especially for you.クライン大陸には、エイトがもといた世界で定番だった食材があったりなかったりする。
それから、味や食感がそっくりの別物や、初めて見聞きする植物や魔物の肉──いわゆるファンタジー食材も数多く存在していた。
そして今エイトの目の前には、誰にとってもお馴染みの小麦粉と、トマトソースみたいな味のする調味料、味も食感も豚肉を彷彿とさせる何かのミンチ、四本足の見慣れない動物のミルクとそれを原料として作られたチーズ、あとは見覚えがありそうでなさそうな数種類の野菜やスパイスなどが置かれている。
エイトがいる場所は、エンテンの屋敷の厨房にいる。本来は他所からやってきた人間が立ち入れる場所ではないのだが、使用人の大半に“主の特別なお客様”と認識されているエイトはいともあっけなく許可を得た。
3579