押さえて笑う恵一郎が居た。
    「小夜…何してるの…ふふっ」
    「やっ!ちがっ…これはっ」
    ショートパンツを履き、大きめTシャツを扇風機に被せるという余りにも小学生じみた格好に、小夜は顔を真っ赤にさせるとすぐに扇風機から離れて蹲る。扇風機で冷やされた体がどんどんと熱を上げていく。耳まで熱が行き渡っているのを感じる。顔から火が出そうとはまさにこの事だと小夜は涙目で考える。
    「さーよ、そんなに落ち込まないでよ、俺は可愛くて仕方ないよ?」
    恵一郎は小夜の横に一緒にしゃがみ込むと頭を撫でる。真綿のように優しい声音だが小夜は自分が恥ずかしくて堪らなかった。誰にも見られていないと思っていたのに最愛の夫に見られていた恥ずかしさが大波のように打ち付ける。
    「うぅ〜…恵一郎は良くても私が良くないのっ!こんな…こんな子供じみた…。恵一郎が出掛けてたからやったのに…」
    そこまで言ってからはたと気付く。何故ここに恵一郎がいるのだろう。
    「恵一郎、お買い物に行ったんじゃなかったの…?」
    『強』のままの扇風機の羽の音に消え入りそうな声で小夜はそうつぶやくと顔を恵一郎に向ける。恵一郎が出掛けてたからまだ1時間も経たない。買い物にしては早い。
    「え?買い物って…コンビニに行っただけだよ?言わなかったっけ?」
    驚いた顔をして恵一郎は小首を傾げる。確かに玄関先まで送ったが、そんな事を言われた覚えは無かった。
    「い、言ってないよ〜!」
    田舎とはいえ、自宅からコンビニまでは車で5分掛かるかどうかだ。それならばこの早さも納得出来る。そうと知っていたらこんな事をしなかったのにと小夜は半泣き状態だ。その小夜を見て圭一郎は狼狽える。
    恵一郎が帰宅した時、小夜は丁度扇風機の電源を入れたところだった。声をかけようとすると、立ち上がって扇風機に服を被せたために、その行動が可愛過ぎて恵一郎は眺めていただけなのだ。顔こそ童顔であるものの、行動は大人の女性そのもので、まさかそんな事をすると思っていなかったのだ。意外な一面が見られた気がして恵一郎は愛おしく思っていたのだが、小夜は半泣きになるほど恥ずかしい事だったらしい。
    「ごめんね、どこに行くか伝え忘れない様にするね。アイス買ってきたから一緒に食べよう?」
    俯いたままだった小夜が「アイス」という単語に反応しておずおずと顔を上げる。上目遣いで恵一郎を見て、
    「…食べる」
    と答えると恵一郎は眉根を下げてほっと安心した顔になる。小夜に嫌われてしまう事は恵一郎にとって何よりも恐ろしい事だった。
    顔を上げてくれた小夜にお礼のようにまた頭を撫でると恵一郎は立ち上がったが、何かに気付いて小夜の方に顔を向ける。
    「そういえば、さっき『ばか』って言ってたけどなんの事か聞いてもいい?」
    『強』のままの扇風機が顔に吹き付ける。小夜は恵一郎に問われてかぁっと顔を赤くする。忘れていた熱が目を覚ます。
    その様子に何かを察した恵一郎は目の奥に怪しい光が宿るのを感じながら再び小夜の元にしゃがむとわざと下から覗き込む様に目を覗く。
    「どうしたの?教えて?」
    目が合ってその光を感じ取ると体の奥がずくりと疼く。縁側の方に目を向けるとそこにはだだっ広い田舎の風景と遠くに民家、その向こうに山が座っているだけで人の気配は無い。
    小夜はTシャツの裾を掴むとおずおずと胸元が見える位置まで捲りあげていく。散りばめられた無数の赤い花弁が恵一郎の眼前に広げられ、Tシャツの影に隠れた小夜の顔が赤く赤く染まっていく。
    「これ…が…目に入って…昨日の…思い…出しちゃった…」
    小夜が真っ昼間に恥入りながらも胸元をはだけさせているという扇情的な光景に、恵一郎は軽く唾を飲む。遠くで蝉の声がする。扇風機で煽られているのにじっとりとした汗が2人を包む。
    「…いっぱい、あるね」
    恵一郎の長い指が小夜の肌に浮き上がった赤い痕をなぞり上げる。小さな甘い声が小夜の口から溢れて体が跳ねた。
    「だって、恵一郎がつけた…っ」
    「そう、俺がつけた。」
    小夜の言葉に被せるようにそう呟いて恵一郎の唇が小夜の胸元に落ちる。熱い唇の形、微かな痛み、広がる疼き。新たに増えた花弁のそこから全身に熱が広がる。
    「…寝室行こうか。」
    唇を離すと有無を言わせぬ口調でそう言い、恵一郎は立ち上がって固まったままの小夜をひょいと軽々と肩に担ぎ上げる。
    「えっちょっと待っ…」
    「待たない。」
    またも小夜の言葉に被せるように呟くと歩き出す。
    「小夜だって待てないでしょ?」
    そう問われて小夜は顔を更に真っ赤にする。それを是と捉えて恵一郎はくすりと笑い歩を進める。
    促すようにひとつ、風鈴が鳴る。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖👏😍🙏💕💯💞😍💞💖🍑💴💴😍😍😍😍💞💯💯💯💯💯
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works