爪を彩る ずらりと並ぶのは色とりどりの液体の満たされた小瓶。その奥で微笑むのは、岩の国の最高権力者と呼んで差し支えのない存在。
「今日は商人として来たのよ。さ、好きな物を選んで頂戴」
支払いは天権がするから安心して、そう言って目の前の女性――璃月七星・天権の凝光は笑みを深めた。
何故こんなことになっているのか。心当たりは、ある。先日夜蘭が洞天に遊びに来て、恋人ができたことを巧みな話術で以て蛍から聞き出し、いつの間にか私室に置いていたメイクボックスやアクセサリーボックスの存在さえ発見していた、ということがあった。良いセンスね、とスメールの女性達の贈り物を褒め、何か困ったことがあれば何時でも言いなさい、何とでもしてあげるから、と恐ろしくも有り難い言葉を蛍に告げた彼女は、同時に、出遅れたわね、とも呟いていた。
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