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    この作品は2023/8/7~2023/8/8に開催する「赤い退治人を狙い撃ち3」の展示作品です。

    兄貴への気持ちをあきらめるために弟が推し活を始める話です。
    筆が進まず未完の状態だったのですがメビヤツがとても可愛く書けたので展示させていただきました。
    尻叩きにご協力いただけますようお願いいたします。

    全力で推すぜ兄貴! ※未完成 外部からの接触を認知したのでスリープモードを強制終了すると、モニターにロナルド様のふわふわな髪の毛が映し出された。
     すぐ近くで音を検出したので解析するとロナルド様の声と一致していたのですぐさまカメラのレンズを動かず。事務所にはロナルド様とメビヤツだけ、半田桃が残したセロリトラップもない。
     周囲の安全を確認したところでロナルド様に視線を戻す。メビを抱きかかえながらで泣いている貴方の表情は近すぎて把握できないけど、きっと凄く悲しそうな表情なのだろう。
     いたたまれなくなりロナルド様、と名前を呼ぶと、カメラに触れていた感触がなくなりロナルド様の顔がモニターに映し出された。
    「ごめんメビヤツ、起こしちゃったか。ごめんな。」
     何か書類仕事でもしていたのだろうか、ヘアバンドで雑に前髪を上げたロナルド様の目は泣きはらして充血しており、鼻水も出ていた。こういうときはティッシュで拭うのだそうだが、メビに代替機能は持ち合わせていない。
     メビもごめんなさいと返すとロナルド様は少し眉をひそめてどうしたのかと聞かれた。メビはティッシュが取れないと答えると、少し時間を置いてロナルド様は笑った。
    「そんなにひどい顔してたのか。ありがとう、気持ちだけで十分だよ。」
     メビの頭を撫でながらそう言ってロナルド様は立ち上がり、机においてあるティッシュを手に取り鼻をかんだ。
     そしてメビの元に戻ってきて壁にもたれかかりながらしゃがみ込んだ。ロナルド様をこんなになるまで泣かせたのは誰だろう。焼き散らしてくれる。

     ロナルド様どうしたの?ドラルク?半田?フクマサン?
     そう問いただすとロナルド様は不思議な顔をしてメビの頭を撫でてくれた。笑っているのか泣いているのかわからない。初めて見る顔だ。
    「誰も悪くないよ。なんにもされてない。俺が勝手に泣いているだけだから。」
     メビはわからない。何にも無くても人間は泣くのだろうか。データを分析しているとロナルド様は呟いた。
     わざと体を倒すと、ロナルド様の体に沈んでいくのがわかる。メビは抱きしめる手はないけれど、一緒にいることはできるのだ。
     そうして暖かい腕の中に身を沈めているとまた泣き声が聞こえてきたので思わず動揺する。メビはロナルド様を安心させたいのに、泣かせたくなんかないのに。
     思わず音を鳴らしたのにロナルド様の腕は離れることなくむしろ力が強くなる。側面が僅かに濡れたことを確認する。
    「兄貴のこと好きになっちゃった…どうしよう…」
     いつもと違う声がすぐ横で発せられる。その言葉に対して認証エラーが発生した。
     好きはいいこと、素敵なこと、嬉しいこと、大切なこと、ロナルド様が教えてくれたこと。
     じゃあどうしてロナルド様は泣いているんだろう。
     メビはわからない。どうしたらいいのかわからなくて、ただロナルド様の傍にいた。


    「いつまでそうしているのだね。」
     ロナルド様の腕の中で長い時を過ごしていると、上から声がしたのでカメラを上に向けると、肩にアルマジロを乗せた吸血鬼がこちらを覗き込んでいた。
    「また締め切りでも忘れていたのかい。」
    「…うるせえ。一人にさせろ。」
    「現実を受け入れられずに迷走している可哀想なゴリラのためにせっかくハーブティを入れてやったのに。なんて言い草だ。」
    「…悪かったよ。」
     いつもならとっくに塵となっている吸血鬼が姿を崩すことなく立っている。
     吸血鬼とアルマジロにも違和感が届いたのか、一人と一匹は顔を見合わせまたロナルド様の方を向く。
    「机の上に置いといたから冷めないうちに飲みたまえ。気が落ちたときは暖かい物に限る。もうすぐイベントの時間だから飲み終わったら流しに戻しておいてくれ。」
    「わかった。」
     そう言うとロナルド様は立ち上がり机に戻っていったのでついていくと、ロナルド様は机の上にあるティーカップを手に取りグイッと飲み込んで吐き出した。
     メビは賢いので吸血鬼に向けて弱いビームを放った。



     ロナルド様が吸血鬼を殴り尽くした後、ロナルド様は頭を冷やしてくると言ってどこかに電話した。その二分後に事務所の壁に解析不能な空間が出現、ロナルド様はノートパソコンを持ってフクマサンと一緒にどこかに行ってしまった。
     事務所を守ること。兄が好きだと他の人に話さないこと。
     ロナルド様に与えられた使命を胸に刻みながら任務を遂行すること二十一分十三秒、事務所の外から物音がした。
     廊下から誰かが走ってくる音を検知しカメラを起動すると同時に目の前のドアが開き、吸血鬼対策課の服を来た男が息を切らせながら入ってきた。
     ロナルド様の兄、ヒヨシ。ロナルド様の大好きな人。
    「邪魔するぞメビヤツ。突然で悪いがロナルドかドラルクは…っあっつつ!!」
     男にビームを当てると男は驚いたのか飛び跳ねた。こけおどしにしただけメビは優しいのだ。
    「俺のこと忘れたのか?ヒヨシじゃ!ロナルドの兄じゃ!」
     ロナルド様を泣かせた!と返したがメビの言葉かわからないらしく、覚えていないのかと呟かれた。
     メビがロナルド様の家族を忘れるわけない!と睨み付けると、どう捉えたのか少ししゃがんで目線をメビに合わせてポンッと帽子越しに手を乗せられた。
    「お前も不安じゃろう。絶対にロナルドを連れて帰るからな。門番は任せたぞ。」
     ロナルド様そっくりの笑顔で発せられた言葉に首をかしげていると、ヒヨシはなぜか住居スペースに入らずにソファーに座った。
     ドラルクはあっち、と発してもやはり伝わらないので仕方なく来客だとドラルクにメッセージを送る。扉が開いたのはその一分八秒後だった。
    「お待たせしました。ようこそドラルクキャッスル…って隊長さんどうなさいましたか。」
    「ヌヌヌ!!」
     よそ行きの表情を崩した吸血鬼が抱えていたアルマジロは主の腕から飛び降りて男の元に駆け寄っていった。
    「ロナルドがどこに行ったか知らんか?なにか思い詰めとらんかったか?」
    「彼なら原稿の締め切りを忘れて自らオータム書店に向かいましたが何かあったのですか?」
    「締め切りを忘れたぁ!?」
    「よくあることですよ。」
     ドラルクの返答に力が抜けたのが一度立ち上がった男は力を抜きドカンとソファーにもたれかかる。ジョンはそんな様子も気にせずに男にじゃれついていた。
    「それで、何があったのですかな。」
     ドラルクがそう言うと男はけだるそうにスマホを取り出し数回画面をタップすると、投げるようにスマホの画面をドラルクに見せつけた。スマホに近づいたドラルクは画面をスクロールしながらその内容を読み進める。
    「いつものロナルド君です。」
    「ならいいんじゃが…あいつ小学生の頃から何も変わっとらんのう。」
    「何それ詳しく教えてください。お茶を入れてきます。」
     そんなに話が気になるのか楽しそうにドラルクはと住居スペースに戻っていく。
     ジョンと男が戯れている横でじっとしているとジョンが声をかけてきた。
    『メビヤツどうしたの?怖い顔してるよ?』
     男に言葉が通じないのをいいことに遠慮なく聞いてくる。メビは顔を背けて返した。
    『この人はロナルド様の大好きをいらないって言ったの!』
     メビがそう言うと、ジョンは慌ててメビの所にやってきた。
    『それ、他の人に言っちゃ駄目だよ?』
    『どうして?酷いことなのに?』
    『そっちじゃなくて、ロナルド君がヒヨシさんを好きってこと!』
    『どうして?素敵なことなのに?』
    『最初の大好きはね、ロナルド君が言わないと駄目なの。ロナルド君が言う前にヒヨシさんが知っちゃうとロナルド君悲しむよ!』
    『それは嫌だ!』
    『でしょ?とにかく、内緒だよ!』
    『わかった!メビはロナルド様を泣かせないよ!この人と違って!!』
     ソファーに座る男をキッと睨み付ける。
     ロナルド様のお兄さんはメビ達の言葉が分からないからか少し困ったように微笑んでいた。メビが自我に目覚めて間もないとき、ロナルド様もよくこの顔をしていた。
    『うーん…お兄さんがそんなこと言うかなあ。まだ話してないだけだと思うけど…』
     ジョンがうーんと腕を組みながら首をかしげたのでメビも顔を動かした。


     ロナルド様が帰ってきたのはそれから三日後のことだ。
     隠し通すことにしたと話すロナルド様の表情は優しくてどこか誇らしげだった。
     話聞いてくれてありがとうって言ってくれた。だから、またお話ししてねってメビは返した。

    ◇◆◇

    「なあ、最近ロナルドに何かあったのか?」
     住居スペースから持ってきたクッキー片手にメビヤツに聞くと知らないと返ってきた後に何があったのかと聞かれる。
    「何かあったわけではないのだが…急にモテたくなったとか、好きな人が出来たとか。」
    「ビ!?」
    「えっ本当なのか!?」
     意外な反応に思わず食いつくとメビヤツは全力で拒否した。
    「相手を詮索するつもりは無いし、誰にも話すつもりも無いから安心しろ。」
     必死に抵抗するメビヤツを落ち着かせるために興味ないからと断っておく。
     本当?本当に?と何度も聞いてくるので大丈夫だと帽子の上から頭を撫でてやる。
     でもそれなら少なくとも昨日の妄言に納得がいく。だが…二人の姿を想像して思わず顔が引きつってしまう。
    「でも隊長は無いだろう。」

     何で隊長?もっと他に適任がいるだろう。ドラルクとか…
     あいつの顔が思い浮かんで思わず首を横に振る。そういう意味じゃない。でもレディーへの嗜みだと言って振る舞ったあの動作はこう…違う!一般論を言っているんだ!
     いきなり暴れて驚いたのかメビヤツが不思議そうにこちらを見ているので大丈夫だと伝えておく。
     いやでもドラルクも無理だな。あいつには無理だ。でも顔はいいしな。

    『観光中に吸血鬼に襲われるなんて災難だったな。この町ではよくあることだし、よかったら俺がボディーガードにつくけど、どうします?』
    『こんなに怯えてしまって可哀想に。もう退治したのでご安心ください……この白魚のような手も、宇宙を宿したその瞳も、悲しい色に染まることはありません。この退治人ロナルドがお守りいたしますのでご安心ください。』
     営業かな?

     とにかく、最近ロナルドが変なのだ。いつも変だがそれ以上に変だ。
     退治中にいきなり奇声を発したり何かに祈りを捧げたり、この前なんていきなり倒れたかと思えば幸せそうな顔で気を失っていた。
     半田もセロリを出す前にロナルドが奇行に走っているからか動揺しているようで、カメラを取り出す速度が少し遅い。まあお手製のアルバムの新作が一気に増えて嬉しそうではあるが。
     そして今まさにロナルドは私の真横でいきなり両膝を地面につけ、そのまま座り込んだ。
     何事かと視線の先に目を向けると、その先には一般人を誘導している隊長の姿、正確には誘導しているふりをして女性をナンパしている隊長の姿があった。話がはかどったのか名刺を取り出して女性に渡している。
    「…かっこいい」
     左下から聞こえた声に自分の耳を疑った。
     どこが?仕事をさぼってナンパしている姿が?
     仕事のしすぎで頭がおかしくなったのだろうか。いや、人のことを悪く言ってはいけない。よくよく思い返せばロナルドは個人事業主だ。偶然出会った相手にさり気なく名刺を渡す行為の難易度を実感しているからこそ、隊長の動作がスマートに見えるのかもしれない。
     もう一度隊長の方を向く。名刺の裏にメモを書いて渡していた。恐らくプライベート用の連絡先だろう。
    「流石だぜ…」
     ヒーローショーにやってきた少年のように二十代半ばの男は、道路の真ん中で膝を着けて目を輝かせていた。
     しばらくして女性と隊長が離れたかと思えばいきなりロナルドが立ち上がったのでとっさに距離を空ける。
    「キャーっあに…隊長さーん!!」
     ぶんぶんと手を振りながら自分を呼ぶロナルドは流石にキツイ。隊長は顔を引きつらせながらも頑張って笑顔を作り手を振っていた。
     こういうところは本当にすごいと思う。

    「十年早いと思うぞ。」
     思わず口に出した言葉は少年には届かないようだった。

    ◇◆◇

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    z0ed0

    SPUR MEこちらは2023/8/6開催『床下クッキーパーティ』展示作品です。

    ヒナイチの生まれ変わりが事故で吸血鬼になったと同時に前世の記憶を取り戻してかつての伴侶だったドラルクに会いに行く話です。(未完成)

    製作途中のため途中を飛ばしたり読みにくいところがあります。
    私が読みたいので尻叩きにご協力いただけますようお願いいたします。
    転生・転化ドラヒナ(タイトル未定) 噛みつかれた痛みとともに覚えのない記憶が一気に脳に流れ出した。
     大好きなクッキーの味、優しく私の頬を優しく撫でる血色の悪い細い指、少し細めて優しく微笑む貴方の顔。
     どうして忘れていたのだろうと涙を流しながら目の前で崩れて塵と化す吸血鬼を呆然と見つめる。あの人はしょうもないことですぐ死ぬ吸血鬼だった。
     視界が霞んでいく。遠くで誰かが叫んでいる。それらの意味を理解できる余裕が私にはなかった。
    「…っああああああああああああああああああああ!!!」
     次の瞬間体中に激痛が走り地面に膝をつく。鼓動がいつもよりもずっと大きくてはち切れそうだ。これが前の私が感じるはずの感覚だったんだと頭が勝手に判断する。あいつが与えてくれるはずだった感覚なのだとナイフで傷口をなぞるようにひしひしと刻み付けられる。
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