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    ラーヒュンワンドロワンライ企画第4回お題作品。

    #ラーヒュン
    rahun

    ○○をしないと出られない部屋「…暑い……」
    と一言呟いたヒュンケルの顔は強烈な陽射しによって赤らんでいた。

    「このまま日向にいたら危ない!すぐに木陰で休息を取らせなければ!」
    そう叫ぶと同時にラーハルトはヒュンケルの手を握り、大きな木の下ヘ走り出した。

    木の幹にもたれて背負った荷物から水筒を取り出して水を飲んで一息ついていると、どこからか冷たい空気が流れている事に気が付いた。冷気の元を辿って行くと小さな洞穴を見つけた。涼しい風に当たろうと手を伸ばした瞬間、強い光に包まれた2人は全てが氷で造られた謎の部屋に閉じ込められてしまった。

    「なっ、何だこれは。ここは一体…罠にかかったのか?オレ達。」
    今、目の前で起きている事を理解できなくてラーハルトは困惑している。

    「ようこそお二人さん。ここは『手を繋いで踊らないと出られない部屋』だよ~♪」
    ラーハルトとヒュンケルの他には誰もいないはずの部屋に何者かが語り掛ける声が聞こえるが、部屋の中から外の様子は一切見えず何らかの細工をしたような声音で喋っているので声の正体も全くわからない。

    「貴様ァ!一体何者だ!ふざけるのも大概にしろ!」
    怒り心頭のラーハルトが魔槍を持ち出し壁を壊そうとしたが力ずくでこじ開けようとしても全て跳ね返されてしまう。

    「チッ、仕方ないが従うしかないようだ。氷の上で舞い踊る…アイススケートの経験はあるか?」
    ラーハルトに訊かれたヒュンケルは「ない」と即答した。

    「え?もしかして2人とも初心者?しょうがないな~少しだけ練習時間をあげるよ。」
    謎の声が 話し終えたその時、2人の足に銀色のブレードがついたスケート靴が装着された。
    ツルツル滑る氷の上で慣れない型の靴を履いていた為に最初は覚束ない足取りだったが、すぐにしっかりと立てるようになり、滑る・止まる・ターンする練習を始めた。

    「お兄さんたち本当に初心者ぁ~?体幹しっかりしてるし、めちゃくちゃ上手いじゃん!」
    「フンッ!当然だ。日々の鍛練は戦士の務めだからな。陸戦騎を舐めるな!」
    「ああ、そうだな。」

    「じゃ、そろそろ本番行っくよ~!」
    掛け声と同時にラーハルトとヒュンケルの体が光に包まれ、2人は色違いのステージ衣装を着せられていた。

    「おまえは本当にこういった格好が良く似合うな、ヒュンケル。銀盤の貴公子といったところか。」
    「そ、それほどでも……」

    見つめ合う2人の気持ちに寄り添うように甘い雰囲気のメロディが流れ出した。
    「行くぞ、ヒュンケル!」
    「ああ」
    ラーハルトが差し出した手にヒュンケルが手を重ね、曲に合わせて踊り出した。
    黒地に金色の飾りがついた衣装のラーハルトと白地に銀色の飾りがついた衣装のヒュンケルは、お互いの体を寄せ合い、息の合った動きで氷の上を滑ってゆく。
    ラーハルトの紫色の手がヒュンケルの頬をそっと撫で、もう片方の手で腰を抱いている。そして、ラーハルトはヒュンケルの体を抱き上げながらゆっくりとターンして、角度を変えてほぼ横倒しの体勢で体を密着させてゆく。
    部屋に鳴り響く音楽は愛し合う者達を祝福する楽曲で、さながら氷上の結婚披露宴といった様相を呈していた。

    音楽が鳴り止んだ時、2人は感極まって固く抱き合い熱烈な口付けを交わしていた。
    「んっ…ラー、ハル…トっ、すごく…良かっ…た……」
    頬を上気させてヒュンケルは恍惚の表情を浮かべている。
    「おまえはいつだって美しいな。ヒュンケル。」

    「お~お二人さん、あっついなあ~リンクがびしょ濡れになりそうやで。」

    「……あ!!!!」
    彼らはすっかり忘れていた。外から部屋の様子を見ている誰かがいる事を。

    「ごっつええもん見せてもろたわ。ほんまおおきに。ありがとさん。」
    何故かベンガーナ商人のような口調で最後の言葉を告げた後、氷の部屋は消滅し、ラーハルトとヒュンケルは元いた場所からほど近い雑木林の中に飛ばされていた。

    「出られた……?一体何だったのだろうか?あれは…」
    「オレにも全くわからん。最後にベンガーナの方言が聞こえたが声の主は一切姿を見せなかった。ふざけた輩には槍をブチ込んでやるつもりだったんだがな。」
    「だけど、少しだけ涼しくなったような気がする。」
    「おまえが不満に思っていないなら、まあいいか。」


    End
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