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    hbnho210

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    ルクアロ版ワンドロワンライさまよりお題:「夢」「見えてる」お借りしました。ヒロルクとルクアロのはざまのような。アーロンのモノローグです。

    #ルクアロ
    rquaro.

    お題:「夢」「見えてる」6/4 夢のまにまに。
     夜眠ると、悪夢しかみることができなくなってもうどれくらい経つのだろう。それでも、夢の襞と襞をかきわけて、その狭間にあの少年を探す。この、目が覚めても眠りのなかにいても悪夢しかみることのできない世界で、何処か、片隅にでも、あの、笑顔をみつけることができたなら。笑うと口からは春に生まれた雛の鳴声よりも生き々とした明るい声が翔びだして、その瞳からは太陽の欠片がいくつも々こぼれた。その声を、聴きながら、こぼれた欠片をこの手いっぱいにあつめて、抱きしめて眠りたい。そうすればきっと悪夢をみることもないだろう。君が在れば、悪夢はすべて失くなる。たとえ、街は炎に焼かれ、人は死に、大地は血に濡れて毒の海となっても、俺の世界から地獄は失える。君が在れば。君さえ在れば、この世界がどうなろうとも、俺の世界は救われる。
    「……それこそ悪夢だな」
     最悪の気分で目が覚めた朝の空はまだほの白く、崩れた壁の隙間から見える空は灰と露草色に滲んでいた。
     この世界を救いたいと思っていた。でも、それは傲慢な願いであり、気が遠くなるほど無謀な理想だと思い知らされた。灰になった街、死んでいった友、永遠につづく爆撃の音と終わらない戦争。自分には、どうすることもできなかった。願いを踏みにじられ、希望は砕かれ、自分の無力さをみせつけられた。そう、自分は”ヒーロー”になんかなれないことを、知った。
     ”ヒーロー”になりたい。そう、思っていた日々がまるで泡沫の如く失えてなくなってしまいそうになるのを、必死にしがみついて、つなぎとめようとする。あの日々を、なかったことになんかしたくたい。あの、太陽のような少年との日々を、失いたくない。もう二度と手に入れることのできない日々だとしても、自分は”ヒーロー”になると言った少年も、その少年を追いかけて”ヒーロー”になりたいと願った自分も、あの日々のなかに確かに在った。忘れたくない。この世界がどんなに残酷で、神様は無慈悲であったとしても。
     ヒーロー。俺のヒーロー、世界でいちばん、何よりも誰よりも大切な、俺の、
    「ヒーロー……会いたい、ヒーローの声を聴きたい、俺に笑いかけてくれ、名前を呼んで、手をさしのべてほしい、俺はその手をとって、そして今度はもう二度とはなさない。絶対に、はなさないから、だから、ヒーロー……」
     まだ、夢をみている。これは夢だ。だから、今だけ、ほんのすこし、夜が明けて青空を横切る爆撃機が地上に黒い影を堕とすまで、思いでにすがっていたい。

     俺の未来は、もう見えてる。ヒーローと別れて独りになったそのときから俺の未来はもう決まっていた。どんなに抗ってみても、未来を変えることはできない。できなかった。でも、俺は諦めたわけじゃない。抗えない未来に負けたわけでもない。自分は、ヒーローにはなれない。けれど、「ルーク」その名を持つ少年は、きっと今も何処かで”ヒーロー”になる、そう言って微笑っているだろう。俺はもうヒーローにはなれないけれど、「ルーク」はきっとヒーローになる。「ルーク」が、叶えることの出来なかったもうひとりの「ルーク」の願いを叶えてくれる。それでいい。もうそれで十分だ。この世界にヒーローになった「ルーク」が生きている、それだけで「アーロン」がこの世に生まれてきた意味はある。だから、
     俺も、生きるよ。せいいっぱい、生きて生きて生きぬいて、いつか、ヒーローになったルークの名を、遠い異国の地で聴くことが出来る日まで。
    「……恰好良いんだろうな、ヒーローになったルークは。背も、俺より高くなっているだろう。ワイルドパンサーみたいな鋭い爪に、力強い眼をして、そうだな、毎日肉を五キロは平らげるそのとってもたくましい身体で夜の街を駆け、救いを求める人の声があればどこへでも翔んで行く。そしてその姿を世界中の人が讃えるだろう、その名を知らない者がないくらいに。……”ルーク”が世界中のみんなのヒーローになっても、俺の”ヒーロー”は、いままでもこれからも、……ルークだけだ」
     彼方から、光がやってくる。夜明けはまだ遠い。けれど、彼方から、光は誰のもとへも等しくやってくる。地平線を焦がし、生ぬるい空気を孕んだ風が吹いて、もう二度と目覚めたくないくらいの絶望のなかにいても、希望に満ち々た世界のなかにいても、朝は来る。眠れるヒーローたちの元へも、光耀く朝は、いつか必ず、やってくる。
      
      
      
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    hbnho210

    DONEアーロンが宝石専門の怪盗ビーストとして世間を騒がせている頃のお話。ルークとは再会する前。オリジナルキャラがでてきます。※設定捏造アリ※本編と齟齬が生じている可能性アリ。展示①『Don't cry my hero』も読んで頂けたら嬉しいです。
    4/12「Hero`s echo」展示②『Give me a smile my hero』「またハズレか、……なかなか見つからねえもんだな」
     車のクラクション、海の遥か向こうの異国の言葉たち、石畳を歩く靴の音、店の前を通りすぎていった爆発音みたいな笑い声に店のドアにはめ込まれた色とりどりの色硝子が振動してカタカタと音を立てた。
    「おまえさんが何を探しているのか知らんが、どれも一級品だよ、まったくたいした腕だ」
    「ハッ、ドロボウの腕なんざ褒められても嬉しくねえんだよ」
     白昼の街の喧騒からうすい壁いちまいで隔てられた店の中はきれいに掃除が行き届いているのにどこか埃っぽく、店に並ぶ品はどれも古い映写機で映したように見える。何処かで嗅いだことのあるようなまったく知らないような不思議な匂いがして、壁に掛けられた時計の針が刻む音はどこかうさんくさい。アーロンは横目で時計を睨みながら店主が入れた茶を呑んだ。旨いが、何の茶なのかはわからない。
    2021

    hbnho210

    DONEアーロンがハスマリーで怪盗稼業をしていたときのお話。オリジナルキャラがでてきます。ルークはでてきませんが作中ではルーク(ヒーロー)の存在感がアリアリです。アーロンの心のなかにはいつでもヒーローがいるから……。アーロンが”怪盗ビースト”と呼ばれていますが、そのあたりは展示②の『Give me a smile my hero』を読んでいいただけると嬉しいです。※捏造設定アリ
    4/12「Hero`s echo」展示①『Don't cry my hero』「ねえ、聞いたかい? またでたってサ」
    「ああ、朝から物々しいからどうしたのかと思ったら、狙われたのは前々から黒いウワサのあった政府のお偉いさんの屋敷だっていうじゃねえか。相変わらず小気味がいいねえ」
     土埃と乾いた風、午前七時の太陽は容赦なく肌に照りつける、破れた幌の下にできたわずかな日陰で眠る猫、往来で市の支度をする者、共同水屋で衣類を洗ったり野菜を洗う女たち、野良犬を追いかける子ども、しきりに警笛を鳴らして怒鳴っている役人、いつもとおなじ変わることのない街の朝。だが、今朝の街はどことなくいつもより騒がしく街の人々もなにやら浮足立っていて、顔を合わせると目くばせをして何やら話し込んでいる。声をひそめながら、しかし時折、興奮して声が大きくなり相手にたしなめられている者もいた。
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