貴方がいい「・・・はぁ、はぁ」
その日は、体が熱くて、つらくて。
ベッドに横になり、闇ノと精神の中で、一緒に眠っていた。
仕事の疲れが蓄積していたようで、私達は熱を出してしまった。
私達、といっても身体は一つしかないのだが。
稀にこうして体調不良を起こすことがあると、いつも高熱にうなされる。
そうなると、シュウの精神は不安定になり、闇ノと光ノの境界線が曖昧になる。
お互いの意識の外でふわりふわりと入れ替わってしまうのだ。
体調が悪くなると、闇ノの彼氏であるミスタがいつも看病に来てくれて、飲み物や食べ物などを用意してくれる。
「シュウ、大丈夫?」
「うん、ありが、と、・・・・・・いつもありがとうございます、ミスタ」
「あ、光ノ・・・。ほんと無理すんなよ」
ぽんぽんと頭を優しく撫でてくれるミスタ。
こういう姿をみると、闇ノは本当に愛されてるなぁと実感する。
そして私を含めてシュウを理解してくれていることに嬉しくなる。
あの人にもそんな優しさがあればいいのに。
きっとリアスは知らない。
私が熱で苦しんでいても、悲しんでいても。
今まで一度も具合が悪い時に彼の姿を見たことはない。
でも彼はそういう人だから。
期待という言葉は、どこかに置いてきてしまった。
「あ、ちょっと仕事の電話だ、一回外出るね」
ミスタは部屋を出ていく。
一人になった部屋で、毛布に包まる。
闇ノは眠ってしまったらしい。
私も早く眠って回復しないと。
─頭が痛い。体が熱い。
ぎゅ、と自分の体を抱きしめて光ノは目を閉じた。
しばらくして、ガチャ、とドアの開く音がする。
ミスタが帰ってきたのだろう。
ドスドスと足音をたてて、ベッドの横まで影がやってくる。
熱が上がっているようで、体を動かすのが辛い。
「・・・み、すた?」
立っているだけで何も話してこない彼に声をかける。
すると、わしゃわしゃとまた頭を撫ででくれる。
優しいですね。ミスタは。
私も、彼に、そうしてほしい─
力の入らない手を伸ばし、シャツの裾をくいっと引っ張る。
「失礼は、承知ですが・・・ごめんな、さ・・・」
乾いた喉がひっつく。息が苦しい。
寂しさで、視界が揺らぐ。
「リ、アス・・・リアスが、いいっ・・・」
そのままぽとりとシャツを掴む手がベッドに落ちる。
「っ─はぁ・・・俺なんだけど。」
ポリポリと頭を掻くリアス。
頭を撫でる手を離し、親指で流れる涙を拭う。
「いつも顔見に来ること覚えてねぇクセに・・・」
すやすや眠る額にそっとキスを落とした。