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    こちらは2023/8/6開催『床下クッキーパーティ』展示作品です。

    ヒナイチの生まれ変わりが事故で吸血鬼になったと同時に前世の記憶を取り戻してかつての伴侶だったドラルクに会いに行く話です。(未完成)

    製作途中のため途中を飛ばしたり読みにくいところがあります。
    私が読みたいので尻叩きにご協力いただけますようお願いいたします。

    転生・転化ドラヒナ(タイトル未定) 噛みつかれた痛みとともに覚えのない記憶が一気に脳に流れ出した。
     大好きなクッキーの味、優しく私の頬を優しく撫でる血色の悪い細い指、少し細めて優しく微笑む貴方の顔。
     どうして忘れていたのだろうと涙を流しながら目の前で崩れて塵と化す吸血鬼を呆然と見つめる。あの人はしょうもないことですぐ死ぬ吸血鬼だった。
     視界が霞んでいく。遠くで誰かが叫んでいる。それらの意味を理解できる余裕が私にはなかった。
    「…っああああああああああああああああああああ!!!」
     次の瞬間体中に激痛が走り地面に膝をつく。鼓動がいつもよりもずっと大きくてはち切れそうだ。これが前の私が感じるはずの感覚だったんだと頭が勝手に判断する。あいつが与えてくれるはずだった感覚なのだとナイフで傷口をなぞるようにひしひしと刻み付けられる。
     誰かが私の体を擦っているなと思えば背中いっぱいに何かが当たる感覚がした。横にしてくれたらしい。その感覚すらも遠く感じる。すぐそこで起きているはずの誰かの叫び声すら何を言っているのか理解できない。

     赤いマニキュア、散らばった緑の液体、黄色い閃光、吸血鬼の森、裸の兄、水族館、ロナルドウォー戦記、アルマジロ、お仏壇の匂い、ルビーを埋めたプラチナの指輪、対向車線の車…

     五十年余りの記憶が私の脳を焼き尽くす。遠のく意識の中、私はあいつに謝ることしかできなかった。

    ◇◆◇

     新横浜駅の改札をくぐると、見覚えのある人物が堂々と仁王立ちしていた。
    「やっと来たか!遅かったな!」
    「半田…さん…どうしてここに?」
    「どうしてってお前が今日新横浜につくと聞いたからな。案内してやる!」
    「…ありがとうございます。」
     『OFF』とでかでかとプリントされた服を着て出迎えたということは今日は非番なのだろう。貴重な休みに申し訳ない気持ちになりながらとりあえず半田のもとに早歩きする。
    「まずはこの歩道橋を渡って少し進むと退治人ギルドがあるからそこに行くぞ!昼間は一般客にも開けているから今のうちに行ったほうがいい!」
    「新横浜ハイボールってまだ残っているんですか!?」
    「流石に移転はしているがな。だがロナ戦に関する写真が飾ってあるから言って損はないぞ。ついてこい!」
     ははははと高笑いしがなら歩く半田に既視感を覚える。これあれだ。私子分認定されたな。サギョウやカンタロウが来た初日も確かこんな感じだった。書類の場所とかトイレの場所とか案内するとき本当に嬉しそうだったもんな。勤務が始まったら次は私の番だ。
     それに、ロナ戦は最終巻を発行してから五十年以上経つ作品だ。私の地元はみんな知っているが世間一般ではもう過去の作品。とはいえ日本で最初の吸血鬼退治人の自伝なので、吸血鬼退治人が出る作品でたまにオマージュされることがあるくらいの認知度だが、そのために新横浜に来るほどの熱量のある人はほとんどいないだろう。
     だから私がロナ戦の話をしたときは本当に嬉しかったのだろう。もしかしたらロナ戦に出た吸血鬼達も同じように話すのかもしれない。

     駅の外は全く違う景色だった。道路は流石に変化はないが、歩道橋の形は変わっているしビルは全て建て替わっている。当たり前ではあるが本当に長い年月が経ってしまったのだと実感する。
    「そういえば吸血鬼ドラルクはまだいるんですか?」
    「ドラルクは一応住民登録はされているがここ数年は実家に帰っているな。一応監視対象だから日本に戻るときは連絡してくる。」
    「まだ監視対象なんですか?」
    「ああ。正確にはドラルクというより竜の血族の監視だな。あいつの親戚が問題起こすことがあるから早く検知するために監視対象としている。」
    「…なるほど…」
     まさか私の勘違いが100年以上で引き継がれるとは。申し訳ない。
    「でもロナ戦のファンが来たと伝えたら喜んで帰ってくると思うぞ。」
    「本当ですか!」
    「ああ。喜んでいろんなことを話してくれるさ。」
     ドラルクに会えるかもしれない。それだけで心がキューってなる。早く会いたいな。

    ◇◆◇

    「そういえばロナ戦で好きな話とかあるのか?」
    「好きな話…ですか。」
     うーんと首をかしげてみる。記憶を取り戻す前の私は一ロナ戦のファンだ。それまでに好きだった話を上げれば大丈夫だろう。
    「番外編で時々出てくる日常回が好きでしたね。普段カッコいいロナルドがちょっと抜けていたり、出てくる料理が美味しそうだったり。」
    「ドラルクの料理はうまいぞ。帰ってきたときに作ってもらえ。でもクッキーを頼むときは気を付けたほうがいいぞ。お前に似ていたやつがクッキーが大好きで一度に詰め合わせの量をぺろりと平らげてお代わりを要求していたんだ。恐ろしい量のクッキーに飲み込まれたくなかったらクッキーだけは頼むな。」
    「そんな!それくらい余裕ですよ!」
    「本当か?」
    「本当です。」
     大盛カレーの最後の一口をぺろりと平らげながら自信満々に言うと、かもしれないなと半田は口の端を釣り上げてくくっと笑った。
    「あと、本部長が事務所に視察に来た話が面白かったです。いかにして吸血鬼ドラルクを強く見せるか考える話。私ドラルクものすごく弱いって祖父から聞いていたのでもう面白くて面白くて。実際は本当に大変だったんだろうなって。」
    「俺もその話は聞いただけなんだが本当に酷かったらしいぞ。カズサさん頑張ってこらえてたのに我慢できなくて真顔のまま噴き出したらしいし。本当なんであんなすぐばれる嘘をついたのか。」
    「途中までシリアスなお偉いさんってキャラだったのに結構ノリがいい人だったんですよね。確か吸血鬼化したアブラムシのレースに参加しようとしてましたよね。あと職権乱用して妹のお菓子を勝手に食べたり、それから…」
     私が話し続けていると半田は眉をひそめて左の手の平をこちらに向けてきた。
    「ちょっと待ってくれ。アブラムシレースの話はロナ戦に載ってないぞ。それにお菓子を食べた話もないはずだ。ロナ戦でのカズサさんはノリのいいお偉いさんだけど何考えているのかわからない人で結構謎な人物として書かれていたんだ。だからわざとその話は書いていないと言っていた。何でそれを知っている?」
     うっかり口を滑らせてしまい思わず目線を逸らす。ここでいきなり実は転生したヒナイチですなんて口が裂けても言えるわけがなく、慎重に言葉を選んで答えることにした。
    「えっと…私実はヒナイチやカズサさんの親戚なんです。二人の生家も近くて。だから二人がよくお菓子の取り合いをしていたっていうのは聞いていました。」
     親戚かどうかは知らないが生家が近いのは本当だし、お菓子の取り合いをしていたのを聞いたのも本当だ。田舎のことだしどうせどこかで血は繋がっているだろう。
     私が冷や汗をかいていることに気にも留めず半田はあたりをきょろきょろと目配りしだしたかと思えばいきなりどこかに電話を掛けた。もしかして何らかの能力を伺っているのだろうか。そういえば私は何の能力も出ていない。親が下等吸血鬼だしそんなもんだろうが。
    「半田だ。ヒナイチが現れた。今すぐ日本に戻ってきてくれ。聞きたいことが山ほどある。……ああ。しばらく新横浜にいる。」
     とんでもない通話内容に思わず目を見開く。こいつは何を言っているんだ。何でバレた。いや、そもそもなんでそんな抵抗なくすんなり受け入れているのか。死んだ人間だぞ?ここ数十年の間に生まれ変わることが普通になったのか?まあここは新横浜だからイタコみたいな能力持ちはいそうだがそれはそれだ。いったいどうなっている。
    「…ははっそうだな。クッキーでも焼いてやればどうだ?ヒナイチもお前に会いたがっていたぞ。」
     私が手汗を掻いているさなか半田はこちらを向いてニヤッと笑いながら通話の相手にそう返した。唖然として何も言えなくなっている間に通話は終わり半田は電話をポケットにしまった。

    「あの…私そんなに似ていますか?だからと言って…」
    「お前と話しているとき違和感があったんだが…あのな、ヒナイチ、ロナ戦はドラルク以外全員偽名なんだよ。退治人や吸血鬼の通り名はそのまま出しているときもあるが、吸対やVRCの人間はみんな偽名だ。なのになんでお前はロナ戦のキャラクターの本名を知っている?ヒナイチやカズサさんならまだしもサギョウやヨモツサカの名前が出てくるのは当時を知っている人間ぐらいだ。それに、そもそもルリは偽名すら出ていないし出番も少ない。確か『吸対の事務員さん』で通していたはずだ。」
    「…なんで私をロナ戦に出ていたヒナイチだと信じるんだ?生まれ変わりということになるぞ?」
     観念して正直に問いただすと半田は肩肘をついて呆れた様子でじっとこちらを見つめてきた。瞳の色が赤色になっているのはやはり変な感じがする。


    「それはな、ドラルクがお前を探していたからだ。付き合わされた身にもなれ。」
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    SPUR MEこちらは2023/8/6開催『床下クッキーパーティ』展示作品です。

    ヒナイチの生まれ変わりが事故で吸血鬼になったと同時に前世の記憶を取り戻してかつての伴侶だったドラルクに会いに行く話です。(未完成)

    製作途中のため途中を飛ばしたり読みにくいところがあります。
    私が読みたいので尻叩きにご協力いただけますようお願いいたします。
    転生・転化ドラヒナ(タイトル未定) 噛みつかれた痛みとともに覚えのない記憶が一気に脳に流れ出した。
     大好きなクッキーの味、優しく私の頬を優しく撫でる血色の悪い細い指、少し細めて優しく微笑む貴方の顔。
     どうして忘れていたのだろうと涙を流しながら目の前で崩れて塵と化す吸血鬼を呆然と見つめる。あの人はしょうもないことですぐ死ぬ吸血鬼だった。
     視界が霞んでいく。遠くで誰かが叫んでいる。それらの意味を理解できる余裕が私にはなかった。
    「…っああああああああああああああああああああ!!!」
     次の瞬間体中に激痛が走り地面に膝をつく。鼓動がいつもよりもずっと大きくてはち切れそうだ。これが前の私が感じるはずの感覚だったんだと頭が勝手に判断する。あいつが与えてくれるはずだった感覚なのだとナイフで傷口をなぞるようにひしひしと刻み付けられる。
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