十二国記パロ④「それにしても、あれほど荒れはてた巧国をなかなかうまくまとめたものだねぇ」
氾王は優雅な手つきで扇を仰ぎながら、つぶやいた。穏やかな気候の王宮の中である。扇は涼をとるためではなく、見せびらかすための贅を凝らしたものである。範は農作物にしても工芸品しても平均的な国であったが、見事な工芸品で他国に名を轟かせている。
一方の巧国は新王が立ったばかりである。荒れた国ではどうしても工芸品にまで手は至らない。王の威厳を保つための服飾品の多くは範からの借りものであった。買い取ったわけではない。あくまで借りたものだ。この度の来訪もその借りた品々を返すためである。
「治世五年でうまくやっている方だ」
「外面を取り繕っているだけです。中身は貧乏国のまま。服も金も軍もなにもかも借りものです」
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