それは寝て見る夢よりも 芽吹いたばかりの若葉に、砂混じりの風が吹いていた。
無数の投石や遡行軍の骸を乱暴に飛び越え、姫鶴は悪路を先へと急ぐ。敵を殲滅したあとの戦場は不気味なほどに静かで、その静寂が姫鶴の心をざわざわと波立たせていた。
前衛の日光一文字が、戻ってこない。
部隊長のへし切長谷部からそう聞かされたのは先刻のこと。機動の速い日光や長谷部が前衛、打ち合いに強く生存値の高い姫鶴が殿をつとめ、それぞれの持ち場で敵を撃破したのちに合流するという計画の最中だった。
「わかった。探してくるから、みんなはここを守ってて」
合流地点に部隊のものたちを残し、姫鶴はひとり戦場を駆け出す。敵の気配は既になかったが、部隊のものたちはみな多かれ少なかれ傷を負っている。全員で探しに出てはぐれるよりは、まず単独で捜索に行くほうが安全であるように思えた。
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