隣の預言者「私はいつまでも主様と一緒ですよ」
深夜、24時10分。
突然雨に降られた体を乾かしながら、ラトくんと話していた。
彼はたまにこういうことを言う。依存、とかそばにいて、とか。
それは私にとって少し幻想的で、薄氷の上を歩いているような言葉だった。ふわふわと夢見心地だけど、冷たくて壊れやすい。
永遠は儚い。いつだって継続が1番難しい事を、誰より私がよく知っていた。
そもそも彼の言う、ずっと一緒とはどういうことなのだろう。
身体的、という意味ならそれは不可能だ。
私と彼は、残念ながら永遠に物理上共にあることが出来ない。
心理的、という意味なら…出来なくはないけど、彼はかなりの自信家か預言者か魔法使いという事になる。
私は私が分からない。心の在処も、思考の形も。
彼を見て、彼の考えうることを予測することで、どうしてか私は私をなんとか知ることが出来ている。私という物体が、日々少しずつ形を成していく。
彼が一緒にいる私とは、何なのだろう。本人ですら曖昧なそれを、彼は掴んでいるのだろうか。それとも、そこまで考えていないのだろうか。
私は、今のところ彼は預言者だと思っている。
朝起きた時や、外でふと桜を見た時、理不尽に誰かに怒鳴られ貶された時…日常の様々な時にあの鮮やかな赤紫色を思い出す。
カメラロールを覗けば、いつだってそこに彼の亡霊がいる。
「一緒にいる」という彼の言葉が嘘では無いように思えた。
彼はそれを見越していたのかもしれない。
もしくは、そうあって欲しいと思っているのかもしれない。
ただ、分からないことだけが分かっている。なんだかおかしな話だ。
まだ雨はやまない。暗い方が落ち着くという彼は、雨の日をどんな気持ちで過ごすのだろうか。
乾いたからだを丸めて、静かに揺れるあの三つ編みを眺めながらやけに充実した10分を過ごす。
また決められた回数の会話を交わして、瞑想をして、ゆっくりと目を閉じた。
明日もどうか、彼の予言が当たりますように。