阿吽「シュウ~!今日あそこ行こうよ」
「いいね。久しぶりにやろう」
兄弟だけしか分からない会話に近くにいたアイクは頭に?を浮かべた。
「あそこってどこ?僕もついていってもいい?」
「もちろんだよ!でもあれ2人でしか出来ないはず…」
「交代でやればいいでしょ」
なんだかよく分からないが2人でやるものらしい。放課後校門で待ち合わせねと言われ了承する。全くもって何をするのか説明がないが、まぁミスタだけでなくシュウもいるのだからそんな変な事ではないだろうと思うことにした。
そしてやってきた放課後の時間。ルカは部活、ヴォックスは家庭の用事で残念ながら一緒に行くことは出来ず、3人で行くことになった。2人が向かっていった先は駅前のゲームセンターだった。5人で遊びに来たことはあるが、一体ここで2人は何をするのというのだろうか。
「とりあえず1回ね」
「うん。アイク、次俺と交代しようね~」
2人が前に立ったのはガンシューティングゲーム。協力プレイが出来るらしく、荷物を置いて腕まくりをした2人が画面の前に立つ。シュウがコインをいれ、画面が明るくなる。スーと息を吐いたミスタが画面に向かって銃を構える。真剣な2人の目に、ゴクリと唾を飲み込む。そこからはあっという間だった。
画面のいたるところからワラワラと現れるゾンビ達。それは的確にヘッドショットしていく2人。ゾンビが近づいて殴ろうとするが、ダメージを負う前に殺されていく。2人は言葉も交わさず、阿吽の呼吸で敵を殺戮していく。それぞれのリロードのタイミングでカバーに入っているのを見た時には、OMGとつぶやいてしまった。開いた口がふさがらないとはこのことだろう。2人がこのタイプのゲームをするのは初めて見たし、まさかこれほどまでに上手いとは思っていなかった。画面いっぱいに浮かぶCLEARの文字。2人の雰囲気が一気に柔らかくなる。
「いえーい!」
ハイタッチして喜び合う2人はいつもの様子だが、正直それどころではない。
「どうしたのアイク。鳩が豆鉄砲を食ったような顔して?」
きょとんとした顔で見つめてくる。2人ともなんでそんなに普通なの?え、僕が知らなかっただけでこれが普通なの?
「2人とも上手すぎるでしょ!初めてみたんだけど!」
興奮のままに聞けば、幼い頃からちょくちょく2人でこのタイプのゲームをやっていたらしい。それにしたって上手すぎるだろう。アイクもやろうよと言われたが、2人のプレイを見た後ではやる気になれない。
「2人の凄すぎるのを見た後に僕にやれって?恥かくだけでしょ」
「フォローする!分かんないことも教えるから!」
「そうだよ。だから一緒にやろ?」
わんこのような顔をした2人に頼まれてしまえば、断ることもできない。シュウと交代して、ミスタとプレイする。横からシュウがアドバイスをしてくれる。ダメージを少し食らうが、ほとんどの敵をミスタが屠っていくので僕はフォローするだけだった。ただどんどんと倒れていく敵を見るのはやはり気持ちがいいし、気分が高揚していく。画面にCLEARが現れた時には、すっかりこのゲームにはまってしまったのが分かった。
「アイク、ナイス~!」
「アイク上手!」
ミスタがぎゅーと抱きついてきて、シュウとはハイタッチをする。
「2人がサポートしてくれたからね」
そういえば2人はえへへと嬉しそうに笑う。
「それより!他にも色々やろうよ。僕プロジェクトディーバやりたい」
「いいね。ミスタもやろ」
「OK!」
荷物をまとめて移動する。楽しい放課後はこれからだ。