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    黒猫さん

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    黒猫さん

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    「夏の終わりのラクシ怪談ワンライ」
    ミスタが夢で怖い目にあう話

    貴方は夢ミスタは夢を見ていた。
    しとしと雨が降っていてそれでもミスタは濡れたという感覚がなくて、服も乾いていたから。
    ミスタは自分の中で「これは夢だ」と思いながら1人、雨降る街を歩いた。
    こんなにもはっきりと見える夢は珍しいなと思い、なにか出来ないかと当たりを見渡せば、明るい黄色の傘が広がっているのが見えた。
    人がいるなんて思わなくて、そっと近づくと、小さな男の子だった。

    「ねぇ、君…!」

    4~6歳ぐらいの子だろうか、まぁるいほっぺに赤が差していて可愛らしいと思いながら、ミスタが声をかける。
    しかし、子供はびっくりしたのか慌てるように黄色の傘を広げたまま、同じ黄色の長靴で水たまりをバシャバシャと進みながら逃げていく。

    「待って!俺は怪しいヤツじゃないよ!」

    思い返せば、こんな夢の中にいる人に声なんて届かない。
    それに、幼い子は知らぬ大人が声をかけたら怯えてしまうのは当然なのだが、その時のミスタはそんな考えは消えていた。
    とてとてと走る幼子を追いかければ、子供が逃げた場所は古びた団地だった。

    「ここは……」

    ミスタはこの場所を知っていた。
    ここは幼い時に秘密基地として遊んでいた無人の廃墟だった。
    当時のミスタはここに何人かの友人を連れて、楽しく遊んでいた思い出がある。

    「懐かしいな…けほっ…でもなんで……?」

    疑問に思っていたミスタは、1階の奥の扉を開けて入れば、ぶわりと埃が舞い、カビ臭くて咳をした。
    天井は木が腐ったのだろう、2階の畳をぶら下げながら崩れていた。
    幼い子は傘を閉じると、じっとぐちゃぐちゃになったダンボールを見つめていた。

    「…ねぇ、君、こんなところ危ないから帰ろうよ。」

    「……」

    「ちょっと!聞いてるの!?」

    遠くから呼びかけるも返事はなくただ、そのダンボールを眺めるだけ。
    それにミスタはイラッとして幼子の肩をつかもうと手を伸ばした。
    しかしするりとミスタの手は、幼子の体をすり抜けていく。
    それに驚いた顔をすれば、幼子はこちらを見た。

    「おにいちゃん、やっときたんだね。」

    先程と変わるように丸かった頬は崩れ、ぶわりと一気に黒い禍々しいなにかがでてきた。

    「オニイチャン、オニイチャ…ボク、ずっとズット…マッテたんだよ」

    「は?何言って…?」

    幼子の傘は古く錆びていて、ボトッと手だったものから落ちる。

    「あ、え?……これ…は…」

    「オニイチャ……おヂャァァァ」

    赤子のような泣き声と、叫ぶ声に、それは悪夢だと今更ながらに気づいたミスタは、廃墟から出ようと走ろうとした。

    「ミスタ、おいで」

    ミスタは涙目になりながら廃墟を出る。
    ドタドタとこちらを追いかけてくる幼子だったものを見ずに必死に前へ前へと足を運べば、聞き覚えのある声が聞こえた。
    ミスタは無我夢中で、その声の方に走った瞬間、がばりと身体を起こした。

    「ミスタ!良かった起きたんだね!!」

    涙目のルカとアイクが身体を起こしたミスタに抱きつく。
    汗はだらだらと流れていたが、それよりも仲間が4人がいるのにとても安堵した。

    「悪夢に囚われて起きれなかったんだよミスタ。無事で何より」

    そうアイクに言われて、シュウとヴォックスはほうっと息をついていた。
    ミスタの悪夢は、廃墟に住む悪霊が悪さしていたのだった。
    ヴォックスがいち早く気づいて、何とか夢にいたミスタを助けることが出来たのだった。

    「そうだったんだ……もう怖くてどうしようかと…」

    「二度とあんな夢ごめん」だとミスタが言えば、「まぁ、またその時が来たらまた僕たちが助けるからね」とシュウに言われてミスタは苦笑いするしか無かった。
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