は、意識が浮上した。
まっくらな部屋の中、ミスタはベッドの上で目を覚ました。
なぜだか胸がドキドキしていて、体は汗をたくさんかいている。
どうしてだろうかと考えたミスタは、怖い夢を見ていた事を思い出した。
夢の中でも、ミスタは夜に目を覚ました。
電気もついていないのに、部屋の中が不思議に明るい。
カーテンが開いているのかな、と窓を見たミスタはそのまま固まってしまった。
窓の外におばけがいたのだ。
真っ白な顔に、大きい黄色のビカビカ光る目でミスタを見下ろして、真っ赤な口でニタニタ笑っている。
そんなおばけが窓いっぱいに映っていた。
ミスタは怖くなって布団に潜り込んだが、よくよく考えると今日はヴォックスが一緒に寝ていたことを思い出した。
そっと布団から顔だけを出して横を見ると、ミスタの記憶通りヴォックスがそこに寝ていた。
ミスタはとたんに安心してヴォックスの腕に飛びついて、ヴォックスを揺らした。
それなのに、ヴォックスは起きない。
不思議に思って服を引っ張ったり、名前を呼んだり、軽く叩いたりしてみてもヴォックスは起きてくれない。
ミスタは悲しいのと怖いのとが一緒になってとうとう泣き出してしまった。
いつもならミスタが泣きだしたら、ヴォックスがすぐに来てミスタを慰めてくれるのに、今はミスタが隣で泣いてもヴォックスは起きてもくれない。
ミスタは布団の中にもう一度潜り込むと、手も足も布団の中にしまって耳を塞いで、おばけを感じないようにじっとしていた。
そこでようやく目が覚めたのだ。
でもミスタには、今が夢から覚めたのかまだ夢の中なのかがよく分からなかった。
だって夢の中でもミスタはベッドの上だったし、窓は今はカーテンがかかっているがその向こうにはおばけがいるかもしれない。
すぐ横にいるヴォックスも、また起きてくれないかもしれない。
そう思ったら、また怖くて悲しいのがぶり返してきてミスタは夢の中みたいに布団の中に潜り込むと、今度はヴォックスの腕に顔を押し当てて泣き出した。
ヴォックスは何だか腕がひんやりした感覚で目が覚めた。
ぼーっとする頭のままそちらの方を見れば、自分の腕にミスタがしがみついている。
どうやら布団の中に潜り込んで、自分の腕に顔を当てて泣いているらしい。
その涙で腕が濡れてひんやりしていたようだ。
「ミスタ…?どうした。なんで泣いているんだ?」
そう声をかけると、布団の中でミスタが跳ねた。
急に声をかけたからびっくりしたらしい。
そのまま待っていると、布団の中から恐る恐るといった様子で顔をのぞかせた。
ヴォックスと目が合うと、顔をくしゃっと歪めてヴォックスの胸に飛び込んで泣き始めた。
えんえん泣いているミスタの背中を撫でてやる。
何やら泣きわめいているミスタが言うことには、夢の中でお化けを見て、怖かったからヴォックスを起こそうとしたのに起きてくれなかったのが悲しかったし、怖かったらしい。
ヴォックスはミスタに気づかれないようにちょっぴり笑ったあと、
「夢の中とはいえ、俺がすまなかったな。ミスタが怖がってるのに起きてやれないなんて」
と謝った。
ミスタは
「…ん」
とうなった後、べしょべしょになった顔をヴォックスの胸にぐりぐりと押し付けて、そのままコテンと寝てしまった。
時刻はまだ3時であるし、起きてからずっと泣いていたのなら体力に限界も来ていたのだろう。
ヴォックスはミスタの顔を拭いてやると、そのまま抱き抱えた。
ヴォックスだってさすがにこの時間は眠いのである。
夢の中で起きれなかった代わりに、ミスタが起きる時にはすぐ側にいてやろうと思ったのだ。
朝になってからしばらく、ミスタはヴォックスにひっつき虫になっていたが、ヴォックスはにこにこだった。