今回は特別行き慣れた近所のスーパー。
アイスクリームが陳列してある棚の前で、シマボシは眉間にシワを寄せて立っていた。
「シマボシさん?」
野菜や肉などの食料品を詰め込んだカゴ二つをカートに載せたウォロが声をかけると、彼女はしょんぼりした顔を向ける。
「どうしました?」
「……新発売のアイス。チョコとイチゴ…両方とも、すごく美味しそうで…」
「次回、買えばいいんじゃないですか?」
冷凍庫の中には、前に買った別のアイスが残っていたはずだ。
ウォロとシマボシは一緒に生活するにあたり『以前に購入したものを消費するまでは、同じものを買わない』ルールを設けている。
食べ物に執着のあるシマボシではあるが、普段ならキチンとルールに則って諦める…はずなのだが今回はどうも様子が違う。
「これ…両方とも期間限定で、すごく人気があって…どんどん売り切れているんだ。今、ここに二つともあるのは奇跡としか言いようがなくて…」
シマボシが指差したアイスの、大人っぽいデザインのパッケージには確かに『期間限定』の文字が印刷されていた。
ウォロは、このメーカーの期間限定商品は一度売り切れてしまうと再販されない事も多い…と彼女から聞いた事を思い出す。
「ふむ」
カチャ…
ウォロは棚の扉を開けて、お目当てのアイスを一つずつ取り出した。
「ウォロ…?」
「シマボシさん、最近お仕事すごく頑張ってますし。今回は、特別ですからね?」
「…感謝する!」
ウォロは我ながら甘いなぁと思うものの、ぱぁっと笑顔になる彼女を見るとついつい甘やかしてしまう。
「お家に帰ったら、半分こしましょうね」
「うむ!」
「じゃ、早くお会計を済ませちゃいましょう」
ギュッ
ウォロはカートを持っていない方の手で、シマボシの手を素早く握る。
「……っ」
いつもは人前で手を繋ぐのを恥ずかしがって拒否するシマボシも、ワガママを聞いてもらった手前断れず、そっと彼の手を握り返した。
「家に着くまで、繋いでくれます?」
調子に乗ったウォロがニヤニヤしながら尋ねると、シマボシは顔を背けてボソッと呟く。
「……こ、今回は特別……だからな…っ」