新刊進捗朝食の定番はデスクで食べるコンビニおにぎり三つ。今日はそこへ加えて値段の割に内容量が少なく、甘ったるいビタミンとタウリンのドリンクを追加で流し込む。気休めで買ったものだが、後味の悪さが余計に虚しさを誘う。
「お疲れですか」
五名ずつ島のように配置されたデスクの斜め向こうからおはようございます、の後の一言をくれた後輩の尾形が心配とは裏腹な好奇の視線を向けてきた。個性的な面々が多いこの会社の中でもこの男は際立っている。
「はは〜ぁ。係長殿も、隅に置けませんなぁ」
「そんなんじゃない」
セクハラって言葉知ってるか、と言えば、「失礼しました」と口先だけで謝ってきた。
「……このところ、夢見が悪くてな」
ゴシゴシと顔を擦る両手の下から呻くように漏らす。
これ以上、痛くもない腹を探られるのも心外だった。この男に話したところで聞き流されるだろうとは思っていた。今朝の出来事でやや参っていたのだろう。つい、口から出てしまっていた。
「夢、ですか」
存外、生真面目な声色で聞き返されて、多少の後めたさが募る。
「いや、たいしたことじゃない」
言い終わらないうちに、「係長、今夜空いてますか」と食い気味に尋ねてきた。声色が、揶揄うものとは違う。
「なんだ、突然」
「試してみて欲しいことがありまして」